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27 追いかけっこで一番足の遅かった私は、よくバリア!って言って逃げていました。今思うと反則技っぽいですよねぇ。

前話の後書きで書いていた事ですが、閑話との時間の流れがおかしかったので、修正しました。ただ、お話には何の影響もでていません。ほんの少し文章が変わっただけです。


 「……っ!!はっ!!!」

 「ああ!気が付いたかい?チカちゃん!」


 大工の奥さんが体を起こすのを手伝ってくれた。

 ここは……みんなが避難している家。……あ、そうか。私、気絶したのか……。



 スキルの警備設定で、バーリアー!的な物を張ってから一日。夜行性の魔物は少なかったけれど、朝になったらどんどん増えていった。大工さんや少ない冒険者さんの体力が減っていき、魔物の囲いが狭まりつつあった。

 だから私は、残っている魔道具のうちの一つを使ったんだった。


 これで、魔道具は残り一つ……。


 ゆっくり起き上がって、家の中から周りを見回してみると、家の周りは……。


 「焦土……。」

 「すげぇ威力だったぞー。お前さんも気絶しちまうし、びっくりしたよ。」

 「すみません。二度目だったから大丈夫かと思ったんですが、やっぱり気絶しちゃったみたいですね。」


 振り返ると、チーターの獣人の大工さんが肩をすくめていた。

 今更ながら、後頭部を撫でてみた。たんこぶ出来てないかな……あ、ちょっと膨らんでた!撫でたら痛い……。


 「……すまんなー。あんな大きな音が出るとは思わなくてな……。全員お前さんと一緒に気絶しちまってな……。」

 「あー。そうですよねぇ。皆さん耳が良いから……。ものすごい衝撃でしたよね……。」

 「でもまぁ、そのおかげで、周辺の魔物は綺麗さっぱりいなくなった。しばらくぶりに、ゆっくりと休めたよ。」


 言われてもう一度家の周辺を見る。目に見える範囲は焦土と化し、生き物は見られない。


 「今なら首都に向けて逃げられるんじゃないかって思ったんだけどよ、早めに起きた奴数人で見に行ってみたら、まだまだいてな。やっぱり応援が来るまでは移動は出来そうになかった。」

 「そうですか……。」


 魔物が見えないのはこの周辺だけ。たぶん、魔道具の威力を見て警戒して近づかないんだろう。おかげで態勢を少し整えられたかな。

 ダンジョンを発見して二日経った。きっと首都に向かった第一陣の人たちも着いているはずだから、後少し……のはず!



 みんなゆっくりと休めたからか、顔色も少し良くなっていた。

 私が移動するたびに、誰かしらが、助かったよ!ありがとう!と、声をかけてくれる。むしろ、助けてもらっているのは私の方なんだけどなぁ。私、魔物と戦えないし……。


 その日は夜になるまで魔物はほとんど近づかず、この異常事態の中で、ほんの少しだけのんびりできた。



 「もう、ちらほら見える位置に……。」

 「美味しいご馳走が一箇所に集まっているんだ。そう簡単に諦めねぇよなぁ……。」


 魔物は、夜には見える位置まで近づいて来ていた。襲いかかる雰囲気はなさそうだけれど、見える位置にいる、と言うだけでプレッシャーになる。それが、私たちを徐々に追い詰めていく……。




 ……さらに二日経った。


 まだ救援は来ない。魔物は、魔道具を使った次の日の朝にはジワジワと近づいてきていた。大工さんや冒険者さんが対応しているけれど、また近づきすぎたら魔道具を使う事になるだろうな……。



 「わしゃーお腹が空いたんじゃーー!」

 「おじいちゃん!さっきおやつ食べたでしょう!?」

 「あれっぽっちじゃぁ……足らんのじゃぁああああーー!」


 食料の問題も出てきた。ダンジョンが見つかってから四日。外に食料調達をしに行く訳にもいかず、魔物の肉は手に入れたくても、倒したそばから周りの魔物が持って行ってしまう。……魔道具を使った時はみーんな消し炭だったからなぁ。


 「……食料は持って……あと二日か……。」

 「…………」


 誰もがその言葉に反論出来ない。食料が尽きたら……空腹とも戦う事になるのかな。



 あげられるご飯が無いせいで、スライム君に頬を突かれる。仕方ないじゃなーい。スライム君、私は知っているんだぞー!スライムは、草食べるだけでも生きていけるんだって。草ならその辺にいっぱい生えているじゃなーい。い、いてっ!痛いってスライム君!頬っぺたはそれ以上伸びないんだよー!


