102 特別編②
昨日に引き続き「特別編」です。
-102 特別編②・頭痛の再発-
渚に誘われた希は、長年ネフェテルサ王国に住んでいるがこの世界では初めて見る顔の男性に恐る恐る近づいて声を掛けた。
希「あの・・・、どうされました?宜しければお聞かせ願えますか?」
相手が話しやすい様にあくまでも下手に出て話す署長。
男性「何も覚えていないんです・・・、気付けばここに座っているしずっと頭が痛いしで・・・。」
希「そうですか・・・、病院には行かれましたか?」
男性「行ってないどころか、ここが何処か分からなくて・・・。」
「まさか」と思った希は渚に『念話』飛ばして事情を説明する事にした。
希(念話)「すみません渚さん、少し遅くなるんですがよろしいですか?」
ずっと希の行動を『察知』していたのか、拉麵屋台の店主は許さない訳が無かった。
渚(念話)「あんたって昔から放っておけない性格だったからね、その人の事頼んだよ。」
希(念話)「皆さんにご迷惑をお掛けしますが、申し訳ないとお伝えいただけますか?」
渚(念話)「何が迷惑なんだい、皆で助け合うのは当然の事じゃないか。」
希(念話)「そう仰って頂けると助かります、では後ほど。」
『念話』を切った希は未だに頭を抱える男性に再び質問した、嫌な予感が当たらないと良いのだが・・・。
希「あの・・・、お名前言えますか?」
男性「何も思い出せないんです、服のポケットを探ってはみたんですが自分の身分を証明出来る物が何も入って無くて・・・。」
希「良かったら病院までお連れしましょう、立ち上がれますか?」
希はゆっくりと立ち上がった男性と一緒にネフェテルサ王国警察署の横にある貝塚学園大学病院へと『瞬間移動』し、救急救命センターで診察を受けさせることにした。
男性「あの・・・、今のは何ですか?!」
男性の様子から分かった事だが、どうやらこの世界の住民では無い様だ。
医者「やはり記憶を失っている様ですね、脳に大きな外傷等は無いと思われますが余り刺激を与えない方がよろしいかと。」
希「「様子見」が一番でしょうか?」
医者「そうですね・・・、すぐに記憶は戻ると思われますが取り敢えずこちらで入院の手続きをしますので少し休ませてあげて下さい。」
希に連れられた男性は廊下の椅子に深く腰掛けた、医者が与えた薬が効いたのか頭痛はもう無い様だ。
男性「すみません・・・、何とお礼を申し上げれば良いか分からないです。」
希「お気になさらないで下さい、私こう見えても警察の人間ですから。」
男性「いっ・・・!!」
希の言葉で何かを思い出しかけたのか、男性は再び頭を抱え始めた。
希「だ・・・、大丈夫ですか?!」
男性「すみません・・・、何かを思い出せそうでしたが駄目でした。」
希「無理しちゃ駄目ですよ、今は脳に刺激を与えてはいけないって先生も仰っていたじゃないですか。」
男性「はい・・・、ではお言葉に甘えさせて頂きます。」
男性が椅子に深く座りなおしてため息をついた後に背もたれに体を委ねて休んでいると、少し離れた所から人間とエルフの女性達が歩いて来た。
エルフ「良かったですね、先生もすぐに良くなるだろうって言ってましたから。」
女性「助かります、右も左も分からない場所で不安だったんですよ。」
2人が談笑しながら男性の前を通った時、男性が目の前の女性の顔をチラッと見ると・・・。
男性「ぐっ・・・。」
エルフ「だ、大丈夫ですか?!誰か!!誰か!!男性の方が苦しそうにしています!!」
女性「ゆっくり深呼吸して、落ち着いて下さい・・・!!」
「男性」にとって「女性」とは・・・。