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結愛の言葉に感動する美麗。
-110 憧れの人物に抱く「イメージ」-
美麗はとにかく嬉しかった、元の世界にいた頃から憧れていた結愛が自分の事を見てくれていた事を。一番嬉しい形で努力が報われた瞬間、一生に一度来るかどうかも分からない瞬間。
結愛「美麗って優秀なデザイナーとしても活躍していたんだろ?実は読者モデルとして共演出来たら良いなって思っていたんだよ、会社でも管理職だったんだろ?十分主任として働いてもらえる根拠になるぜ。」
過去、実家や喫茶店で会う事はあったが職場での話をしたのはあっただろうか。しかし着眼点はそこでは無い、実は美麗には密かに夢見ていた事があった。
美麗「結愛・・・、いつか私のデザインした服を着てみてくれる?気に入ってくれたら嬉しいんだけど。」
美麗は少し緊張しながら憧れの結愛にお願いしてみた、内心では図々しいが故に断られるかと思っていたが。
結愛「願ったり叶ったりだ、もしもこの前トラックの改造を施した俺の秘書や社員たちの服もデザインしてくれるなら本社や学園でファッションショーの計画をしても良いぜ。」
美麗の夢を最大限に応援しようとする社長、ただ今の結愛にはパンツスーツしか着ないイメージがあるのは俺だけだろうか。
結愛「うっせえよ、一応俺も女だぞ!!ファッションが好きじゃ駄目なのかよ!!」
悪かったよ・・・、でもその口調に合う服なんてデザインしてくれんのか?
美麗「何よ、服のデザインに口調なんて・・・、関係・・・、無いもん・・・。」
おいおい、何でそんなに弱弱しくなるんだよ。はっきりと言ってみろよ、やっぱり性格とかも考慮しちゃうんだろ?
美麗「正直言うとしたら・・・、うーん・・・。」
結愛「何だよ、ハッキリと言えよ。」
少し言いづらい事でもあるのだろうか、ただ美麗はお力を借りる為に持っていたビールを一気に煽って口を開いた。
美麗「性格・・・、というより「その人らしさ」を大切にしたいんだよね。やっぱり「十人十色」って言うじゃん、私だけの考えかもしれないけど10人いれば10通り(若しくはそれ以上)のデザインがあると思うんだ。」
結愛「「その人らしさ」か、「俺らしさ」ねぇ・・・。美麗は俺にどんなイメージを持っているんだ?」
美麗「えっ?!ゆ・・・、結愛に?!」
憧れの存在を自分から見たイメージ・・・、美麗の考える「結愛」という人間とはどんな人物なんだろうか。
美麗「そうだな・・・、やっぱりスカートよりパンツのイメージが強いんだよね。」
結愛「ああ・・・、イメージが強いというよりくそ親父から会社を奪い取ってからずっとこのスタイルなんだよな。」
よく考えてみれば結愛が「社長令嬢の姿」をしていたのはあの「最悪の高校時代」だけだった気がするな。
結愛「思い出させんじゃねぇよ、吐き気がしてくるじゃねぇか。あれは義弘に「無理矢理」着せられてたんだ、お前が一番分かっている事だろうがよ。」
確かにな、あの頃から性格がずっと「悪ガキ」だったのも原因は義弘だったか?
結愛「それ以外に理由なんかないだろ、あの頃は嫌々でアイツの事を「お父様」って呼んでたんだぞ。いつでも反抗できる様に自我を確立しておこうと温めておいたのが爆発したんだ、本当・・・、自分の好きな様に出来て清々するぜ。」
美麗「じゃあデザインはやっぱりパンツスタイルで描くね。」
結愛「良いな・・・、「二足の草鞋を履く」ってやつだ。デザイナーになって貰おう。」
でも美麗は貝塚運送の主任なんだろ、兼任なんて良いのかよ。
結愛「良いに決まってんだろ、社長の俺が認めるんだからよ。」
(一応)結愛がルールの貝塚財閥、ただ光明が許すのだろうか・・・。