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62 いっぱい持っていると無駄に調べたくなりますよね。ドラッグストアで売っていたのを思い出します。

遅くなりました……。

偏頭痛で画面を見るのがキツかったのでなかなか進みませんでした……。


誤字報告ありがとうございます!

 朝になった。


 正確にはまだ日は昇っていないんだけれど。まだ空が暗いうちからコックさん達は起きて厨房に入っている。


 めっちゃ朝早い!大変だなぁ……コックさん。


 男性のコックさんがソースの入っているツボに、何やら長方形の細い紙を持って、先端を浸けている。浸けられた紙は持っている部分と色を変えていた。


 「どうだい?」

 「……ダメだ。こっちは全滅だな。」

 「こっちはこれと、そこのやつがダメっぽいな。」

 「鍵はしっかりかけていたけどねぇ。やっぱりダメかい。」



 あれってリトマス試験紙!?


 リトマス試験紙的な紙は、青と赤じゃなくて肌色の一色だけしか見えない。反応すると、濃い紫になるみたいで、コックさん達が調べるのに使った紙はほとんどが紫色に変わっていた。……毒々しいね。


 「大丈夫なものもあるけれど……これは罠かもしれないね。やっぱり全部一から作るしかないね。」

 「はぁ……。毒殺なんか迷惑だからやめてくれよなぁ……。」

 「ほら!時間がないよ!さっさと動く!」

 「「へーい……。」」


 コックさん達は、作り置きしていた物を全て捨てて、ソースやコンソメスープを作り始めた。リトマス試験紙みたいな紙で毒があるか調べていたみたい。

 そして大体の物に入っていた……と。最初からあまり期待はしていなかったように見える。っていうか、一品だけに入れたりするならわかるんだけれど……ほとんどの物に入れちゃったら入れた犯人も危ないじゃん!食べないつもりだったのかな?


 あ、もしかして……兄弟でそれぞれ別の物に入れていたら、ほとんどの物が毒入り食材になっちゃったのかな?

 ……もはや食品のロシアンルーレット!当たりの方が少ないなんて、えぐいわー。



 ソースやスープを一から作り直すなら、日が昇る前から作業するのもわかるね。いつもはこんなに早くないんだろうね……。お疲れ様です!コックさん達!



 昨日に引き続き、今日も作る様子をしっかりと見させてもらった。相変わらず早いけれど、なんとか目で追った。頑張った!私!


 毒が混入したおかげで、ソース作りを一から見られた。私としては勉強になるから、嬉しい事だ。もちろん、毒を入れることはダメだけれど!


 そんなこんなで勉強させてもらって、ひと段落× いちだんらく=いち段落 ついた感じになったので、またお城をウロウロする事にした。


 「チカさんやー。」

 「ユアンさん。おはようございますー。さっきぶりですけれど。」


 星を見てから会っていなかったから、数時間ぶりの再会だ。挨拶は一応朝になったんだし、しておいた。


 「おぉ。おはよう。チカさんや、あなたの体が眠っている部屋で少し騒ぎが起こっているようでの。見に行った方がいいかもしれんと思って、呼びに来たんだがのぉ。」

 「騒ぎですか。見に行きます!」


 自分の体に危険があったりしたら嫌だし、すぐに行こう!バーリアーを張っているから大丈夫だと思うけれど……。唇の危機かもしれないと思うと、不安になる。無事か!私の唇!



 自分が寝ている部屋に着くと、ルノールが叫んでいた。部下っぽい人が私のバーリアーをドンドンと叩いている。


 「どうなっている!術をかけてから結界を張ったというのか?破れぬか?」

 「だ、ダメです……びくともしません……。」

 「くそっ!」


 悪態をつきながら、結界を蹴るルノール。キザでキレやすいとか……。残念過ぎるでしょ……。

 バーリアーが思いの外硬かったのか、蹴った足のつま先をブルブルと振って、しかめっ面をしていた。痛かったのかな?


