75 日本昔話のオープニングで出てくるやつですよ!色はこっちの方が断然綺麗だけれど!
誤字報告ありがとうございます!
謁見の間での出来事は、目を瞑っていたから聞くことしか出来なかったけれど……。
ドアの外から聞いてたけどさ!すっごい盛られてた!設定の聖女様めっちゃ聖女じゃん!
いや、聖女様じゃないといけないんだけれど……。
私は動かないように気をつけていたんだけれど、自分との違いにプルプルしそうだったよ。
なんせ私は……誘拐されて、無理やり眠さられて、勝手に結婚相手にさせられそうになっていた事にむかっ腹たったから、クーデターに協力する事にしたんだからねー……。
あと、クレスさんがゆっくり動くから、呼吸しているのがバレないかすごく不安だった。
まぁ結果、みんな私の顔を見てすぐに信じてくれたっぽいから、ちっとも怪しまれなかったんだけれども!
すごいよ!この顔誰も疑わないよ!まぁそうだよね。化粧をされた本人ですら死んでいるように見えるんだから……。マリー師匠流石だわー……。
悲しみを全身で伝えるような、重々しい足取りでクレスさんは歩く。階段を何段か降りた感覚がして、風が顔に当たった。鳥の鳴く声も聞こえる。やっとのこと、お城から出られたようだ。
このままクレスさんに運ばれてこの帝都から出ても嬉しいのだけれど、そうするとクレスさんの負担が半端ないのでここからは馬車だ。べ、別に残念だなんて思ってないんだからね!だって、ローマンティックのかけらもないんだから!この顔のせいで!!
馬車は、皇帝の持つめっちゃ豪華なものなのだそうだけれど……目を瞑っているので見られない。外装凝ってるんだろうなー。降りる時見られるかな?
クレスさんが馬車内に入る、と小さな声で教えてくれた。馬車の中だったらそうそう顔を見られる事もないかな?そう思ってうっすーく目を開けて内装をチラ見してみた。
すごく綺麗なワインレッドの布が張られた車内。窓の縁部分や窓にかかるカーテン、飾りや足元は黒で統一されている。お城の中と似た感じだ。
そして……足元に、横長の箱のような物があるんですよ。そこに私を寝かせて、上から蓋をするらしいんですよ!行きは袋に入れられてドナドナ。帰りは箱に入れられてドナドナですよ!!
帰りのドナドナは帝都を出るまでの短い時間なんだけどね。
この足元の箱……ヴァンパイアかなにかかな?めっちゃ埋葬されそうな箱だよ!!
うぅ……。仕方ない……仕方ないのよ。ちょっとでも疑われたらいけないから、ここは我慢して入れられましょう……。
すごく不謹慎な気分になりながら、私は大人しく横長の箱に入れられた。すみません……すみません。
少しして、バタンと扉が閉まる音が鳴り、馬車が動き出す。
「もういいぞ。」
「はい……。」
ヨイショっと声を出しながら上の蓋を退ける。
馬車の中はクレスさんと私だけだ。
「御者はクーデターの人員だ。チカの事もわかっている。気にしなくていい。」
先に私の不安を取り除く情報を教えてくれる。
この御者さんには声が聞こえても大丈夫なんだね。窓には黒いカーテンがかかっているし、みられる心配はないだろう。
「このままこの馬車で帝都の外まで行って、街が見えなくなったところでグリフォンに乗って移動だ。そして、帝国を出る。」
「わかりました。」
久々にグリちゃんに会えるんだー!
グリちゃん元気だったかなぁ?早くもふもふしたいなぁー!
やっと自由になって、伸びをする。これで帰ることが出来る。
私の服の中に隠れていたスライム君と、クレスの服の中に隠れていた人形さんが出てきてポーズをとっている。手をクロスさせて……あぁ、これは完全にマリー師匠だわ……。マリー師匠は彼らにとっても師匠になったのだろう。
クレスさんと、スライム君と、人形さんと、グリちゃんと……。やっと見慣れたメンバーだけになって、安心感が胸に広がった。
あ、帰るまでが遠足だよね。まだ安心しきるには早いかな。
「そういえば、今回はスキルを使った弊害は無いのか?体への影響はないのか?」
「はい。ユランさんがお城にあったお金を使わせてくれたので、私の体に影響はありませんでした。」
思いっきりお金を使っちゃったんだけれど……その結果ユランさんは体を取り戻せたし、怒っていないよね?
