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長々とした宴が終わってから・・・。
-122 パティシエの未来とやっと完成した新社屋-
色々と騒ぎはあったものの最終的に温かな雰囲気に包まれながら祝いの宴が終わってから数日が経った、師匠の逮捕により心中でだが路頭に迷ったオラを救ったのはやはり副店長の真希子だった。
真希子「どうだろうオラちゃん、師匠のそのまた師匠の下で働きながらスイーツの勉強をしてみないかい?文句があるなら何でも受け付けるよ。」
自らの師が目の前の恩人から学んだという事を考慮に入れると自分も是非学んでみたいという意欲が湧いて来る、逆に文句なんてどうしてあると思うのだろうか。
オラ「これ以上に嬉しい事はありません、宜しくお願いします。」
オラは深々と頭を下げながら泣いていた、救われた様な気分がしてならなかったからだ。
真希子「何だい、泣くような事じゃないだろう全く。」
オラ「だって私の師匠っていつの間にか厨房からいなくなって覗きや盗撮ばっかりしていたんですよ、それに私だって被害に遭っていた事もあるんです。」
流している涙がどんどん大粒の物になっていくオラを優しく抱く真希子、それは上司ではなくまるで母親として包んでいる様にも見えた。
真希子「大丈夫、あんたは何も悪くないんだ。自分でも「被害に遭っていた」って言ってたじゃないか、これからは安心して勉強して良いんだよ。それと私の事は「真希子」、若しくは「おば様」で良いからね。」
あれ?既視感があるのは気の所為か?もしかして結愛も同様の事があったから「おば様」と呼んでいるのか(義弘による「最悪の高校時代」を除いて)?
そんな中、やっと出来上がった新社屋の前で貝塚運送の開業式が開かれていた。真希子の突然の申し出にも関わらず、その意図を汲んだ結愛により業務用の軽トラが数台導入されていた事は言うまでもない。勿論その場に派車両整備担当(兼社長秘書)に任命されたヒドゥラや入社してすぐに主任の籍に就く事になった美麗がいた。急なお願いだったが結愛に信頼されている事を再認識した美麗の表情からは他の者以上のやる気が感じ取れるようだった、因みに一般社員として働く社員たちの制服は灰色のジャンパーだったが結愛の遊び心でヒドゥラは赤いつなぎで美麗は青いチャイナ服であった。美麗は自分達の服装を見て結愛に『念話』を飛ばした。
美麗(念話)「ねぇ結愛、私達だけ何か浮いてない?」
ヒドゥラ(念話)「そうですよ、社長が着る様に仰るならこのまま着ますけど。」
確かに他の者達が灰色の衣服を着ている分、2人の服装が際立っていたのは明確だった。
結愛(念話)「良いじゃねぇかよ、2人に灰色は似合わないと思っていたんだ。それに特別感があって良いだろ?」
ヒドゥラ(念話)「私は良いんですけど・・・。」
結愛(念話)「な・・・、何だよ・・・。」
美麗(念話)「運送会社でチャイナ服っておかしくない?元の世界にいた時は家の店を手伝う事が多かったし中国人のママに合わせていたから着てたけど、今はもうその必要は無いもん。」
美麗に正論を言われた結愛は、少し焦り出した様だ。
結愛(念話)「美麗、「お前と言えば・・・」と思って選んだんだぞ。頼むから着てくれよ。」
どうやら結愛は個人的に美麗のチャイナ服姿を気に入っていた様だ、急いで『念話』を切った社長は一応ビジネスなので「大人モード」で挨拶を始めた。
結愛「えー・・・、皆さんおはようございます。そして大変お待たせ致しました、この貝塚運送も貝塚財閥の大切な一部分としてこれから成長させていきたいと思っております、お客様一人ひとりのニーズに合わせたお仕事を皆で協力して頑張っていきましょう。」
父と違い堅苦しいのが苦手な割には結構しっかりめの挨拶をした結愛。
それから数分後、「暴徒の鱗ビル下店」で店長のイャンダと副店長のデルアが開店準備をしている所に結愛が『瞬間移動』してきた、ただ入店して来た「悪ガキモード(いつも)」の結愛には元の世界で松龍等の中華料理屋に行った時の癖がまだ残っているらしく・・・。
結愛「おっさーん、拉麺と炒飯ね!!」
イャンダ「あいよ・・・、って誰がおっさんじゃい!!」
こりゃ異世界ではなく関西でよく見る光景だな、「おっちゃん」だったら返事が変わる件。
ノリツッコミ的な・・・、違うか。




