閑話 もう一つのお話 2
マディラ視点のお話です。
前回更新から時間が経ってしまい申し訳ありません。
誤字報告ありがとうございます!
久しぶりに、イライラした。
依頼内容は簡単なものだった。僕にとっては羽根つきモモキングなど、一人でも倒せると一目見た瞬間分かった。
イライラした原因は一緒に動いた獣人姉妹。
僕があと数手でトドメを刺せるという場面になると、邪魔をしてくる。
謝りながらも、反省をしている様子はなく、だ。腹立たしく思うのも当然だろう。
結局、トドメをさせたのは随分時間が経った後だった。
悪気なく邪魔をしてしまうほど、あの姉妹は弱くはなかった。どう考えてもわざとだ。更に、村を襲っている魔物が弱いとは言え、何か問題が起こるかもしれない。だから遊んでなどいないで、すぐに処理して村に戻るのが普通だ。彼女たちがそれを理解してないはずがない。……なんだか腑に落ちないな……。
邪魔しまくった事をアイちゃんにコッテリ怒って貰おう。そう思う事で怒りを落ち着けて村に戻ると、チカちゃんの顔色がとんでもなく良くない。何があったのか分からなかったが、自分の怒りよりもそっちを優先させた。
アイちゃんといつも変な服を着ている商人を呼んできた。聞かれたくない話だろうと、三人から離れた位置で人が近付かないように見張っておいた。僕、やれば出来る子だからね。
チカちゃんの顔色が良くなって来た時には、村はお祭り騒ぎになって、怒ってもらうどころではなくなっていった。
次の日の朝、改めてこってり怒ってもらおうと姉妹を探しに外へ出ると、もう出発した後だった。
……逃げたな。
いつか会ったら覚えてろよーー!
はぁ。
いないのならば仕方ない。切り替えますかー……。
せっかくグランディディ王国に来たんだし、会いに行きますかねー。
無表情で無愛想な多分強くて無駄に隙がなく……。でも、一瞬覗かせる、素の表情がやけに可愛いメイドさんに。
チカちゃんに帰るときは手紙を送って、と伝えて村を出る。
アイリーに乗って、グランディディ王国の首都にある冒険者ギルドに向かった。
冒険者は今どこにいるのか、最寄の冒険者ギルドに逐一報告しなくてはならない。ちょっと面倒だけれど、行方不明などになった時や手紙を預かっておいてもらう為にも、ちゃんと報告しておかないとね。
屋敷に来ると、目の合ったメイドさんがちょっと顔を赤くして、頷くとそそくさと立ち去っていった。なんだろう?
待っていると、さっきのメイドさんがギベオン王国一の魔道具師を連れて来てくれた。
「やっほー!」
「本当に、また来たのかい……。」
ちょっと呆れ顔な魔道具師マリアさん。黒に近い紫の髪は、今日も首の後ろで縛っている。今日は薄い水色のシャツに緩めた紺色のネクタイ。緩めたネクタイから除く鎖骨が色気を出しているように見える。本当に、どうやったらそんな変装が出来るんだろうね。
彼、に見えるけれど、彼女はマリーさん。ギベオン王国の第一王子、リゲル様のメイドさん。
「ちょっと手が空いたからねー。」
「そうかね。私は今日はこれからミレイ殿に会うのでね。あまり君を構えないんだよ。残念だ。あぁ残念だなぁ。でも私にとって魔道具が一番大事なのでね!申し訳ないね!」
残念そうに身振り手振りしているが、顔がとても嬉しそうだ。表情は僕にしか見えないように角度を調整しているようで、メイドさんも残念そうな顔をしている。……なぜメイドさんが残念そうなんだろう。
「そっかー。じゃぁゆっくりお話出来るのは明日かなー。」
「な……明日も来るのかね?」
「うん。メイドさん、マリアさんの明日の空いている時間を教えてくれるー?」
「はいっ!」
嬉々とした表情でマリアさんの明日の予定を細かく教えてくれるメイドさん。なぜかはわからないけれど、とても協力的でありがたい。
「ふんふん。そっかーありがとー!じゃ、ゆっくり話すのは明日にして……。」
早めに言っておきたい事があったので、ちょっとマリアさんを拝借させてもらおう。
マリアさんの腰に手を当てて引き寄せて、メイドさんに聞こえないように、耳もとで囁く。
「確定じゃないけれど、帝国が動くかもしれない。いつも以上に聖女は外に出さない方がいいと思う。」
「……。」
あれ?反応がない?