 「このままの状態が続けば、結婚式も開けない……。それどころか、起こすことも出来ないでは無いか!」

 「……。」

 「お前ら!なんとか策を練れ!」

 「……はっ。」


 すごい嫌々返事してるぅ!無理だろって顔しているよー部下さんたち!下向いているからルノールからは見えないだろうけれど!


 ふむ。私の張ったバーリアーに気付いた騒ぎだったんだね。

 このままバーリアーが解かれなければ、私は結婚もしなくて済むし、唇も守られる!うんうん!


 しかも、バーリアーは宝物庫のお金がある限り張れるし……。大丈夫そう!


 私自身もどうやって起きたらいいのかわからないんだけども……。



 口付け……キスかぁ。



 ……どうせキスするなら、好きな人としたいよね。ファーストキスだし!

 好きな人……。うーん。わからん。今までそれどころじゃ無い人生過ぎて、好きな人とかを考える余裕はなかった。あ、小学生の時はかっこいいな、とか思う子はいたよ?憧れ的な物だったけれど。


 そうだなぁ……。

 イケメンで、優しくて、頼りになってー。あ!声も素敵な人がいいなー!


 特に思いつかないので、理想を並べてみる。よくある理想すぎじゃない?こんなので本当に好きな人とか出来るのだろうか……。


 うんうん考えていると、ルノール達はいなくなっていて、代わりに背の小さい女の子がドアから顔を覗かせていた。


 「……皇帝の第八子。末の娘のラピスじゃのぉ。」

 「ラピスちゃんですかー。可愛いですねぇ。」

 「そ、そうだのぉ。」


 ちょこっと顔を覗かせるその仕草がすでに可愛いんだけれど、見た目もめっちゃお人形さんみたいで可愛い。もちろん、西洋人形の方ですよ!日本人形の方は身代わり人形さんでお腹いっぱいですからね!


 皇帝と同じ、金色の髪はハーフアップに編み込まれている。瞳は紫ではなく、濃い目の赤。パッチリ二重にシュッとした鼻筋。唇は小さく、子供だからか頬がほんのりとピンクに染まっている。

 美少女だわー!


 部屋に誰もいない事を確認していたのか、キョロキョロと辺りを見回してから部屋に入ってきた。

 ベッドから少し離れた位置で立ち止まり、バーリアーに手を置いて覗くような体勢で眠る私を見ている。


 ……興味津々な感じ?


 「彼女はいくつなんですか?」

 「そうだのぉ。確か……十歳になっていたかのぉ。」

 「若いなぁ……。」


 美少女ラピスちゃんは、腰に付けたポシェットに手を突っ込んでいる。


 思う物を取り出したかと思うと、腕を振り上げバーリアーに向かって振り下ろした。


 ガンッ!と音がなる。その勢いの強さに私はギョッとした。


 「えっ!何しているんですか!?」

 「彼女のスキルはのぉ、魔力を切ることができる。あのハサミを使ってチカさんの結界を切ろうとしたのだろうのぉ……。」

 「ひえぇぇぇ……。」


 私のスキルは魔力で出来ていない。お金で出来ていると言っても過言ではないからね!だから切れなかったようだ。……良かった。


 それにしても、見た目に反してその行動の素早さと大胆さにびっくりしたー。

 美少女は首を傾げ、切ることが出来ないと悟るとハサミをしまってまたベッドの私をじっと見つめていた。


 「おそらく……だがのぉ……。この眠りの魔法を解く為に近づきたかったのだと思う……。」

 「解いてくれようとしているんですか?」

 「うむ。ただ、チカさんのことは実験台にしようとしているのだと思うがのぉ……。」

 「じ、じっけん……。」

 「そのぉ……。彼女は私を起こそうとしておるようでの。私で失敗してはいけないからと、チカさんで練習しようとしたのだと思われるのぉ。」


 あの美少女はユランさんを起こしたい。自分のスキルならば出来るかもしれないと思っているが、失敗したら大変だからと私で練習したかったようだ。……怖いんですけどーーー!


 しばらく見つめていた美少女は諦めたのか、小さくため息を吐くと去って行った。


副タイトルは、リトマス試験紙の事を言っています。

今でも、古くからあるドラッグストアなどで買えますよ。

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