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33 スーパーとかで試食を渡されると、買わざるをえない気持ちになるんですよねぇ……。

誤字報告ありがとうございます!

気を付けていても間違えちゃうんですよね……。

とっても助かります!


 「おはようございます!ギルドに許可を得まして、こちらで数日お弁当の販売を行っております!今日は皆さまにお弁当の味を知ってもらうために、試食をお配りしております!どうぞ持って行って食べてみてくださいー!」


 味を知ってもらうために手っ取り早いと言ったら、試食だよね!


 タダでもらえるならやっぱり貰っちゃうし、貰っちゃったら何か買わないとダメかなって心境にさせられる……よく出来た仕組みだよね……。私も何度その罠にかかったか……。



 と、言うわけでこの世界の人にもその罠にかかってもらいましょう!私と同じ苦しみを受けるがいい!!ふははははーー!



 「タダでいいのかー!すげーなー!ありがとよー!」

 「え?何なに!?タダなの!ラッキー!」

 「俺も!俺もくれ!タダなんだろー!?」

 「うおおお!タダだああぁぁーーー!」



 ……。


 あれか……国民性ってやつなのか……。

 みんな意気揚々と受け取って颯爽と去って行く……。


 私と同じ苦しみを受ける者が皆無なんだけどーーーーー!?




 「大丈夫アルか?みんな試食持って去ってしまたアルヨ。」

 「……大丈夫です。コッメの美味しさに気付いて、最終的に買ってくれるはずですから……。」

 「最初からそういう作戦だったアルか?」

 「……ええ、そうですよ?」

 「……疑問系になってるアルね……。」


 まぁ、何とかなるでしょう!心情に訴えかけられなくても、美味しさで勝負すればいい話だもんね!

 コッメのおむすびの中身はお肉にした。砂糖と醤油に少し生姜を入れて甘辛味だ。絶対美味しい。だから明日は必ず売れる!


 試食という事で少し小さめにしたから、明日は大きいサイズで販売しよう。


 「やっほー!チカちゃんー。」

 「この語尾を伸ばしまくる声の主は……誰だったっけ?」

 「一昨日会ったばかりなのに、もう忘れられているー!」


 マディラさんがいつものように後ろから声をかけてきた。マディラさんって、絶対私の背後から来るんだよねぇ……。


 「こんにちはーマディラさん。マディラさんもおひとつ持って行って下さい。」

 「ん?これが、チカちゃんの作戦なのかなー?じゃぁ遠慮なく頂くねー。」


 マディラさんも何の躊躇もなくもらってくれた。なるほど……。そういう国民性なのでしょう!

 そのままマディラさんは少し様子を見て行く事にしたようだ。


 計画としては、明日もおむすびは配布する。そして味を知ってもらってから、販売へと移行するんだ!

 明日のおむすびの中身は……唐辛子を刻んで醤油で辛めに味付けした葉物野菜にしようかなー?それともやっぱり、お肉系かなー?いっぱい動くだろうし、やっぱりお肉の方が良いのかなー?


 中身について悩んでいると、元気な呼び声が聞こえてきた。


 「チカ!」

 「ジェット君!久しぶりだねぇ。元気だった?怪我とかしてない?」

 「うん!大丈夫!チカは危ない事はしてなさそうだけれど……何してるの?」


 ジェット君は、私が学校で算数を教えた子供の一人で、黒い毛並みの柴犬の獣人さんだ。学校を卒業して、冒険者になった。

 黒い毛並みは整って少し艶があり、健康そうなのが伝わってくる。ちょっと首を傾げた姿が……カワ尊い……!


 「あ、そうそう。ジェット君も今日のお仕事にお弁当として持って行って。おむすびっていうご飯だよー。」

 「えっ!……チカの手作りなんですか?」

 「うん。そうだよ。」


 答えた瞬間、ギルドから音が消えた……気がする。何で?どうして?誰も何も言わないんだけど?何かあった?


