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58 ワレブジ。イマ、テイコクナリ。って電報みたいなメッセージになってる!

誤字報告ありがとうございます!

とっても助かります!

 タタタタタタ、タタタタタ……。


 「……これでよしっと。」

 「聖女さんじゃなかったかぁ……。」

 「そうですよ!完全に勘違いの被害者ですよ!」

 「申し訳ない……。」


 異世界から来たっていうのは間違っていないんだけれどもね……。


 クレスさんとアールさんに、私が無事なこと、聖女に間違えられて帝国に連れて行かれた事を伝えた。

 ……結婚の辺りは言わなかった。なんか小っ恥ずかしくて言えない……。


 アールさんからは返事が来たのだけれど、クレスさんからは返事がない。既読システムとか無いから、見てくれたのかわからないな……。でも、折りコン渡しておいて良かった。無かったら、どこにいるか無事でいるかどうかも伝えられないものね。


 とにかく、連絡はしたから後はこの状況を打破しないとね!



 「自分で起きる事ができれば良いんですが……。」

 「魔法の効力を無くせるものがあれば良いのだがのぅ……。聖女さんならもしやと思ったのだが……。」

 「そんなすごい技は無いですねぇ。」


 コンビニを経営するスキルに魔法を打ち破って起床できる技などあるわけないじゃ無いですかー!


 うーん。


 「とりあえず……起きる事が出来ないなら、起こされる事も拒否しておきますかね。」


 自分に酔ってそうな人の口付けで起きるとか嫌だし!っていうか愛のないキスとか嫌だし!ファーストキス!初接吻!なんだぞーー!


 というわけで、私の唇は自分で守る!


 「スキル『コンビニ経営』。ベッドの周りを店舗に設定する!」


 寝ている私の横に置いてあるショルダーバッグからチャリン!と音が聞こえた。


 詳細設定を開く。

 今回大事な設定はこれ。BL設定だ。


 ブラックリストーー!

 魔物のように敵意があれば当然のように弾いてくれるんだけれど、今回は敵意ってものでも無いからね。こっちから入店拒否しておかないと!


 「とりあえず、入れないようにしておけば良いかな?この国の人間全員っと。」


 開店しているのに入店拒否とはこれいかに……な状態だね。お店としてはダメダメな営業だわぁ。


 一時的なものとは言え、自分のお店を自分で批判していると、考えるポーズをしていたユランさんが尋ねてきた。


 「これだけの結界。魔力の消費が激しいものになるのかの?」

 「魔力は使っていないです。……お金を消費しています。そういうスキルなんです。」

 「なんと……。」


 お金で結界を張るスキルなんて、そうそうないだろう。目を見開き驚きをあらわにするユランさん。


 「お金が無いとダメなんで、この結界もどきも何日保つかわからないですけれど。」

 「ふむ……。それなら良い場所があるよ。」


 心配な部分を打ち明けると、ユランさんは少し考えてからポンっと手を打つ。柔かに笑うと手招きして壁をすり抜けていった。


 おぉぅ……。これが霊体化……。


 しばらく放心していると、壁から顔だけ出して早く早く!と言ってまた消えていく……。


 壁抜け!私にも出来るんだー!ちょっとワクワクしてきたぞー!


 私はユランさんが消えていった壁を触る。うん。霊体化していても触る事が出来るんだね。

 その触っている壁を今度はすり抜けたい!と思いながら腕を押し込むように力を入れてみた。


 おぉぉぉーー!


 腕が肘くらいまで壁に埋まっている。なんだろう、新感覚!


 腕を入れたり出したりして確認する。壁を通過する!とかあまり意識しなくても、普通に道を通る、くらいの感覚で良いみたい。

 そうだよね。霊体化している人にとって壁なんて無意味。壁や天井は、肉体のある人にとっての障害物なんだものね。


 新感覚に感動していると、もう一度ユランさんが顔だけ出してきた。


 「まだかのぅ?」

 「あ、今行きますー!」


 だいぶ待たせてしまったみたい。すみません……。



 壁を抜けたり、上からメイドさん達を見下ろしたり、床を潜って下の階に行ったり……。

 だんだん楽しくなってきたところで目的地に着いたみたいだった。


 「ここだの。」

 「随分としっかりした造りのドアですね。」

 「宝物庫だからのぅ。」

 「へぇー宝物庫……宝物庫?」


 そんな場所に来て良いのだろうか?あまり知られるといけない場所なのだと思うけれど……。

 ……まぁ道中が楽しすぎて、道順は覚えていないんだけれどね!