そうそう、バーリアーを解いてお店を解体した時、土地代が発生していた。それも宝物庫から引かれていたみたいなんだけれど、私は返却先が宝物庫になるようにお願いした。大事な国民から集めた税金、お金だものね。少しでも戻しておきたい。さらに、宝物庫のお金達はもう私のものじゃないって強く思う事にした。
それによって、宝物庫のお金はもう私の所有物ではないという認識になったみたいだった。なかなかアバウトな感じだけれど、ちゃんとスキルは対応してくれた。私の認識が大事って事なのかもしれない。
お城の中に建てていたし、土地代は結構かかっていたんだと思う。私のお金から引かれなくて良かったー。
今回は体への影響が眠る魔法だけだった。そう思うと、そこまで危ない感じではなかったのかもしれないな。
この帝国で起こった事を考えていると、周りからたくさんの人の声が聞こえてきている事に気が付いた。
「この声は?」
「恐らく、この馬車に聖女が乗っているから一目見ようと街の人が出てきているのだろう。」
「えっ!もう知られているんですか?」
「ああ。クーデターに参加出来なかったもの達がすぐに言い回ったそうだ。これも計画のうちだな。」
「へぇ……。」
「カーテンから覗いてみるか?」
「良いんですか?」
「向こうに分からないように、ほんの隙間からだがな。」
「はい!」
私はクレスさんにカーテンを少しだけ開けてもらって外を見た。
空は青くなっていて、朝になったのがわかる。そういえば、さっき鳥の声が聞こえていたなぁ。クーデターが始まってから、そんなに時間が経っていたんだ……。
通りにはたくさんの人がこちらを見ていて、手を組んで祈るような形を作っている。
みんな表情は暗い。そうだよねぇ。聖女様死んじゃっているからねぇ……設定上。
帝都の人々全員を騙しているみたいで、なんとなく申し訳ない気がする。
街並みと、こちらを見ている人たちを覗いていたら、さっきまでのざわついた感じとは違う、叫び声のようなものが上がり始めた。
「なんでしょう?何か……さっきまでと雰囲気が変わった気がしますが……。」
「……下がっていてくれ。御者に確認しよう。」
クレスさんが御者さんと連絡をとる用の窓に顔を向けて確認を取ってくれるみたいだ。
私は大人しく、カーテンをしっかり閉めて窓から離れるように椅子の真ん中に移動しておいた。
「た、大変です!し、神獣様が!神獣様が現れました!」
御者さんの叫び声は私にも聞こえた。
……初めて聞いたなー。神獣様だって。名前がもうファンタジーだなぁ……。御者さんの慌てようからすると、きっととっても珍しいお方なんだろう。
「……まさか。チカを迎えにきたのか……。」
「えっ!?」
クレスさんの呟きを聞き逃しませんでしたよ。
どういう事?なんで聞いた事もない神獣様とやらが私を迎えに来ちゃうんですか!聖女様ならいざ知らず、私はただ巻き込まれただけの一般人ですよ!
「いや……ほら、言っていただろう?カルセドニー渓谷で……。」
「ん?カルセドニー渓谷ですか?」
「神獣は精霊を統べる方だからな……聞いていらしたのだろう。」
「んん?」
クレスの言っている事が理解できなくて考えていると、御者さんは馬車をゆっくりと止めた。馬さん達が暴れちゃうかららしい。
御者さんと連絡をとる用の窓から馬車前方がちょっとだけ見えた。
そこにいたのは……。
とても綺麗な青い龍のような存在だった。
……いや、知り合いにこんな方いらっしゃらないんですが!!
竜ではなくて、龍なんです。
それが伝わると良いなーと思ったサブタイトルでした。




