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閑話 イケメンチャラ冒険者の呆れと応援

冒険者マディラの視点です。


 「キャーーーーーーーーーーー!!怖いですわーーーーーーアイドさまぁあああああーーーーー!」


 甲高い叫び声が耳に痛い。


 「クエェ……。」


 声の発生源を乗せているグリフォンも、耳が痛いと訴えているような気がする。


 聖女のミレイちゃんは、これでもかとアイちゃんにしがみついている。叫びながらも、顔は嬉しそうに見えた。余裕なんじゃないかなー。



 ギベオン王国、国境前の街にもうすぐ着く。ここからは少しゆっくり目の移動だ。旅に慣れていないミレイちゃんの負担を少なくするために。移動の速度は下がったけれど、それでもミレイちゃんは思い出したように叫んでいた。



 ミレイちゃんは、流れる景色を楽しそうに見ながら、時折思い出したようにアイちゃんにしがみついている。

 ついでにマリーさんは、時折思い出したように僕に寄りかかる。多分、寄りかからなくても余裕なんだろうな。王子様に仕えるくらいだから、メイドさんでもある程度鍛えているのかなー。



 国境に面した街は、相変わらず活気に満ちている。ここでしばらくの間の食料を補充する。


 買い物をしていると、ミレイちゃんがアイちゃんの腕に自分の腕を絡めて、話しているのが見えた。店の品物を指さす。あのあざとい顔は……物を強請っているのかなー?アイちゃんも何かを言っているが、ミレイちゃんは引く気がなさそうだ。


 雑貨屋さんかな?少し奥に、もう少し安そうな物を扱っているお爺さんの露店もあったけれど、ミレイちゃんは何だか高そうな店構えの商品を強請っていた。

 ……いや、自分で買えば良いのに……。


 僕と一緒に買い物をしていたマリーさんが気付いて、失礼します、と僕に断ってから二人の元に向かった。何やら話をして、ミレイちゃんは諦めたようだ。アイちゃんの眉間にシワが……!僕との会話以外で眉間にシワを寄せるのも珍しい!これは早く買い物を終わらせた方が良さそうだなー……。




 「身分証を。」

 「はいどうぞー。」


 国境の門で兵士に身分証を見せる。みんな冒険者だ。ミレイちゃんはGランク。僕とアイちゃんはBランク。マリーさんはメイドになる前に登録していたそうで、Dランクだった。もう少し上だと思ったけどなー。


 問題もなく国境を抜けて、広い草原をカルセドニー渓谷に向けて走った。そこでも時折キャーキャー言っているのが聞こえた。

 マリーさんが申し訳なさそうにチラリとこちらを見た。


 「私とミレイ様、交代した方が宜しいでしょうか……?」

 「……アイちゃんが嫌だと言わない限り、いいんじゃないー?マリーさんも面倒でしょー?」

 「はい。」


 面倒、という意見にはかなりの速さで返事が来た。……マリーさん、ミレイちゃんの面倒見るのめっちゃ嫌なんだろうなぁ。素直で良い事だー。

 アイちゃんが自分から嫌だと言わない限り、二人の心の平穏は保たれるなー。



 渓谷に入る手前で夜を明かす。

 野営の準備でも、ミレイちゃんはアイちゃんから離れない。


 「アイドさまぁー。夜って少し寒いですねぇ……。」

 「……。」


 寒いと言いつつアイちゃんにしなだれかかって、上目遣いで見ている。


 見ていてこっちが寒くなるよぉー。鳥肌立つよぉー。

 ……アイちゃんはずっと無言だけど、ちゃんと毛布かけてあげているし。根が優しいから、拒否出来ないんだろうなぁ。聖女のやりたい放題だよ……。



 渓谷を南へひたすら進む。

 途中で出てくる魔物は基本僕とアイちゃんの二人で対処して、マリーさんにはミレイちゃんの護衛を任せている。素晴らしくいい姿勢で、油断なく周りを見るマリーさんは、やっぱり只者じゃなさそうだー。


 戦闘が終わるたびに、怖かったですぅー!って声が隣から聞こえてくるのにもだいぶ慣れた。


 本当は他の冒険者達と移動した方が安全なんだけれど、この子の事があって、それもしなかった。目を離した隙に、誰かが罪を着せられていたら大変だものねー。もうあの手紙の内容を信じているよ。きっと本当の事しか書いていなかったんだろうって。


