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慧君は間違えない

ハロウィン | 慧君は間違えない

作者: あいもめ
掲載日:2020/11/07

主人公の美咲と、幼馴染の慧が付き合い始めて初めてのハロウィン。

 ハロウィン。

 それは収穫を祝い、祖霊を迎える、キリスト教の祭事。

 ……らしいのだが、こと日本においては、ただの仮装パーティーと化している行事だ。


「みっさきー! 今日ハロウィンだけど、神井君と何するの?」

「最近は特に何もしてないかな。お母さんがかぼちゃパーティをするから一緒にご飯を食べるくらいだよ」


 我が家においては、ただのご飯会になっている。


「なにそれ行きたい」

「え? あ、どうぞ」

「あ、ごめん。今のなし」


 失言だったようだ。


「そう?」

「えっとね。何もしてないなら、仮装して驚かせたらどうかな?」

「仮装かあ。前はやってたんだけどね」


 小さい頃は、私も慧と仮装をして、お菓子交換をしたものだ。

 成長するにつれて、しなくなった。


「ほら、付き合い始めてからは、初めてのハロウィンでしょ? 何か違った反応があるかもよ?」

「なるほど」


 それは確かにそうかも知れない。

 慧と付き合うようになって、慧の反応が何となく変わってきたのだ。


「最近やってないなら、サプライズでやってもいいかもね」

「でも、それだとお菓子を用意できないよ?」

「そしたらいたずらすればいい」

「……」


 いきなり押しかけてお菓子を要求し、なければいたずらしようなどと、なかなかにひどいアイデアだ。

 だが、慧がいたずらに対してどんな反応をするかとても気になる。


「……やってみようかな」

「へぇ」


 思考の海から戻ると、恋奈がニヤニヤしていた。


「何?」

「別にぃ?」

「あー、でも、仮装なんて急には決められないけど、どうしよう」


 居心地が悪くなりそうなので、話をさっさと進めることにした。


「ふっふっふ……そんな美咲に、これをあげよう」


 恋奈はどこからか大きな袋を持ってきて、中身を渡した。


「なにこれ」

「魔法少女」


 渡された衣装は、胸元がはだけており、お腹も見えて、スカートもぎりぎりだ。

 魔法少女と呼ぶにはあまりにも布が少ない。

 水着と言われた方が納得できる。


「こんなの着られないよ!」

「よく考えて。この衣装はチラリズムを限界まで追及していて、これで落とせない男はいないとまで言われた一品なんだよ。これを着て誘惑すれば、さすがの神井君も……」

「慧も?」

「何かしらの反応をしてくれるはず!」

「やっと!?」


 確かに慧は、何事に対しても反応が薄い。

 私はずっと見てるからそれでも分かるが、本当はもう少し何か言ってほしかったりする。


「ま、まあ……借りるだけ借りておくよ」

「どうぞどうぞ」


 考えた末、衣装を借りることにした。

 人前ではとても着られないが、慧にしか見せないなら大丈夫だ。たぶん。


◇◆◇


 放課後。

 私は慧に家で待ってるようにお願いし、魔法少女になって、コートを着てから慧を迎えに行った。


「慧、おまたせ」

「うん」


 慧はお菓子を用意して待っていた。

 なんとも準備が良い。

 となれば、衣装の出番も僅かだろうか。


「えっと……」

「?」


 私はコートに手をかける。

 手から心臓の鼓動が伝わってくる。バクバクだ。


「……やっぱり、目を瞑って」


 周りには誰もおらず、見せるのもお菓子をもらったらすぐコートを着るから短時間だ。

 気が楽になるかと思ったが、そんなことはなかった。


「分かった」


 慧が目を瞑っている間に、コートを脱いで、慧の前に座って息を整える。


「すう……はあ……。慧、もういいよ」

「うん」


 目を開けた慧は、私を見た途端に目を大きく見開き、驚いていることがよく分かった。

 とりあえずやってよかった。


「慧、トリック、オア、トリート……」


 私の声は、だんだん小さく先細りになってしまった。

 もうそろそろ限界だ。


「……」


 しかし、慧は硬直してしまっているように何も言わない。

 何か言ってくれないと、私もどうすればいいのか分からない。


「慧、答えてよぉ」

「……」


 慧はまだ何も言わない。

 というか、さっきから石像のように動かない。


「慧?」

「……」


 慧の顔を覗き込むと、慧は目をそらしてしまった。


(これはもしや!?)


