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読モは関係無いと思うが・・・。
-127 連絡してみた先は-
結愛は下手な照れ隠しをしながら頭を掻いていた、「一柱の神」と呼ばれる古龍に憧れの存在にして貰えるなんて滅多に無い事だ。そんな中、トゥーチを除くその場にいた全員には気になって仕方のない事が有った。まぁ、正直言ってしまうと俺もその1人なのだが。
結愛「そう言えばおっさん、さっき誰かに連絡しようとしてなかったか?そいつの方が好美達について詳しいだろうって言ってた奴。」
イャンダ「ああそうだ、忘れてた。色々としっちゃかめっちゃかになっちゃったからな、すぐやるよ。」
調理場でお玉片手に結愛の質問に答えたイャンダはガスの火を止めてすぐ近くにある電話の受話器を手にした、おいおい、わざわざそんな事しなくても『念話』を使えばいい話なのに(というか家電かよ)。
イャンダ「良いじゃないか、俺も光さんと同じで余り能力に頼り過ぎたくないんだよ。」
いつ能力を使用するか、どう使用するか、そして使用するかどうかを決めるのは各々の自由だ。その気持ちは尊重すべきだな、うん。
そうこうしている間に店長は何処かへと電話を繋げた、どうやら相手とは以前からよく話していた間柄の様だが・・・。
イャンダ「もしもし、ニコフか?久しく会って無いけど、元気でやっているかい?」
そう、イャンダが電話したのは王城で好美と一緒に夜勤の仕事をするニコフ・デランド将軍長だった。
ニコフ(電話)「これはこれはバルファイ王国の竜騎士様、お久し振りでございます。」
イャンダ「ニコフ、頼むからその呼び方はもうやめてくれって言っているだろう?俺もデルアも引退してただの拉麵屋の経営者なんだから気軽に名前で呼んでくれよ、従兄弟同士なのによそよそしいな。」
今でもそうだが別の国の住人同士にも関わらずかつて1頭の龍並みの戦闘力を誇っていた2人はニコフを含めた各国の王国軍人の憧れの的だったという(至って平和な今では戦闘力など必要無いのだが)、そんな雲の上の存在であるイャンダが自分なんかに何の用があるのだろうかと将軍長は不思議で仕方が無かった。
ニコフ(電話)「申し訳ありません・・・、イャンダ兄さん。それで、本日はどの様なご用件でしょうか?」
電話の向こうにいるニコフが未だ興奮が冷めない様子が声から聞き取れたが、深呼吸をして何とか冷静さを取り戻した様でもあった。
イャンダ「いっその事敬語もやめてくれ、親戚同士なのに他人に思えて仕方が無いよ。」
ニコフ(電話)「そう・・・、かい・・・?じゃあ・・・、どうしたの?イャンダ兄さん。」
イャンダ「急で悪いんだが最近、ニコフは好美ちゃんに会って無いか?」
ニコフ(電話)「いや、ここ数日は会ってないな。お店の方には行ってないの?」
先程とは打って変わった様に何の抵抗も無くイャンダとタメ口で話すニコフ、本当は子供の頃と同じように話したかったのだろう。
そんなニコフが言うには宴当日の有給や週休の兼ね合いにより、ここ数日程は王城の夜勤に来ていないらしい。
イャンダ「こっちもなんだ、別に店の方は人手が足りているから大丈夫なんだがね。」
ニコフ(電話)「そうか・・・、また何か分かったら電話でもしようか。」
イャンダ「ごめんよ、助かるよ。流石に2人がいなくなってからこれ程の日にちが経つと心配になって来るからね。」
ため息をつきながらゆっくりと受話器から手を離したイャンダに声を掛けたのは「一柱の神」だった。スピーカーフォンにしていないのに2人の会話が聞こえていたとは、流石は古龍。
トゥーチ「今の電話って好美達の事か?」
イャンダ「ああ・・・、はい。王城に電話したのですが夜勤には来ていないとの事でして。」
トゥーチ「確か・・・、あの2人って・・・。」
必死に何かを思い出そうとする三女。
イャンダ「何かご存知なんですか、トゥーチ神様!!」
結愛「そうだよ、早く教えてくれよ!!」
落ち着け、社長らしくないぞ。