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店長はオーナーの事をちゃんと理解出来ていないのだろうか・・・。
-108 一応・・・-
なかなか機嫌の直らないオーナーを物で釣るつもりの店長、ただ流石の好美でもそこまでは子供ではないと思われるが・・・。
好美(念話)「じゃあ・・・、春巻きと唐揚げをたっぷりね。」
・・・って、釣られるんかい!!まぁ・・・、事なきを得たならそれで良しとするか。
渚「それでね、例の「あの話」なんだけどやっぱり私には荷が重いよ。相手は一国の大臣なんだろ?」
パルライ「大丈夫ですよ、あの人も私達と同じで堅苦しいのが苦手ですから。」
一応確認だが、ロラーシュって人じゃなくてミスリルリザードだよな。まぁ、気にする程の事でも無いから置いとくか・・・。
パルライ「ハハハ・・・、この世界に種族なんてあって無い様な物でしょ。」
そりゃそうだな、王様の仰る通りです。ただ渚さん、お2人は採用する気満々ですよ。
渚「まぁ、あんた達がそう言うなら一先ず試用期間って事にしても良いかい?誰だって最初から何でも出来るとは言えないだろう?」
パルライ「それに関しては渚さんにお任せしますよ、でも一応は「修業」ですから渚さんにとっての全てを大臣にお伝え頂ければと思います。」
渚「でもさ、私は2人と違ってかえしもスープも作って貰ってから営業しているだろ、そこん所はどうすれば良いんだい?」
渚は自分が1番考慮している疑問を2人にぶつけてみた、もしも「味の決め手」等を聞かれても、また基礎となるスープ等の作り方を聞かれてもどうする事も出来ないのだ。本人が一から全てを作っているとすれば「辛辛焼そば」で使うキムチ等の具材くらいなので当然と言えよう。
シューゴ「その場合は・・・、どうしましょうか。」
パルライ「ファクシミリか何かで送っておくという手は如何でしょうか。」
スマホでのやりとりが中心と言えるこのご時世でまさか「ファクシミリ」という言葉を聞くとは、でもレシピ等を纏めて送るという意味では1番使える方法と言えるだろう。
渚「だったら申し訳ないけどメールにしてくれるかい?確かにこの店の事務所にファクシミリは1台置いてあるけど使った事が無いから分からないんだよ。」
一国の王であるパルライにそこまでのお願いをするとは、俺だったら気が引けてしまう。ただしつこい様だがこの世界の国王達は腰がかなり低いので・・・。
パルライ「構いませんよ、確かに渚さんはここの家に住んでますけど店の仕事を手伝っている訳では無いですもんね。」
何となく聞こえは悪いが、言っている事は間違いではない。
渚「何だい、それじゃ私が無職みたいじゃないか。」
別に転生者達は神に1京円貰っているので働く必要は無いのだが、周囲からどう見られているか気になってしまうのが大人というもの。
パルライ「すみません、私の言い方が悪かったです。では取り敢えずメールで全て教える事にしますね。」
渚「何だか悪いね、門外不出のレシピだったんじゃないかい?」
シューゴ「いずれはこうなるって分かっていたんで大丈夫ですよ、それに渚さんは信用できる人ですから。」
渚「何か責任重大だね、私に務まるかね。」
今頃になってビビり出したのだろうか、渚の持っているグラスが小刻みに震えていた。
一方その頃、別のテーブルでは美麗が働く貝塚運送の今後の方針を話し合っていた様だ。
おいおい、そう言う話を酒の席でしても良いのか?しかも今日はお祝いだろ?仕事の話は無しにしようぜ。
美麗「別に良いじゃん、私が気になっていたんだから。」
まぁ、今日の主役がそう言うなら良いって事にしておくか。
結愛「あ・・・、あのさ・・・。」
結愛は何を言い出そうとしているのだろうか・・・。