「慧、もしかして、照れてる?」

「…………」


 慧が照れた。

 今までこんなことがあっただろうか。いやない。

 私は嬉しくなった。慧が私のことを異性としてみてくれていることが分かったからだ。


「ねぇ、慧ってば~」


 私が慧の前に回っては、慧はまた目をそらす。

 楽しくなってきた私は、何度か繰り返した。

 何度か繰り返していると……


「ひゃう!」


 慧に脇腹を突かれた。


「きゃっ! ひぅ!」


 それも何度も。

 私は逃げるべく立とうとして……


「そ、それは引っ張っちゃだめぇ!」


 慧に衣装の紐をつままれてフリーズした。

 これ以上離れたら、結び目が解けて大変なことになる。

 かと言って、逃げなければくすぐられる。たぶん、私が悪ノリした時間と同じくらい。


「美咲、座って?」

「……はい」


 私は、おとなしくくすぐられる方を選んだ。


「後ろ向いて」

「ん? うん」


 私は慧の前で三角座りをし、慧は私を抱きかかえる体勢になった。

 私の足の下に慧の足が通され、これ以上ない密着状態だ。


(あ、動けない)


 逃げられないように固定されたとも言える。


「あぅ!」


 慧の右手が私の脇腹にそっと添えられた。

 私の体がピクッと跳ねる。

 そしてなぞるようにお腹をさすり、反対の脇腹で止まった。

 対して、左手は私の肩から手首まで同じようにさすり、私の手と指を絡ませて止まる。


(これはどういう意味かな?)


 くすぐられている感じではないのだが、慧は何がしたいのだろうか。


「ふっ」

「ひゃう!?」


 私が動かないでいると、耳に息を吹きかけられた。


「はむ」

「きゃっ! え、何!?」


 そして耳をくわえられた。


「慧、何してるの?」


 私は慧にされるがままであろうと思っていたのだが、流石に聞かずにはいられなかった。


「美咲が温かいから……すぅ……」

「え、寝ちゃうの? これからご飯なんだけど……うそでしょ!?」


 だが、慧から答えが返ってくる前に、慧は夢の世界に旅立ってしまった。

 頭を私の肩に乗せ、寝息が規則的に聞こえてくる。


(私はどうすればいいの?)


 私は一応、慧をパーティに招待するために来たのだが、慧が寝てしまってはどうしたものか。

 それに、慧の温かさが全身にじんわり伝わってきて心地よく、動きたくない自分もいるのだ。


(まあ、いっか)


 私は動かないことにした。


「美咲? 慧君はまだ来ないの?」

「お母さん!? えっと、これは……」


 そのとき、お母さんがやってきた。

 今はお母さんにも見られたくない格好をしているので、タイミングが悪すぎる。


「慧君は寝ちゃってるの? そのままだと風邪を引いちゃうから、布団は掛けるわね」

「あ、うん」


 お母さんは、慧の布団を私達に掛けてくれた。

 私の格好が隠されて一安心だ。


(慧の匂い……)


 まるで、慧に包まれているような感覚。

 実際、抱きかかえられているので、似たようなものか。


「美咲」

「何?」


 布団をかけ終わる間際に、お母さんが私に耳打ちをした。


「そのサイズのスカートを履くなら、下着は肌と同じ色にしたほうがいいわよ?」

「何も言わないでっ!」

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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