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70 間違っていたら、素直にごめんなさいを出来る人になりなさいってお婆ちゃんに言われました。そんな人間になれているかな?

 クレスさんはどこにいるのだろう……?もうお城に入ったのかな?だとしたら、どこからお城に入ったのかなー……?


 ……一目、見られると思ったんだけれど……。



 はっ!!



 自覚してから浮ついておりません事!?私!


 くくく、口付けとか期待しておりません事!?……はい。しておりますです。



 期待くらいしても良いでしょ!だって、ファーストですのことよ!



 ……ダメだ。なんか口調とか色々変だわ。落ち着け私。




 さて、皇帝達の悪巧みだった内部からの攻撃もマディラさんにより鎮圧されたし、後はお城の中を見に行こうかな。


 良い感じにお城の中は混乱を極めている。主に文官さんと思われる服装の人たちがすごい涙目でグルグルしている。

 仕事がー!終わらないーー!もうダメだーおしまいだー!誰かーーー……。などなど、なんだか社畜成分多めな人が多いぞ!文官さんって、体を動かさないからなのかな……発言がネガティブ気味だ。自分が社畜と化している事にも気付いて無さそうだ。

 ……クーデターが終わったらもっと忙しくなりそうな予感がするよ?大丈夫かな……。ガンバレ!文官さん!


 兵士さんたちは、ほぼみんな大広間っぽいところに集合している。文官さんたちよりも固まりやすいんだね。みんなで報告、相談している。

 一箇所を交代で殴り続けるという作戦を行なっているみたいだ。お金はいーーっぱいあるからね。たぶん朝になっても大丈夫だと思う。……ガンバレ!兵士さん達!


 メイドさん達は、基本どこのお部屋にも入れない感じになっている。通路をずっとグルグルバージョンだね。……ちゃんとおトイレは行けるように考えてあるよ!

 焦った顔でずっとパタパタと走り続けている。どこかしら入れる部屋があるかもしれないと一生懸命探しているんだろう。


 みんなそれぞれ模索している感じだね。……一部絶望している文官さんを除いて。


 その中をクーデターの参加者達が走って行く。

 メイドさんや文官さんは拘束して放置。兵士さん達は良い感じに固まって行動してくれていたので、塊ごとに出入り口をスキルで塞いでいった。急に壁が増えて何も出来ない状態だ。大広間の出入り口も閉じさせてもらった。

 これでほとんど無力化出来ただろう。



 クーデターの参加者さんって、そこまで数がいなかった。参加したいという人はとても多かったらしいんだけれど、混乱を避けるためにも最少人数で行く事にしていたらしい。ユランさんから人数を聞いて驚いた。


 こんな大きなお城に突撃するのに、たった五十人。しかも分散して行く予定だったそうだ。


 私はスキルを思いっきり使う事にして、その五十人のサポートをする事にしたのだ。


 今のところ、怪我する事もなくみんながお城に侵入出来ている。うんうん。

 この調子で皇帝タガロスさんやその息子達を捕まえて、皇帝の座から下ろしてもらって……いい政治が出来る人を置いて欲しいね。


 そうすると、皇帝さん達はその後どうなるのだろうか?

 ……血を流さないクーデターだし、考えているのだろう。きっと……。後で聞けたら聞いてみようかな。



 私はフラフラとみんなが進む様子を見ていたのだけれど、遠くにチラッと人影が見えた気がして、気になってそちらに向かった。


 そこには爽やかイケメン系イケメン騎士さんがいた。……ルードヴィッヒさんだよー。

 その存在、忘れてた!


 ルードヴィッヒさんは慎重な足取りでお城の中を進んでいる。っていうか、その道の先は……。


 「私の寝ている部屋!」


 ルードヴィッヒさんは周りを気にしながらも躊躇無く私の寝ている部屋に入った。

 そして、寝ている私の顔を見て動きを止めた。


 「チヅル!!」

 「そうだったーー!私、自分の部屋の周りにはお店置いていなかったんだった!」


 私は慌ててこのベッドの周りにお店を張ろうとした。ここから離そうと。


 ルードヴィッヒさんは、私のベッドに近づいて……ベッドの周りに張っているバーリアーを素通りした。


 「えっ!?あっ!ええぇ!?」


 なんで!?なんで素通り出来たの!


