閑話 夢は児童小説家だった時もあるんですよ!
千華視点の閑話です。
時間は少し遡って、新しい街建設のお手伝いを始める前の話です。本編とは一切関係ないどうでも良いお話です。
若干、ホラー要素が入りますので、苦手な方はすみません。
今日も無事に授業が終わって、お昼ご飯の後は自由勉強の時間だ。
いわゆる自習なんだけれど……子供達はいつも自由に遊んでいる。
子供は元気に遊ぶのも仕事の一つだと思っているから、大賛成なんだけれど、今日は生憎の雨。
黒い毛並みのうさぎの獣人、セイン君はとてもつまらなそうな顔で窓枠に腕を置き、はぁ……とため息をこぼした。
「雨の中でも良いから外出たいー。」
「だめだよーセイン君。風邪引いたら大変だからね。」
「ちぇー!」
学校にいる時に風邪を引かれたりなんかしたら大変だ。私は指でバツを作り、ダメだと言った。
「ねぇ、チカー。何か面白いお話してー?」
「おはなしおはなしー。お話のお供にはキャンディだよねぇ……。」
「んー。キャンディは無いけれど、お話しようか!」
「わーい!」
つぶらな瞳で見つめる、鹿の獣人の女の子、サーシェちゃんにお願いされて、私はお話をする事にした。
キャンディ大好き羊の獣人、タルク君もキャンディは無いけれど聞く姿勢になってくれた。
つまらなそうにしていたセイン君も近くに来てくれたので、暇つぶしに聞いてくれるのかな?
みんなににっこりと笑みを向けて、さて何を話そうかなー。
中学生の頃、そう、私にも厨二病というものが来た時があるんですよ……。その頃の私は、児童小説を読んだり、ファンタジーな小説を読んだり、ファンタジーな世界観のゲームをしたり……。どっぷりファンタジーに憧れて、妄想が止まらないくらいにはファンタジーな子だったのだ。
……周りには分からないように隠していたから、隠れ厨二病とでも言うのかな?グッズとかは恥ずかしくて買えなかったし、友達に話すことも出来なかったんだよねぇ。
今まさに、ファンタジーな世界にいるんだと思うんだけれど……実際に自分がその世界に入ってしまうとあまりファンタジーを味わえないっていうか……。見るのと体感するのって違うんだなぁと思った。
まぁ、子供の頃の私はそんなだったので、自分で考えた物語もいくつかあった。
今回はその中でも、面白いものを選択する。
「昔むかし、ある国の学校には、古い物をしまっておく備品室というものがありました。」
「びひんしつー?倉庫みたいな?」
「うん。学校で使う物で、毎日は使わない物をしまっておく場所だね。大きな分度器とか、大きな三角定規とか。その国の学校の備品室には、ずーっと昔からあって、そのまま仕舞われている物がたーくさんありました。」
「ふんふん。」
「その備品室に、ずーっと昔に使われていた人体模型のモッ君がいました。人体模型のモッ君は、子供たちに体の仕組みを教えるために使われていた人形です。体の半分には皮膚が無く、内臓が見えるように作られた人形で、中の内臓は実際に取り外しが出来て、どこに何があるのかわかるように出来ています。」
「「「……。」」」
「ある日、備品室を片付けるようにお願いされた用務員さんは、片付けの途中でもっ君を見つけました。そのモッ君は内臓を床にぶちまけ」
「「ぎゃああーーーーーー!!」」
最後まで言い切る前に、サーシェちゃんとセイン君は走って逃げた。他の先生にしがみついて……泣いている?
あれ?
「チカーーー!怖い話なんて卑怯だぞーーーー!!」
「うわーーーーーん!面白い話って言ったじゃないーー!!」
「ここから面白くなる所だったんだけれど……。」
「「うそだーー!!!!」」
サーシェちゃんとセイン君は声を揃えて叫んでいた。
人体模型のもっ君は、使われすぎて内臓達が摩耗してしまい、少しの衝撃で内臓が落ちてしまうようになったっていう設定だったんだけれど……っていうか、ここ笑う所なんだけど……。
「そんなに怖かったかなぁ?……タルク君?」
「……。」
微動だにしなかったタルク君を見てみると、目を開けたまま気絶していた。
更に、サーシェちゃんとセイン君がしがみつく先生にめっちゃドン引かれた……。
……あれぇ?
「……近くを歩いていたら、悲鳴が聞こえたんだが……。」
「クレスさん!」
「冒険者の兄ちゃん!聞いてよ!チカがー!」
「な、なんだ?どうしたんだ?」
ちょうど近くを歩いていたらしいクレスさんが、悲鳴を聞きつけて学校に寄ってくれたらしい。子供達は先生よりも安心だ、とクレスさんにしがみついて悲鳴の訳を話した。
最初は苦笑気味に聞いていたクレスさんは、内臓を床にぶちまけ……の所で涙目になる子供たちに同情の目を向けて、そしてこちらを見た。
「チカ……。」
「ここから面白くなる所だったんですよ。……本当ですって。」
クレスさんにまでドン引かれてしまった……。
この話考えた時は想像して自分で爆笑だったんだけれど……私、子供向けのお話考える才能無いのかなぁ。いや、今回はチョイスが良くなかったんだろう……うん。次は……あの話にしてみよう!そうしよう!
「次はもっと面白い話にするからね!」
「「絶対聞かないから!!!」」
ちなみに、タルク君は帰る時間まで気絶していた。ごめんね……。
実際にこの人体模型の話を考えた時は自分でめっちゃ笑いながら考えてました。友達に話したら、本気でドン引かれました。学校の七不思議的な話にする予定だったんです。
千華は笑いのセンスが人と違う子なのでしょう。……私は普通です。ええ。