 「手作り……女の手作り……。」

 「モテない歴年齢の俺にも……春が……?」

 「バッカ、これは量産品だろう?そんなわけ……あったら良いのに……。」


 端っこの方でブツブツと呪文のように、手作り……手作り……と聞こえてきた。

 ……普通にお店で売られているパンだって、お店の人の手作りなのに。そんなに反応する!?


 「これは……怒るなーきっと。それはそれで面白そうだけれどー。」


 そして、マディラさんがポツリと一言。

 え、何で怒るの?何が、誰が?


 マディラさんの言っていることに理解が追いつかないでいると、最初に質問してきたジェット君も復活してきた。


 「そうなんだ。チカの手作りなんだ……。」

 「うん。数日ここでお弁当販売するから、美味しかったら買ってね。」

 「うん。チカ頑張ってね!」

 「ありがとう。ジェット君も気をつけて行ってらっしゃい!」


 手を振って、ジェット君を送り出す。周りの冒険者の人達がまた何かを言っているのが聞こえた。


 「……数日販売するだと……?」

 「チャンス……なのか?」

 「俺、数日は日帰りの依頼しか受けないぞ……。行ってらっしゃいって言われるんだ……。」


 チャンス?おむすびチャンス?来るのかな?みんな買ってくれるといいなー!そしてコッメの魅力に気づくが良いよ!


 「売れる予感がします……!」

 「人が付いてくれるなら、なんでも良いアル!」

 「…… 大丈夫かなー。」


 一人だけ不安げな感想だったけれど、気にしない!コッメを守る為に最大限のお手伝いをするんですからね!




 次の日。


 アールさんは自分のお店の方の片付けがあるらしく、私一人での販売だ。あのお店、片付けしてたんだなぁ……。片付いているようには見えないんだけれど。


 「ギルドに許可を頂きまして、お弁当の販売を行っておりますー!お仕事のお供にどうぞ持って行って下さいー!小さい方はお試しで、大きい方は販売しておりますー!」


 今日も試食だけにするつもりだったけれど、大きい方もやっぱり需要あるかと思って作って来た。

 結局、中の具はお肉にした。昨日は甘辛だったから、今日は塩胡椒でシンプルだ。


 「うおおおお!俺は買うぞ!俺は買うぞおおおお!」

 「俺も買う!手作りのお弁当買うぞーーー!」

 「わー。ありがとうございます!はいどうぞ!行ってらっしゃいませー。」

 「「……。うおおおぉぉぉぉーーーーー!!」」


 何故か男性にめっちゃ売れている。そして手渡しすると、とても喜んで走り去ってしまった。テンション高いなー……。


 「あたしはお試しの方頂戴。」

 「はい!ぜひ食べてみてください。パンとは違う食感ですが、腹持ちは良いですよ!」

 「へぇーそうなのね。」


 女性の冒険者さんは冷静に話を聞いてくれる人が多かった。


 しばらく販売と説明にあくせくしていると、クレスさんが近くにやってきた。


 「あ、クレス。おはようございます!これからお仕事ですか?」

 「おはよう、チカ。ああ、何か軽いものを受けようと思っていたんだが……。」

 「?」


 クレスさんは、私の周りにいたお弁当を買いに来ていた男性陣を見回して、そして私の方をもう一度見た。


 「忙しそうだな、チカ。何か手伝う事はあるか?」

 「え!良いんですか?」

 「ああ。一人で販売に説明にと、大変だろう。」

 「わぁ、ありがとうございます!」


 それから、私がおむすびを渡そうとすると……。


 「手作り!手作りお弁当!」

 「はい、どうz……。」

 「俺がやろう。……さぁ……どうぞ。」

 「ひ、ひぃーー!」


 私からクレスさんが受け取って、それをお客様に渡す。という流れになっていった。

 私は用意しておいたおむすびをクレスさんに渡して、質問のある方にはお答えする。という楽な状態になった。


 

 ただ、若干ギルド内の温度が下がったような気がするのは……私だけかなぁ? 


クレスがおにぎりを渡す時の顔は……ご想像におまかせします!

ちなみに、チカは見れませんでした。

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