 こうして、時間をかけて南にあるグランディディ王国の国境前まで来れた。


 後は、国境の門を越えて、指定された街まで行けば完了。この面倒な子とも、後数日でお別れだ。アイちゃん、良く我慢しているなー。




 国境の門を越えるための検閲の列に並んで待っていると、マリーさんがピクリと動いた。……珍しい。

 マリーさんは無駄な動きをしない人だと認識していたので、何かあったのだろうかと声をかけた。


 「マリーさん?どうかした?」

 「……はい。」


 その返事はかなり小さいものだったけれど、その先に続く言葉はさらに小さくなった。


 「……三つ渡したうちの、二つ目の魔道具の発動を確認しました。」


 魔道具の発動を知れるってどんなものなんだ……?っていうか、魔道具を三つ持っている人って……。


 いち早く反応したのは、アイちゃんだった。


 「チカ……?」

 「チカって誰ですかぁー?アイド様ー?」


 女の人ってこういう時だけは敏感だよねぇー。険しい顔をするミレイちゃん。その前のマリーさんの言葉は聞こえていなさそうだったのに。


 それにしても、チカちゃんが魔道具を発動したという事なら……あの威力の魔道具を発動せざるを得ない状況って事かな……?



 アイちゃんが支度をし始めた。……僕にできる事は……。


 「アイちゃん、僕は残るよ。依頼だからね。」

 「ああ。頼む。」

 「うん。アイちゃんも気をつけてねー。」

 「えっ。えっ?」

 「マリーさん、彼は元々指名じゃなかったし、後は馬車でも移動出来るから、僕だけでも良いよねー?」

 「はい。大変頼りになりました。ありがとうございました。」

 「えっ?」


 間にミレイちゃんの疑問の声が入ったが、話は済んだ。アイちゃんはグリフォンに乗って、来た道の方を向く。


 「ちょっと待ってよ!何で!?……アイド様!私をこんな所で置いて行かないで!!」


 ミレイちゃんは勘違いしているのかな?自分と離れる事は無いとでも思っていたのかなー?

 アイちゃんは、時間が勿体無いとでも言わんばかりの煩わしそうな顔で、ミレイちゃんに振り返った。ミレイちゃんの息を飲む音が聞こえた。


 「元々、俺はこの依頼に巻き込まれただけだ。それに……君のような何を言っても覚えようとしない、向上心の無い煩い女は好きじゃない。……最後に、その名前の呼ばれ方は……嫌いなんだ。」


 心底嫌そうな顔で言い切ったアイちゃん。この数日、チカちゃんにしたように、この世界の事を色々と教えようとしていたんだね……。あんなに付き纏われて、嫌そうだったのになんて優しいんだ……。そして、何も覚えようとしなかったんだなぁミレイちゃん……。


 「え……。だって……名前って……。」


 ミレイちゃんがキョトンとしているので、僕は良い笑顔に見えるように顔を作って言った。


 「ミレイちゃんがすごい顔していたから、名前を最後まで言えなかったんだよー。アイちゃんの嫌う呼び方をするのは僕くらいだと思っていたよー!勇気あるねーミレイちゃんはー!」


 僕はずっとアイちゃんが嫌う呼び方を敢えてしている。ムスッとする反応を楽しむためだ。『アイ』の部分が女性名みたいだから嫌いらしい。最近はあまり顔に出さなくなっちゃって、面白くなかったんだけれど、ミレイちゃんが呼ぶたびに顔が変わるので、かなり楽しませてもらった。


 アイちゃんは言いたい事を言ってスッキリしたようで、もうミレイちゃんには見向きもしなかった。

 僕が手を挙げると、頷いて、凄い勢いで去って行った。



 さーて、手紙に書いてある通りなら、彼女の面倒な部分が出てくるかもなー。確か、ヒステリック気味なんだっけ?ミレイちゃんは俯いて、なんかプルプルしている。



 面倒な方は僕が引き受けるんだから、ちゃんとチカちゃんを助けるんだよー。アイちゃん。


安そうな物を扱っているお爺さんのお店……こっちが当たりでした!

……まぁどっちにしても強請ったら何も手に入りません。


今回の話は、美麗ちゃんへの若干のザマァ……なのかな?


閑話休題。次からチカ視点に戻ります。



追記

ちょっと時間の流れがおかしくなってしまいました!もしかしたら若干の編集をするかもしれません。早まったなー!私!_| ̄|○

追記の追記

23話の方に少し文章を足しました。年明けと共に春に向かうという世界観を足しまして、クレスとマディラと別れてから大体20日程度経っているという感じにしました。日本と同じ感覚で年越しから春だと、3、4ヶ月経ってしまいますからね!時間差が気になって仕方なかったので、こんな感じの調整をしました!

内容の変化はほとんどありませんので、ご安心下さい。

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