顔を離してマリアさんを見ると、彼……いや、彼女の顔が若干赤くなっていた。
……照れてる?……かっわいいなぁー!
「わ……私はこれで失礼するよ……。」
「また明日ねー。」
返事もできない感じで、よろよろと去っていくマリアさん。見送っていると、メイドさんがつつつっと寄って来た。
「あ、あの!」
「ん?」
「私は、男性同士の恋愛にも賛成派です!が、頑張ってください!」
それだけ言うと、キャー!っと小さく叫びながら去っていくメイドさん。
……男性同士の恋愛……ね。この屋敷、面白い感じになってるなー!
そのあと屋敷を歩いて回っていると、顔を赤くするメイドさんと、そっぽを向くメイドさんとに反応が分かれた。わかりやすいなぁ。半数近くが僕とマリアさんを応援してくれているらしい。
男性同士では無いんだけれど……応援してくれるのはありがたいかなー。マリーさん、意外と押しに弱そうだし、グイグイ押していってみようっと!
次の日、落ち着いて二人で話をする為に屋敷に行くと、腕を組んだ女性が入り口で仁王立ちしていた。
久しぶりに見た気がする。聖女……ミレイちゃん、だっけ?
「聞いたわよ!あんた、同性愛者なんですってね!思いっきりこの国に広めてやるわ!」
「……随分と性格があらわになったねー。そっちが素なんだろうね。僕は広めても一向に構わないんだけれど……。」
少しいじわるをしてあげよう。
彼女の反応出来ない速さで近づき、人差し指を額に向けてギリギリ触れない位置で止める。何故か額に指を近づけるとムズムズするんだよね。
「彼に迷惑をかけるのは良く無いと思うよ?色々と作ってもらっているんでしょー?」
「ぐ……。」
反応出来なかった事が悔しいのか、腕をプルプルさせながら少し後ろに下がる聖女ちゃん。
「何よ!私の邪魔したくせに!」
「アイちゃんとの事?僕は何もしてないじゃないかー。」
「その呼び方が紛らわしかったのよ!せっかくのイケメンだったのにー!」
イケメンってなんだろう?アイちゃんの事を指しているのだろうから、きっと普通だったらいい意味なんだろうなー。今度チカちゃんに聞いてみようっと。
「ミレイ殿。何をしているのかな?」
「……マリア。なんでもないわよ!」
マリアさんが声をかけると、走って上の階へと行ってしまった。嵐のような子だなー。
「君は本当にまた来たのか……。」
「当然でしょー。さ、二人でお話しようー!」
客室を借りて、二人で入る。メイドさんはお茶を持って来てくれると、さっさと出ていった。昨日応援していると言ってくれたメイドさんだった。
男同士という事でドアを閉めてもいいのだけれど、一応本当は女性だからね、ドアは少し開けた状態で話すことにした。
「昨日の話、覚えてる?」
「もちろんだ。主人も懸念されていた。あそこは珍しいものを集めるのが好きだからね。聖女が召喚されたという話が行っていれば、狙いもするだろう。」
「はっきりとは言えないけれど、多分動くよ。君がいれば安心だろうけれど、一応ね。」
「そうだね。忠告感謝するよ。そっちの女性も珍しいといえば珍しいだろう。気をつけた方が良い。」
「うん。アイちゃんがいるから、大丈夫だとは思うよ。彼女の情報が出ているとも思えないし。でも、僕も戻ったら気を付けておくよ。」
真面目な話はこの辺で終わりにして……。
「ま、その話は口実で、本来の目的は君なんだけどねー。」
「……。」
ちょっと困った顔で固まるマリーさん。こういう時にマリアじゃなくてマリーさんになっちゃうところが本当に可愛い。
「……ドアちゃんと閉めて、昨日の続きする?」
「勘弁してくれ!」
聖女ちゃん、本性をあらわす。