 「良いのだよ。さぁ中へ。」


 分厚いドアもなんのその。するりと中に入っていくユランさん。私も後に続いた。


 「おぉーーー!すごい!きんぴかー!宝物庫って感じーー!」

 「感想が軽いのぉ。」


 壁には何かしらの飾りが所狭しと掛けられ、きんぴかと光っている。

 棚という棚にはこれまたきんぴかの物が並んでいる。金で作った物ばかりで、チカチカと目に眩しい。

 宝石も箱の中に綺麗に収まっていて、ショーケースのようなガラスの中に入れられている。


 一番奥には、お金が山のように積み上がっていた。

 その景色はまさに……。


 「ザ・宝の山ー!」


 わー!と両手を上げてこの光景を目に焼き付けていると、ユランさんが悪い笑顔をしてこちらを向いた。


 「さぁ、ここのお金を存分に使ってくれ。」

 「ふぇ?」

 「あの結界の費用になるかのぉ?」


 いやいや……。バーリアーにはこんなに大金使わないよ?


 「迷惑料だと思って気にせず使って欲しい。むしろ使いまくっていいぞぉ!」

 「えええ……。」


 良いのかなぁ?なんだかユランさんの顔が悪どくなってるし……。


 うーん。でも、自分の唇を守る為!背に腹は変えられないよね。ここは使わせてもらいましょう!


 「じゃぁ、いただきます!」

 「うむうむ。」


 大金に触れると、ユランさんの先程の言葉もあってか、私の物認定を受けたみたい。チャリンっと音を鳴らして、触っている部分のお金の山が少し削れた。ショルダーバッグのお財布よりもこっちを優先的に使ってくれるのかな?


 「これで何日もつかのぅ。」

 「季節変わるくらいまでは大丈夫そうですねぇ。」


 これで私の唇はしばらく守られる!しばらくというか、だいぶ守られる!国のお金を使っていると思われるんだけれど……まぁ……ヨシ!


 「身の安全は守られるから、事態が動くまでのんびりしようかのぅ。」

 「そうですね、こちらからは何とも動けないですし、しばらく待ちですね。あ、クレスさん達に連絡しておかないと!」

 「……クレス?」

 「はい。とてもよくして頂いている冒険者さんなんです。さっきは帝国にいるという事だけしか伝えていないので、身の安全を確保できたって伝えないと!」

 「そうか、そうか……。」


 ニコニコと笑うユランさんと一緒に出口に向かう。

 ドアの横、入ったときには目に入らなかった一角に、テーブルとイスのセットが置いてあるのが目に入った。

 テーブルのセットはこの宝物庫にはあまり似合わない、普通の物だった。普通の物と言っても、彫刻が細かくされていて、お高そうなのはわかるんだけれど、きんぴかではない。


 「あ。」


 ちょうどそこに人が入ってきた。


 謁見の間っぽい場所で唯一イスに座っていた、偉そうなおじさんだ。護衛っぽい人とメイドを数人連れている。


 ちょうど見ていたイスに座ると、メイドさんにお茶を注がせていた。


 「ふぅ。ここの景色はやはりどんな絶景よりも美しい……。」


 独り言呟いてる……。落ち着くのかな?こんなきんぴかの中が落ち着くってお目々大丈夫かな?キンキラ耐性が高いとかかな?

 という冗談は置いておいて、このおじさん。お金を見ながらお茶を飲むのが好きみたい……。


 「すごい趣味ですね……。」

 「よく来ているみたいだのぉ。今の皇帝は金品が特に大好きだからのぅ……。」


 私とユランさんはお茶を楽しむおじさんとテーブルの間を突っ切って宝物庫を後にした。

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