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59 まじめな喧嘩とか叱られている現場とか見ると、その雰囲気をぶち壊したくなるんですよね!しないけど!

まじめな話って……書くの辛くなるんですよね……。

後半はまじめな感じです。

 霊体化して、本体にバーリアーを張って、お金を拝借……いや頂戴して……。


 自分の身を守る事ができる状態になった。


 ずっと眠ったままって大丈夫なのかなと思って、ユランさんに聞いてみた。今の眠らされている状態は帝国に来たときのような睡眠とは違うのだそうだ。


 周りとの時間の流れが変わるようなもの……。心拍がとっても遅くなって老化が遅れるというものらしい。


 「不老不死の研究。その失敗作だったそうだの。」

 「不老不死!」

 「うむ。しかし、ずっと眠ったままだし、遅くなるとはいえ老化も進む。そして研究は今のところこれ以上の進歩は無いらしいの。」

 「そうなんですねぇ。」

 「そんな技術の端くれだからの、食事もトイレも心配しなくても大丈夫だのぅ。私は三年寝ているけど、大丈夫だったからのぉ!」

 「便利ぃー!って三年?!」


 ユランさんはかれこれ三年はこの状態なのか……。っていうか何で眠っているんだろうか……。

 皇帝の血筋というのが関わっているのかな……。


 「私の事が気になるかの?」

 「え、えっと……。気になると言えば気になります。でも無理には聞きません!」

 「ふっふ。そこまで大それた物ではない。時間がある時にでもお話ししようかの。」


 今すぐではないんだね。

 とりあえず、お城の中の散策をする事になった。無事に起きる事が出来た時、スムーズにお城から出られるように。


 逃げ道の確保!大事だよね!円満で帝国から出られたら一番だけれど、そうじゃない可能性もあるからね!


 ふらりふらりとお城の中をお散歩していると、えっらそうな女の人が道の真ん中をズンズン進んでいるのが目に入った。


 真っ赤なドレスにはキラキラと宝石が煌めき、結い上げた髪にも様々な飾りが光を反射させている。

 フワフワの絨毯が敷いてあるはずなのに、靴音がカツカツと聞こえる。どういう踏み込み方をすればあんな音出るんだ……。

 手には扇子を持ち、神経質そうな顔。お化粧はだいぶ濃い目。そして随分と……我儘ボディの持ち主だった。


 「あのお人は?」

 「皇帝の第一夫人だのぉ。」

 「第一!という事は第二第三の夫人も?」

 「おるよぉ。確か……第八までいたかのぉ。」

 「うへぇ。対応大変そう……。」


 奥さんの多さって、そのまま扱いの大変さに直結するような気がして、思わず口から出た言葉はそんなものだった。


 その第一夫人は、一つの扉の前に立つと、ノックもせずにドアを開けて一声。


 「タブロ!なんという失態ですか!!」

 「は、母上……申し訳ありません……。」


 母上……という事はタブロと呼ばれた人が皇帝の第一子なんだね。


 子供であるタブロさんが申し訳なさそうに謝る声の後、パァン!と良い音が聞こえた。

 ユランさんと一緒に壁をすり抜けて見てみる。頬を真っ赤にして顔だけ横を向くタブロさんと思しき男性の姿と、四股を踏めそうな仁王立ちで手を振り抜いているさっきの第一夫人。あの姿からだと張り手したようにしか見えないね。


 っていうか、謝ったのに頬叩くって……バイオレンスな教育方針なのかなぁ……。


 「このままではあの出来損ないのルノールが皇帝になってしまいます。そしてあの忌まわしい第三夫人がワタクシより上の立場に……。キィーーー!なんとかなさい!」

 「……はい。」


 なかなかヒステリックなお母さんだなぁ……。第三夫人が上の立場になるのが許せない、という事だろうか?それにしても忌まわしいって……。どんな因縁の相手なんだろう?

 なんとかなさい!ってどうするの?


