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病院が騒ぎになる一方・・・。
-106 2人の判断-
突如男性が消えた事に目の前でプリンを一緒に食べていた女性や医者、そして希を含めた病院内の殆どの者達が騒然としていたが、転生者達がよく『瞬間移動』をするのですぐに騒ぎは収まってしまった。もうほぼ日常茶飯事と言っても過言では無い様な事なのだが、希はある事を思い出していた。
希「でもあの人ってこの世界の人じゃ無かったんだよな・・・。」
ただこの世界も転生者(と言うより日本人)だらけになってしまっているので、もうどっちが異世界なのか分からなくなっていた。
希は一先ず、男性が消えた病室で女性に直前までの事を覚えていないか尋ねてみる事にした。
希「あの・・・、宜しければ何があったか教えて頂けませんか?」
いち警察署長として相手が話しやすく出来る様にやはりあくまで下手に出る希、そのお陰か女性は重い口をゆっくりと開いた。
女性「確か・・・、元の世界での私達の事を思い出そうとしていたんですが、本人の脳内に天から神様らしき声で「思い出してはならない、死んでないから元の世界に戻って貰う」と言われたらしく、次の瞬間に倒れてしまってそのまま・・・。」
希「そうですか・・・、すみません。貴重なお話を聞かせて頂いてありがとうございます。」
一方、元の世界の中華居酒屋「松龍」で元恋人との思い出を含む記憶を取り戻して目覚めた男性に女将・王麗が大目玉を喰らわせていた頃、娘・美麗の歓迎会が続く吸血鬼の店では渚による回想話が続いていた。
パルライ(念話)「そうだ・・・、思い出しましたよ。ダンラルタ王国にもそろそろ支店を出してみないかとデカルト国王に相談されていたんですよ、その足掛かりとしてロラーシュ大臣に店での修業をさせて欲しいとのお達しが出ていたのを忘れていました。」
シューゴ・渚(念話)「パルライ・・・、あんたね・・・。」
2人は拳を握りながら震えていた、相手が一国の国王であろうが関係無しだ。
シューゴ・渚(念話)「そう言うのは、先に言わんかい!!」
パルライ(念話)「す・・・、すみません・・・。」
ただ渚の話の流れから、とある疑問を抱いていたのは光だった。
光「でもお母さん、何かおかしくない?」
何がおかしいのかさっぱり分からない一同。
渚「何がおかしいって言うんだい。」
光「「店で修業する」って事はお母さんの屋台じゃなくて叔父さんか好美ちゃんの店で修業するって事じゃないの?」
ただ光の疑問はすぐに解決した、とてもシンプルな答えによって。
渚「いやね、どうやら大臣自信が私の作った拉麵に惚れこんだってのが本当らしいんだよ。「どうしても渚さんの店で修業するんだ」ってしつこくてね、意志が固いのは分かるけど流石にこれだけは私の一存で首を縦に触れないじゃないか。」
光「それで?2人はどう言ってんの?」
確かに2人の意見(と言うより判断)を聞くのが先決。
渚「2人共「やってみたらどうだ?」って言うのさ、でも私には荷が重過ぎやしないかい?」
珍しく真面目に悩む渚に口を挟んだのは、べろべろに酔った好美だった。
好美「良いじゃないですか、渚さんって「暴徒の鱗」ではそこそこ大御所なんですから。」
渚「やだよ、この子ったら。私を年寄りみたいに言って。」
いやいや、好美からしたら孫もいるあんたはお年寄りみたいなもんだって。
渚「あんたもだよ、失礼ったらありゃしない。」
す・・・、すんません・・・。
ただおか・・・、いや渚さん。店の方々があちらでお待ちですよ。
あれ?今日の主役って渚だっけ?