 ルードヴィッヒさんは悲しそうな顔で私の顔覗き込んでいるし……。なぜか私の頬に手とか添えちゃっているし……。


 ヤバいヤバイ!なんだかその雰囲気ヤバイですよ!ルードヴィッヒさんをバーリアーの外に出さないと!

 私が寝ているベッドの周りに張っていたバーリアーのBL設定を開く。


 あぁ……そうだった……。


 『この国の人間全員』って設定していたんだった。ルードヴィッヒさんはこの国の人じゃないね。ギベオン王国の人だね……。だから入れちゃったのか……。


 「チヅル。チヅル!……やはり眠らされているのか……。どうすれば起きるんだ?」


 幸い、ルードヴィッヒさんは起きる方法を知らないみたいだね。良かった!……ん?良かったのかな?


 起きるだけなら、ここで口付けされていれば起きられる。この国からさっさと逃げる事も出来るんだよね。

 ……自分の欲が恐ろしい!

 口付けされるなら好きな人と。という欲求が、物凄く優先されている事に気付かされた。本来はそんな事を気にしている場合じゃないはずなのにね。


 ……とりあえず、ルードヴィッヒさんは起きる鍵を知らないんだし、出て行ってもらいましょう。

 他の人が入れないのに、ルードヴィッヒさんだけ入れる状況を見たら、ルードヴィッヒさんが怪しまれる可能性もある。ルードヴィッヒさんが何を目的にここにいるのかわからないけれど、迷惑になっちゃうかもしれないものね。


 「BL設定、ルードヴィッヒさんっと。……あれ?」



 何も起こらない。



 って、何かのゲームのワンシーンのような説明を思い浮かべている場合じゃないって!



 「……もしかして。」


 名前が……違う?そうとしか思えない。この人だけ、名前を二つ教えてもらったのだから。

 一つはマリー師匠に、もう一つはこのイケメン騎士様直々に。


 あの時、イケメン騎士様に教えてもらった名前は……。


 「レオナルド?」

 「うわっ!」


 BL設定にレオナルドの名前が記入された途端、イケメン騎士様はベッドから吹っ飛んでいった。


 吹っ飛んだレオナルドさんが、ちゃんと受け身をとっているのを見ながら、私は呆然としてしまった。

 レオナルドさんが本当の名前だったのか……。

 私はあの時、騙されたんだと思っていた。本当は、誠実な人だったんだ。みんなには教えていない本当の名前を教えてくれちゃうくらい、私に誠実にあろうとしてくれていたんだ……。


 なんだか申し訳ないな……。ずっと嘘をつかれたと思っていた。気を抜かないようにしなくちゃいけないんだと、そう思わせてくれたんだと、前向きに捉えていた。でも実はちょっとショックだったんだよね……。

 本当はただただ良い人だったんだ……。


 起きたら、ちゃんと謝りたい。本人が言った名前を信じなかった事。心配してくれたのも本心からだったのだろう。その心すらも疑っていた事を、謝りたいな。



 今は離れてもらうけれども!


 レオナルドさんはスッと起き上がって、見えない壁に手をついた。


 「これは……。今は来るな、ということなのだろうか。」


 うんうん。そんな感じです!よく分かったね。


 「チヅル。必ず助ける。」


 そう言ってレオナルドさんは去って行った。


 ……大丈夫です!クレスさんが助けに来てくれるので!間に合ってます!

 レオナルドさんは自分のお仕事してください!本当に!


 良い人すぎて、お仕事に支障が出ないかちょっと心配になった。



 レオナルドさんが見えなくなって一息ついたところで、ドガンッと大きい音が聞こえた。


 なんの音だろう?見に行ってみようか……。


 私は、自分の本体が寝ている部屋の周りにお店を展開して、クーデターの参加者さん達以外の人が入れないようにしてから音の発生源へと向かった。

イケメン騎士さん、やっと本当の名前を知ってもらえました!誤解が解けたよやったね!

千華はまだ本当の名前教えていないけれども……。

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