 「むー。早く助け、来ないかなー。」


 なーんて、呑気な事を言っている余裕も無くなってきた。



 食料の確保をしようと、倒した魔物を魔物と取り合う。その行動で怪我をする人が増えてきた。魔物の肉と引き換えに怪我をして、怪我を治すための体力ポーションが消費される。


 食料は底を尽きかけ、ポーションの数も減ってきた……。元気な人が少なくなり、不安が伝播する……。

 魔物はそんな状況をわかっているのかいないのか、また段々と囲いを狭めてきていた。


 このままだと、警備設定で張った結界を攻撃されてしまう。最後の一つを使う時かな……。出し惜しみして間に合いませんでした、なんて冗談にならないからね。


 「もう一度、魔道具を使います。衝撃が来ると思うので、皆さん備えてくださいね!」

 「……そうだな。今が使い時だろう。頼む。」

 「はい。」


 今度はみんな、しっかり対策しているし、気絶者は減るだろう。私は耐えられるかなー。




 はい!耐えられませんでしたー!


 バッチリしっかり気絶して、目が覚めたらダンジョンを発見して五日目の夜だった。

 外を見ると、前より地面が少し抉れているように見える。魔道具の威力は相変わらずみたいだ。魔物は……。


 「だめだ。もう近づいてきてる……。」


 魔物は魔道具など関係ないとばかりに、家を囲っている。これではもう数の暴力だ。チーターの獣人の大工さんが私に気が付いた。


 「目が覚めたか……。」

 「はい。……あまり効果が無かったのですかね?」

 「近くにいた魔物どもは一掃だったぜ。恐らく、ダンジョンから溢れている数が尋常じゃないのだろう。……すぐにまた現れやがった。」

 「……そうですか。」

 「結界は、無理だと思ったら消して構わんからな。何を使って張っているのか知らないが、無理はするなよ。」

 「はい。ありがとうございます。」


 お金です!とは言えないよねー。

 私のお財布から、細々とお金は消えていっている。あとどのくらい残っているのかと……見たら悲しくなった。私のお金ぇ……。今までの節約!貯金!の生活の結晶がぁーー!


 魔道具も使い切った。食料も後少し……結界で消費してお金は雀の涙……。ああー早く助け来てーー!




 夜中、みんなが交代で家の周りを守り、私は怪我人の手当てなど、お手伝いをしていた。みんなただひたすらに、早く助けが来る事を願いながら……。


 「っ!?」

 「どうした!?」


 胸が痛い……?一瞬の事だったけれど、その余韻のようなものが残っている。今のは……?


 「いえ……なんでもっ!?うぅ!」

 「おい!なんだ!?」


 私が聞きたいよ!何が起こっているの?この痛みは……なに?まるで、何かに殴られたような……?


 「何か変なら、とりあえずステータス確認してみろ!」


 あぁ、そういえばそんな確認方法があったね。ステータスなんて、久々に見るなぁ……。


 「ス、ステータス……。」



  広瀬 千華   24歳   【冒険者 G】

           レベル32

 HP 2500/2688

 MP 640

 力 29

 体力 84

 知能 46

 精神 20

 敏捷 19


  スキル

 【料理 3】







 【コンビニ経営】



 「あれ、HPが……減ってる?」

 「魔物の攻撃を受けたわけでも無いのにか?」

 「攻撃……!もしかして……。」


 ショルダーバッグの中からお財布を取り出す。その布袋は……軽かった。振ると、何の重みもない事を表すかのように、ぷらぷらとゆっくり揺れた。


 お、お金がない……!


 「うぐっ!」


 また痛みがきた。さらにHPが減る。こういう時って勘が働くんだよね……。

 私は外に出てみた。


 傷だらけの獣人の大工さんが、攻撃されそうになったところを結界に逃げて何とかやり過ごす。その魔物の攻撃が、結界に当たる。


 「っ!」


 胸に痛みが走る……。そういうことか……。


 痛みの原因がわかって、今一番言いたい事。


 「……なんであんなに分厚い説明書に、こーんな大事な事が書かれていないんですかねぇ!」

千華さんは、魔道具のおかげでまたレベルアップしました。筋トレとかしていないから、そこまでステータスへの影響は出ていないです。勤勉だから、知能は少し上がったかなー。

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