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皆さんにとっての「朝の定番」は何でしょうか?
-⑫ 朝はどうする?-
朝から店主による度のきついボケをするっとかわして「朝と言えばやっぱり・・・」と考えながら鮭の切り身を数切れ購入した守を魚屋が引き止めた。
魚屋「朝から焼き鮭だなんて、純和風で良い物食うつもりなんだね。」
「純和風」と言う言葉を聞く事になるとは、本当にここは異世界なんだろうか。
守「俺の故郷では毎日朝は焼き鮭でしたから結構普通ですよ。」
魚屋「普通ね・・・、俺はいつもラリーさんとこのパンばっかりだからな。」
守「良いもんですよ、朝に焼き鮭。」
にこにこしながら答える守に、毎日光が働くパン屋のパンばかり食べている店主は気まずそうにしていた。
守「あの・・・、どうしたんですか?」
魚屋「俺さ・・・、魚食えないんだよ。専ら肉ばっかり。」
守が露店の奥をよく見てみた時、ラリーの店で買ったと思われるソーセージパンが山盛りになっていた事から店主の食の好みが伺えた。
守が引き笑いしていると、パン屋の方向から聞き覚えのある女性の声が。
女性「ジューヌさん、追加持って来たよ。」
守「あ、光さん。おはようございます。それ店の制服ですよね・・・、似合ってますね。」
元の世界にいた頃から守の憧れの的となっていたダルラン光(旧姓:吉村)だ、どうやらパートの最中にパンを持って来たらしい。
光「守君、おはよう。今日は休みなの?」
守「はい、好美の家に引っ越してから数日の間は店長が有休にしてくれまして。」
光「へぇ、ケデールさんにしては珍しいじゃない。」
2人の会話を聞いていたのか、噂の本人から『念話』だ。
ケデール(念話)「光さん、それどう言う意味ですか?」
光(念話)「冗談ですって、それより守君っていつまで有休にしているんですか?」
ケデール(念話)「一応あと3日の予定にはしていますが、光さんが仰るなら何日でも延ばしますよ。」
守(念話)「店長、それだと俺の給料が無くなるじゃないですか。」
ケデール(念話)「いやな、経費の削減に丁度良いかなって思ってよ。」
光(念話)「やっぱり今もドケチなんですね。」
ケデール(念話)「バレましたか、やっぱり光さんには敵わないですね・・・。」
3人が『念話』で談笑している側で1人疎外感を感じている魚屋の店主・ジューヌ。
ジューヌ「光ちゃん、そろそろ俺の好物をくれないかい?腹減っちゃってさ。」
ふと露店の奥を見てみると、そこにあったはずのソーセージパンが全て無くなっていた。いつの間に食べたのだろうか。
光「ごめんなさい、それにしてもこれ好きですね。」
ジューヌ「いやあね、これにケチャップとマヨネーズをかけるのが最高なんだよ。」
よく言う「オーロラソース」に近い物がジューヌの好みだそうだ。
そんな中、守に1人家で待つ恋人から『念話』が飛んで来た。ただ先程と様子が違っていたので守は嫌な予感がした。
好美(念話)「守ぅ、まだぁ?」
守(念話)「好美、お前まさか呑んでないか?」
好美(念話)「な、何言ってんの!!朝から呑む訳ないじゃん!!」
守からすれば夜勤族である好美が朝から呑む事は想定の範囲内だが、せめて朝ごはんはちゃんと食べて欲しかった様なので揺すりをかけてみた。
守(念話)「じゃあその右手にある物は何だ?」
好美(念話)「えっとですね・・・、「B」から始まってますね。」
急に敬語になる好美、やはり守の予想(と言うより嫌な予感)は当たっていた様だ。
守(念話)「はぁ・・・、缶はちゃんと処理しとけよ。」
作者もよく缶の処分を忘れます。