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豚舎で働いているが故に早起きは得意な守。
-⑪ 当たってしまった嫌な予感-
朝6:30、守は窓からこぼれる朝日に照らされて起き上がった。今日の朝ごはんは守が作る予定だが材料があるか正直心配だという気持ちがあったので、「もしも」の事が有った時の為に街の中心部にある露店やリッチのゲオルが経営する雑貨屋へと買いに行ける位の時間の余裕が欲しかったのだ。
守「朝だからあっさりとした軽い物の方が良いよな・・・、和食と洋食どっちにしようか。」
鼻歌混じりに冷蔵庫を開けると守が予期していた「もしも」が起こってしまった、そう、材料が全くなかったのだ。予想はしていたが冷蔵庫には酒しか入っていなかった。
守「やっぱりか・・・、そう言えば本人はどうしてんだ?まさか・・・、な・・・。」
守がノックを数回した後に恐る恐る恋人の部屋を覗いた時、好美はベッドの上で呑んだくれていた。床にはこの日呑んだであろう酒の缶が散らばっていた・・・、はずだった。
好美「おはよう、朝早いんだね。」
守「おはよう・・・、って今の今まで呑んでたのか?」
好美「うん、夜の内に渚さんが来て・・・、ってあれ?」
2人は辺りを見廻したが渚の姿は無かった、どうやら『瞬間移動』で帰った様だ。
守「呑んでる割には酒の缶はちゃんと捨てているんだな。」
好美「何?守知らないの?」
この世界の酒の缶は中身が無くなった瞬間に消失するので捨てなくても良いのだ、改めて思うがこれは便利。
守「それで、冷蔵庫の中身なんだが皆無じゃ無いか。あれじゃ朝飯作れねぇよ、お前は裕孝か。」
好美「忘れてたよ、この前冷蔵庫の中身全部ぶち込んで光さんやピューアと鍋してから買い物してなかった。それにしても貢君もそうなの?」
守「そうそう、あいつん家の冷蔵庫は香奈子ちゃんが行くまではずっと酒かプロテインしか入って無かったんだよ。多分今頃、結婚して香奈子ちゃん苦労しているだろうな。」
好美「大丈夫なんじゃない?香奈子は料理得意だったから。」
元の世界での楽しい思い出に浸る2人、しかし今はそれ所では無い。
守「一先ず材料の買い出しに行ってくるよ、何か欲しい物はあるか?」
好美「うん、ビール!!」
守「却下。」
好美「良いじゃん、ここ私の家なんだもん!!」
恋人が駄々をこねる中、守は冷蔵庫の在庫を思い出していた。
守「まだ沢山残っているだろう。」
因みにこの時点で冷蔵庫には500mlの缶ビールが12本入っていた。
好美「この後全部呑むもん・・・。」
守「嘘だろ・・・。」
頭を抱える守を横目にルンルンしながらお代わりを取りに行く好美。
一方、守はため息をつきながら好美の部屋を出て中心街へと向かった。一応彼女からビール代を受け取っていたので買って帰らない訳にはいかないと仕方なくゲオルの店で追加のビールを購入した守は露店へと向かった、ただその足取りは決して軽い物では無かった。
守「あいつめ・・・、どれだけ呑むつもりだよ・・・。」
好美本人に手渡されたメモの通りに買い物したが故に守の両手は買い物袋で塞がってしまっていた、仕方なく『アイテムボックス』に入れて買い物を続行した。
「朝と言えば焼き魚」の守は早速干物を買いに魚屋へと向かった。
守「おはようございます、今朝のおすすめは何ですか?」
魚屋「おはようさん、おすすめはね・・・。」
並んでいる商品を目で物色した魚屋は、ある商品を手に取って守に勧めた。
魚屋「これだね、マヨネーズをつけたら最高なんだよ。」
守「俺も好きですけどこれブロッコリーじゃないですか、せめて魚を売って下さい。」
魚屋にとって朝一のボケが決まった様だ。