103 特別編③
昨日に引き続き、
本日も「特別編」です。
-103 特別編③・再発の理由-
女性達による懸命な呼びかけにより駆けつけた医者と希は、やはり刺激を与えてはいけないと思ってそっと頭を抱えていた男性に近づいた。
希「大丈夫ですか?何かありましたか?」
男性「あの・・・、先程と同様の頭痛がしてきまして・・・。」
エルフ「無理をなさらないで下さい、さぁ、こちらへ。」
エルフの手招きによりもう一度深く椅子に腰かけた男性はゆっくりと息を吐いていた。
男性「すみません・・・、1つお伺いしても宜しいでしょうか。」
自らの人生でまさか本当に会うと思わなかったエルフに対し、どうして自然な気持ちでいる事が出来たのか分からないまま男性は丁寧に声をかけた。
エルフ「私で宜しければ・・・、何でしょうか。」
初対面だというのに唐突に何を聞こうというのか、少し緊張してしまったエルフ。その緊張が表情に出ていたのか男性は目の前の女性に気を遣い始めた。
男性「あの・・・、大したことでは無いのですが。」
エルフ「大丈夫ですよ、何でも仰ってください。」
とても優しい声色の女性に安心感を得たのか、緊張が解けた男性は気になっていた質問を投げかけた。
男性「えっと・・・、先程貴女と一緒にいらっしゃった女性の方は?」
エルフ「えっ?!ご存知なんですか?!あの人の事をご存知なんですか?!」
本人の様子から見るに、エルフにとっては大した事だった様だ。
男性「知っていると言うより、昔会った事のある気がするんです。」
エルフ「「気がする」・・・、とは?」
男性の反応に不信感を抱くエルフに横から声を掛けたのは、男性をこの病院に連れて来た希だった。
希「ノーム、その人は記憶喪失なんだ。」
女性の診察に付いて来ていた希の息子である利通の妻で冒険者ギルドの受付嬢をしている「エルフのドーラお姉さん」ことノーム・林田は義理の父の突然の声掛けにも冷静だった(※紛らわしいのでここからは「ノーム」と表記します)。
ノーム「お義父さん・・・、公共の場なのにその呼び方で話し合って良い訳?」
希「今はそれ所じゃないだろう、それで?その人は記憶喪失だが何かあったのか?」
経験している場数が違うからか、署長は至って冷静だった。
ノーム「私と一緒にいた女性の事を知っているかも知れないのよ、ただ「気がする」だけとも言ってて。」
希「仕方ないだろう、それと今は本人に余り刺激を与えない方が良い。」
ノーム「分かった、でもね・・・。」
希「でも・・・、何だ?」
義理の娘の発言に首を傾げる希。
ノーム「私が連れていた女性も記憶を失くしているみたいでね。」
希「そうか、じゃあさっきの頭痛はある意味奇跡と言っても過言では無いかも知れんな。因みにあの女性の方は何処の国の方なんだ?」
希はあくまで警察の人間の1人として質問した。
ノーム「身分証明書を一応見たんだけど、どうやら外界の人らしいの。」
希「じゃあ一先ず・・・。」
有る提案をしようとした希に医者が遠くから声を掛けて来た。
医者「林田さん、お待たせしました。入院の手続等が終わりましたのでこちらへ。」
ノーム「えっ?!お義父さん入院するの?!」
希「おいおい、この流れでどうしてそうなるんだよ・・・。」
コメディという事をちゃんと忘れていないノーム。