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閑話 イケメンチャラ冒険者の相見

マディラ視点のお話です。

なんだか難しい話をしているようで、あまりしていない……と思う。

 帝都は他の場所よりも賑やかで、たくさんの人と物で溢れかえっている。


 途中の村々は皆飢えていて、泊まることすらも危ぶまれたが、ここまで来れば安全だろう。もう野営をしないで済む。僕とアイちゃんは別々の宿屋に部屋をとって休むことにした。


 「アイちゃん。焦っても意味ないんだから、変な行動しないでねー?」

 「わかっている。」


 道中でも散々言っておいたから大丈夫だと思うけれど……一人で動かれると予定が狂ってしまうからね。

 念には念を入れて勝手な行動は慎んでもらった。

 なーんか野営中ソワソワしていたんだよね。だから余計に心配になっちゃったんだよ。


 「明日にはあいつに会うんだろう?それまでは動いても意味がない。それくらいはわかる。」


 アイちゃんはチカちゃんがいなくなってすぐの頃よりは、だいぶ落ち着いたようだ。


 「うんうんー。じゃぁ今日はゆっくり休むよー。」

 「ああ。」


 そこで分かれて別々に休んだ。……別に一緒の宿屋でも良かったんだけれど。どこに目があるかわからないからね。



 次の日。


 僕は細い裏路地にひっそりと建っている飲み屋に足を運んだ。


 「……いらっしゃい。」


 あまり歓迎されていないような声。店主はジロリとこちらを見て、眉間にシワを寄せた。そんな店主の帰れって感じの雰囲気を無視して勝手にカウンターに座った。

 そして、しっかりと店主の目を見て、「決められた注文」をした。


 「オーロとセイブル。割ったやつ頂戴ー。」

 「……あいよ。」


 言いながら、他の客には見えないように指を動かす。

 金色と黒色に近い色合いのお酒。金は皇帝の髪色を表して、黒はそれを塗りつぶす。指でサインもしなければいけない。クーデターを起こそうとしている組織の合言葉みたいなものだね。


 一旦奥に下がっていった店主は上の階への階段を指し示す。


 「上に用意した。」

 「ありがとー。」


 軽い足取りで二階に上がり、三つドアがある中の唯一閉まっている部屋に入る。


 「久しいね。」

 「ほんとだねー。あー、相変わらずの露出だねー。」


 ドアを閉めてすぐに話しかけてきたのは懐かしい顔。

 部屋のイスに座って、先にお酒を飲んでいる女性。ジュノ。

 胸を強調した服装を派手に着崩し、髪は横に流して色気がダダ漏れている。ただし、服はちゃんと見えてはいけないところは見えないようになっているので、かなり計算された着方をしているのだと思う。

 前に、どの角度から見ても大丈夫なのかグルグル回って見たけれどやっぱり見えなかった。ある意味芸術だと思う。ちなみにその時は見過ぎだ、と鼻で笑われたのを覚えている。


 「隊長は?」

 「時間を空けて来る予定だよー。」

 「そうかい。」


 そう言って持っていたグラスを煽るジュノ。飲み方にすら色気が漂う。

 僕もイスに座って、用意してもらったお酒をちびちびと飲んだ。


 「もう、知っているんでしょー?聖女の事。」

 「ああ。すぐに情報が来たよ。あの方から。」

 「そっかー。元気にしていらっしゃるのかなー?」

 「……変わらずさ。」

 

