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65 今どきギャフンとか……というか、ギャフンと本当に言っていた時代を知りたいですよ。

ちょっと短めですが、キリがいいのでここで切りました。

 子供の獣人。すぐに兄弟だとわかるほど似ている二人。


 緊張しているのか、耳はピンと立っていて、忙しなくピクピクと動く。目はぱっちりとしていたのだろうけれど、疲れからか栄養失調からか、垂れがちで生気がない。お互いを励ますように手を握り合って、床に座り込んでいる。服は汚れていて、あまり衛生環境も良くないとすぐにわかる。


 霊体化していなかったら、臭いも凄かったのかもしれない。


 きっと綺麗にしたらとっても可愛いだろうと思われる猫の獣人さん兄弟だ。


 「彼らがさっき言っていた兄弟ですか?」

 「うむ。彼らは人質。上の姉妹を動かすためにここに入れられて、姉妹がいないときは出して、荷運びなどの労働をさせられている。」

 「そんな……。こんなに小さいのに……。」


 まだ十歳になるかならないかくらいの子供に労働させてるって……。エンジュ共和国ではお手伝い程度ならあるけれど、荷運びとかのきつい仕事なんて絶対にさせないのに。


 上に姉妹がいるって言ってたっけ。猫の姉妹っていうと、グランディディ王国に一緒に行ったマータさんビータさんを思い出すな……。彼女達は今どこにいるだろうか。


 「昔、この地が帝国になる前は獣人と人間と仲良く暮らしていたそうなのだがの、帝国が出来てからその扱いはガラリと変わった。獣人達の大半はカルセドニー渓谷を抜けて西に逃げ、新しい国を作ったそうだが……一部、逃げられない者もいたそうだ。その末裔達がこうやって酷い扱いを受けているのだのぉ……。」


 昔からそんな扱いを受けていたんだ……。


 「クーデターの人員の中に、獣人もかなりの数いてのぉ。成功したら、獣人の扱いを古い歴史に書かれているように、戻したいと思っておるそうだ。」


 逃げるのでは無く、変える。その意思でクーデターに参加するんだ……。きっとこれからの獣人さんの事を考えて、命をかけるのだろう……。強いな……。


 こんな子供が酷い目に合っているのを見たら……知っていたら、動こうと思うよね。



 勘違いされて、誘拐されて、後継者争いに巻き込まれて……私には本当は関係ない事だらけの事情でこの国に来た。

 帰る事が出来ればそれでいいって思っていた。



 でも……色々と見てみて、なんかムカッとしてきた!



 やられっぱなしで帰るなんて、ダメよね!やられたら、やり返す!三倍返しだ!


 自分にはなんの関係もない理由で誘拐されて、くっ……口付けしないと起きないとか訳のわからない魔法かけられて、美少女にトゲのある言い方されて、こんな子供にひどい事するような奴ら、ゆるすまじーー!


 私情が多分に含まれている気がするけれど、気にしない!


 「ユランさん!」

 「ん?」

 「私、ちょっと気が変わりました。皇帝一家、ギャフンと言わせたいです!」

 「……え?」


 そうだ!ギャフンって言わせるんだー!私は聖女じゃないんだもの!大人しくしているなんて柄じゃない!

 私にできる事、してやろうじゃない!



 急にボルテージが上がってしまった私を落ち着けようとしてくれたのか、ユランさんに部屋まで戻された。

 時刻は夕方。コックさん達を見に行く事は却下されました。


 ……解せぬ!



 「何が出来るかなー。とりあえず起きる事が出来ないとなー。」


 誰に言うでも無く、ブツブツと独り言を言っている自覚はあります。でも喋らないと落ち着かないんだよー。


 「起きるには……く、口付け……ぐっ……。それ以外の方法での起き方はわからないし。」


 口付けかぁ。


 ……ん?『口付け』が条件なんだよね?誰のっていう指定は無いんだよね?


 「ルノールじゃなくてもいい……?」


 あいつにキスされるのは嫌だったんだよね……。あのナルシストっぽい顔が近付いてくるのを想像しただけで鳥肌立つし!でも、誰でもいいとしたら……?


 「ユランさんに聞いてみないと!」


 もし、誰でもいいのなら……。

 あ、起きる鍵が誰でもいいとしても、私は誰でもいいとは思ってないよ!?


 どうせキスされるなら好きな人が良いもの。ファーストキスだし……。


 うん。

 一番に思い浮かぶのがもうあの人しかいない……。


 「やっぱりそういう事だよね……自分の気持ちに嘘つけないよね……。」


 理想とかいう前に、私はもうあの人のこと好きになっちゃってたんだろうなぁ。

 むしろ好きだから、理想がああなっていたのかもしれないまである!

 

 イケメンで、優しくて、頼りになって、声も素敵な人……。


 うん。

 好きなんだ。クレスさんの事。


 好きになっちゃっていたならしゃーない!


 それはそれとして……。


 「クレスさんがキスして起こしてくれるかは別問題!そしてそれで起こされた後、私どうすれば良い!?」


 大迷宮に入った気分だわー……。


 まずは、ユランさんに確認しよう。そうしよう……。



 ピコン!


 あ、メッセージが来た。

 クレスさんからだ。さっき考えていたこともあって顔が勝手に赤くなってしまった。

 ……まって、霊体化しているのに赤くなる血流どこから……あ、考えちゃダメだ。


 『チカ。今日、クーデターを起こそうとしている組織と接触した。準備が出来次第、突入する。その時に俺も一緒に行く事になった。』

 「えっ……。」

 『詳しい日時はまた連絡する。』


 メッセージは私の返事を待つことなく二つ送られてきた。


 クレスさんがクーデターに参加……。


 ……大丈夫だよね?


 

千華の心境というかそういうものをしっかりと書こうとしたんです。でも気付けばふざけた感じが所々に入ってしまいました。


この章の千華が、千華らしく吹っ切れるシーンなので、あまり余計なものは入れない感じにしました。

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