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7 直感って大事だと思うんです!

サブタイトルの横に、数字をつける編集をしました。

 なんだろう、体がグラグラ揺れている気がする。


 「……ぃ。お……。」


 声が聞こえる……。あれ?もしかして、今日仕事だったっけ……?え、まさか寝坊!?


 カッと目を開くと、その勢いに驚いたのか、びっくり顔の男性がいた。あれ、お母さんじゃない?っていうか、家じゃない……?よく考えたら、一人暮らしなんだから、お母さんがいるのもおかしいか。


 「大丈夫か?」

 「えっと……。ここ……外?」

 「救援信号が上がったのが見えた。依頼で近くに来ていたから駆けつけたんだが。全員気絶しているし、周りは焼け野原だったんだ。何が起きたか、わかるか?」


 起き上がった私の体を、手で支えてくれながら、状況を教えてくれた。全員気絶って事は、無事なのかな?……うん?焼け野原?


 「馬車の中の人は無事ですか?」

 「……ああ。見事に全員気絶して、まだ起きていないが。怪我はなかった。君だけが外にいたから、何か知っているのかと思ったんだが。」

 

 私は話を聞きながら、馬車を見た。馬車と、馬車から二メートルくらいの範囲だけ草が生えていて、何事もなかったよう。馬さんも気絶しているのか、馬車の横で倒れている。そして、その周りは……。


 「焼け野原……。」


 何も無かった。地面が黒く焦げたようになっていて、草も木もない地面。ついさっきまでいたヤギの魔物も見えない。代わりに、何か黒い物体がある気がする。直視はしないでおこう……。

 直前までの事を考えたら……これはどう考えても……これのせいだよね?いや、生きていたんだし、おかげかな?


 手に持っている魔道具の残骸を見る。先の方は終わった手持ち花火のように、黒ずんで草臥れている。持ち手の部分は握りしめていたせいか、くしゃっとなってしまった。


 「その模様は……。」


 男性が持ち手の模様を見て、眉をしかめた。この模様って何か意味があったのかな?まじまじと男性の顔を見て、びっくりした。


 「あ。あの時の冒険者さん!」


 イケメンさんは、あの街で会ったイケメン冒険者さんだ!まさか、イケメンさんにもう一度会えるとは……。


 「今気付いたのか。」


 イケメンさんのちょっと困ったような笑顔にドキッとする。この顔は胸に来る……!って、今はそれどころじゃないか。私は立ち上がって、服についた土を払う。一緒にイケメン冒険者さんも立ち上がって、周りを見回した。


 「その魔道具なら、この現状も納得だ。それは、この国の最高位の魔道具師の印が入っているからな。」

 「そんな凄いものだったんですか……。」


 マリーさん、いや師匠はそんな凄いものをくれたんですね……。さすが師匠!!おかげで生きていられましたよ!


 「……。もうすぐ、救援信号を見た者達がここに駆けつけるだろう。来た人に事情を話さなければならないだろうから、ここでしばらく待機かな。なぜ、ここが焼け野原なのか、そしてなぜ、そんな威力の力が発動したのに……この馬車の周りだけ無事なのか。話せるか?」


 そう言われて、気付いた。私、スキルを発動していたんだった。だから、この馬車と中のみんなと馬さんを助けられたんだ。『警備設定 強』凄いな!広範囲を焼け野原にする威力の魔道具を防げるなんて……。

 でもスキルの事を知られるのって大丈夫なのかな……?みんなには読めない文字のスキルって普通じゃない気がするんだけど……どうしよう。


 「あの……。」

 「何か知られたらまずいものがあるのか?」


 図星すぎて、その質問はきつい……。答えられず、恐る恐る顔を上げると目が合った。その目は私の想像していた咎めるようなものではなく、心配してくれているように見えた。

 そう思った時、私は頷いていた。この世界に来て、初めて人を信頼した気がする。この行動が正しかったかどうかはわからないけれど、この人は大丈夫な気がしたんだ。初めて会った時から親切なこの人なら。


 私が黙って頷いたのを見て、彼もまた頷いた。


 「わかった。じゃぁ、みんなが起きる前に、他の人が来る前に、ここを離れた方が良いだろう。……君はその高威力の魔道具を使って死んでしまった、という事にしてしまおうか。」


 そう言うとイケメン冒険者さんは、馬車から離れたところにあった黒い塊を、私の気絶していた場所に引きずってきた。私は直視出来なかったけれど、多分人か魔物かどうかもわからない程、黒焦げだと思う。そこに、私の余っている服を出して、ボロボロに割いて火の魔法で焦がし散らした。

 これが、初めて見た魔法って言うのもなんだかな……。


 「君は魔道具を発動させた事によって死んでしまった。なんで馬車の人たちが無事だったのか、その謎はわからないまま、と言うわけだ。さ、ここから離れよう。」

 「あ、ちょっと待ってください。」


 危なく忘れるところだった。私は馬車から二メートル程離れた場所に立って、スキルを発動させた。


 「スキル【コンビニ経営】。この店舗を解体する。」


 画面が私の前に出てくる。



 警備時間が短かった為、払い戻しを致します。

 また、店舗で働いた従業員に時給を払います。

 ここの土地代は発生しませんでした。



 うん。スキルを発動させた時から馬車にいた人は従業員になっていて、後から敷地に入った馬さんはお客様になっていた。従業員には短時間でも働いていた、として時給が発生したんだね。気絶したみんなの近くに、お金が落ちている感じになるのかなー。


 私がお金の袋を開けると、チリンとお金がぶつかる音が聞こえた。これで大丈夫かな。



 退店作業を完了致しました。

 


 みんなが無事で良かったな。スキルを使った甲斐があった。馬さんにお肉をあげられなかった事だけが残念だなぁ。


 「終わりました。」

 「……よし。行こう。」


 私がスキルを発動するのを見ていたのかな。ちょっと反応が遅かった。もうこの人には隠せないと思うし……聞かれたら答えよう。


 馬車から二百メートルくらい離れた所に、木につながれた魔物がいた。


 羽がある、四足歩行の鷲。背中に鞍が付いていて、荷物も積めるように横にカバンも付いていた。

 これって……。


 「グリフォン!」

 「クエェ!」


 私の言葉に反応して、目の前の魔物が鳴いた。羽をバタつかせて、イケメン冒険者さんに顔を擦り付けている。結構な大きさだけれど、目がキラキラしていて、可愛いかも……。


 「あぁ。こいつはグリフォン。俺の相棒なんだ。飛べないんだけどな。」

 「クエェェェェ……。」


 立派な羽があるのに、飛べないのかぁ。残念そうなグリフォンの声が響いた。

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