 疑問が頭の中でめぐっていると、ユランさんが説明してくれた。


 「夫人たちはみな、野心家でのぉ。国の上位に立ちたくて皇帝に嫁いできておる。今は男子を産んだ夫人たちの方が女子を産んだ夫人よりも立場が上で、あとは嫁いできた順番に偉い事になっておるのぉ。後継問題でその順位が変わってしまうのが許せないのだろうの。」


 ヒステリックなお母さんは、難しいお年頃なのか……。子供も大変だなぁ……。


 「なんとかするってどうするんですかね?」

 「そうだのぉ……。」


 なんとなく嫌な予感がしつつも、気になって聞いてしまった。


 「即位される前に消すのが一番だのぉ。もちろん、ルノールも防ぐ方向で動くと思うがのぉ。」


 殺伐!

 この国殺伐としてるよ!!


 そのあと、第一夫人と同じようなやりとりを二回見た。

 一人は枯れ木のように細くて頼りなさそうな第四夫人。もう一人は普通の体型だけれどとっても背の小さい第五夫人。

 どの夫人もルノールをなんとかしろ!って感じの事を言っていた。


 後の第二、第六、第七、第八夫人たちは女の子が産まれたため、後継の話にも参加できないらしい。


 「なんだか……後継者問題って面倒で大変なんですね……。」

 「そうだのぉ。」


 こんな面倒そうな問題に巻き込まないで欲しいわぁ……ほんとに……。


 「今の皇帝は何も考えずに嫁さんを増やしたからのぉ。それで後継ぎ問題が激化してしまっての。いろいろと対策をしたのだが、上手くいかなくて……最後の切り札に聖女を持ってきたのだの。」

 「聖女がお世継ぎ問題の切り札ですか……。」

 「本当は他国を攻める際の兵器としてこの国のものにするためのものだがの。それを後継ぎに任せる事にしたようだの。」

 「聖女って兵器なんですか。」


 よしのちゃんのノートに書いてあった事を思い出した。確か……あまりレベルを上げちゃいけないんだっけ?レベルを上げたらきっと兵器のような技が使えるようになるんだろう。……それってどこが聖女なんだ。あれかな、消毒だーーー!みたいな勢いなのかな……。


 何にしても良い迷惑だよね……。


 「チカさんはあとは逃げられれば問題ないのだがのぉ。そうなるとまた聖女を探し始めるだろうのぉ。」

 「そもそも、なぜ聖女がいるって確信しているのですか?」


 この国の人は聖女の存在を疑っていなかったなって、今思った。

 聖女が召喚されたのはギベオン王国だし、逃げる時もエンジュ共和国にいる時も聖女が召喚されたという話は街の噂には一回も上がってこなかった。

 国だし、情報網も凄いんだろうけれど、それにしても確信があるような動きに見えた。


 「確信しておるよ。なんせ聖女召喚を促したのはこの帝国なのだからの。」


 帝国が、聖女召喚を促した?


 「もともと、聖女召喚はデュモルツ帝国に伝わる秘伝の法。それをわざとギベオン王国に潜ませ、馬鹿な王に使わせた。だいぶこの国の手の者が入り込んでいるのだのぉ。聖女召喚は大量の魔力を使わせる。さらに、その聖女が生きている限り、召喚に使った魔力は戻って来ん。」


 召喚された時の事を思い出す。


 たくさんの人が王子を褒めていたな……。その人たちが召喚をした魔法使いさん達なのだろう。

 あの人たちの魔力はずっと減ったまま……今も戻っていないとしたら、魔法使いとしては致命的なんじゃないかな?


 あの時の魔法使いさん達が職を失っていないか、ちょっと心配になった。


 「国が抱える魔法使いの魔力を減らせる……国力を弱める目的もあったのだのぉ。そして召喚された聖女は我が国の元へ。これで国攻めの準備が整う。」

 「国攻めって……戦争を起こそうとしていたんですか。」

 「うむ。皇帝も、その子供達も同じような考えでおったよ。」


 そう言ったユランさんは、止めることが出来なくて申し訳ない。とまた頭を下げてきた。


 ユランさんはこの状態で何も出来ないのに。この国の誰よりも真面目で良識がありそうだ。


 ユランさんが次の皇帝になれれば良いのに……。なんて、まだ会って一日なのに、そんな事を考えてしまった。


 それだけここの国の人やばいからね!

聖女召喚には帝国が関わっていたっていうお話でした。真面目な話つらい……。ふざけたい……。

でも次もちょっとだけ真面目な話の予定です。

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