 ジュノが少し下を向く。長い前髪が顔に影を作った。……相変わらずあの方への忠誠が強いみたいだ。


 「それもあと少し、なんでしょー?そろそろ動くって書いてあったじゃんー。」

 「ああ。必ずお救いしてみせるさ。あんたと隊長も手伝ってくれるんだろう?」

 「うん。聖女とは知り合いでねー。その子にアイちゃんがお熱なんだよー。」

 「へぇー。あの隊長が、ねぇ。」

 「うんうんー。びっくりだよねー。」

 「……おい。」

 「アイちゃん!すごいタイミングー。あはは!」


 時間差で来る予定だったアイちゃんがちょうど来た。タイミングが良すぎて、思わず笑ってしまった。


 「お久しぶりだねぇ、隊長。」

 「ジュノ。変わり無いようだな。」

 「ええ。……隊長は少し変わったみたいだねぇ。」

 「……。」


 腕を組んで黙ってしまったアイちゃん。それを見て、二人で更に笑ってしまった。


 「それで、どこまで話してあるんだ?」

 「えっとねー……。」


 僕達の話がまだ全然進んでいなかった事を知ると、一度頷いてアイちゃんが主導で話し始めた……。




 「計画の内容は理解した。突入には俺とマディラも参加しよう。俺はどこに配属されても良い。代わりに聖女はこちらで引き取らせてもらう。」

 「僕もどこでも良いよー。出来ればだけど、たくさん暴れられる場所が良いなー!」

 「ありがたいね。隊長には一番面倒だと言われている皇帝を、マディラには皇帝の息子達をお願いしたい。聖女の方は元々こちらには必要ない。騒ぎが大きくなる前に回収しとくれ。」

 「わかった。」

 「りょーかいー!」


 チカちゃんの扱いが物のようになっているけれど、気にしない。ジュノは、たまにこんな言い方になっちゃうんだよねー……。


 「あの方は納得されているのか?」


 アイちゃんは、次にあの方の意思について聞いていた。

 あの方は特に争いを避けていたからねー。僕もそこは気になっていたんだよね。


 「ああ……。このままでは国民は疲弊し、いずれ皆いなくなってしまう。それを憂いておられた。ただ、あの方は血を流すのは賛成されていなかった。」

 「血は流さずに政権交代……ねー。」


 なかなか難しそうだなーと、上を向いて考える。すると、あまり間をおかずに強い意思のこもった声が隣から聞こえてきた。


 「それを成功させるのが、俺達の忠誠だろう?」

 「あ、アイちゃん良い事言うねー!」


 あの方にはお世話になったからね。僕も頑張ってみようかなー!


 「あ、そういえばさー。クーデターの後は誰を置くの?」

 「出来る事ならあの方について欲しいと思っているよ。ただ、まだ起きる術がわかっていないんだ。もし、このままわからない場合、一番下のラピス様になると思う。」

 「まだ小さいから操りやすいって感じー?」

 「……そうだね。否定はしないよ。これ以上国民が疲弊するのだけは止めるように動いてもらう。皇帝の血の不始末、その血筋に尻拭いしてもらうだけの話さ。」


 成人もしていない子供には重いものかもしれないけれど、それだけ皇帝が今までやってきた事はまずかったって言う事だね。

 まぁ痛めつけたりしないし、いい政治をしてくれれば彼らは何も言わないだろうけれど。



 そうやって長い事計画の話をして、終わる頃には夜になっていた。



 「じゃぁ、後の細かい日時は追って連絡するよ。」

 「ああ。」

 「よろしくー。」


 店を出て、少しだけアイちゃんと同じ道を歩く。周りの誰にも聞こえないほどの小声で話しかけた。


 「アイちゃん。皇帝ってめっちゃ強いんでしょー?」

 「そう聞いたな。」

 「三年前から一番は変わっていないんだねー。その皇帝相手に血は流さずにって……出来るの?」

 「……ああ。」


 ちらりと横を見ると、強い眼差しで前を見ている……隊長。……懐かしいなーこの顔。

 この眼差しに憧れて、ついて行っちゃったんだよねー。


 アイちゃんがこの顔の時は、まず間違いない。クーデターは成功するだろう。


 「そっかー。じゃぁ僕も久々に本気だすよー。」


 僕も気合を入れないとなー。

クレスが千華に返事を送った後くらいの出来事です。

この後、クレスが千華にクーデターに参加する事を伝えるメッセージを送っています。


なんか色々伏せながらの会話だらけで書くのめんどかった……。

あの方がどの方かは……伝わっていると良いのですが……。


あと、ジュノさんは姉御な感じのエッロいねーちゃんをご想像ください。

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