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閑話 イケメン騎士の祈り

 マディラ視点の予定だったのですが、もう一話イケメン騎士視点の話を入れたいと思います。


 誤字報告ありがとうございます!


 「嫌よ!!」


 先程から、元聖女のヤダヤダという叫びだけが響く部屋。

 子供のように駄々をこねる元聖女に、主人はヘトヘトになってしまっている。顔には出していないが髪が一房、その疲れを表すように顔にかかった。




 

 私からの誘いにホイホイとついてきた元聖女。部屋に主人やマリアンヌがいた事で、やっと甘いものではないと気付いたようだった。


 「やぁ、とりあえずそこにかけてくれ。」


 主人がにこやかに対面するソファーを勧める。不貞腐れたような顔をしながらも、元聖女は大人しく座った。

 扉をしっかりと閉め、マリアンヌが頷いたので、魔道具が発動したのだろう。これで音が漏れる事はない。主人がそれを確認して、元聖女に話しかける。


 「さて、元聖女殿。そろそろ我が弟のアンタレスも、君の不自然な行動に疑問を持ち始めている。逃げるなら今が頃合いだと思うのだがね。」


 笑顔で元聖女、とはっきり口にした。その事に敏感に反応する元聖女。ものすごい勢いで主人を見た。


 「……なんで……。」

 「今は強欲の魔女、だっけ?随分と堕ちたものだね。……まぁ、欲のままに生きていたみたいだから、当然といえば当然かもしれないけれど。」


 主人はニコニコと笑顔のまま毒を吐く。元聖女が私に強請った物の代金は、全て主人の懐から出していたからな……。少し毒づく事も仕方ない。私だって言いたい……。ずっとベタベタされて迷惑この上なかったのだと……。


 「さて、君には二つの選択がある。」

 「……。」

 「このままバレないとタカをくくってこの城に居座り、バレたらアンタレス達に殺される未来。私の手を取ってこの城から密かに抜け出し、一般人として慎ましく他国で生きる未来。どちらが良い?」


 首をコテンと傾げて二択を迫る主人。威圧しているわけではないと行動で示されているのだろうが……もう良い年なのに……主人……。


 「……ゃ。」

 「ん?」

 「嫌よ!どっちも嫌!!」


 元聖女は立ち上がり、手を握りしめて叫んだ。



 それからずっと最初の通り、イヤイヤを繰り返している。



 「嫌だ嫌だと言ってもね、バレるのは時間の問題なんだよ?」

 「何よ!勝手に召喚したのはそっちじゃない!最後まで面倒見るのが筋ってものでしょう!?」

 「本当は最後まで見るつもりだったんだよ?君が聖女のままだったならね。聖女として仕事をしてもらえれば、その対価として丁重に扱う事になっていたよ?でも君は、今は強欲の魔女じゃないか。何の役に立つの?役に立たないと気付かれたら、アンタレス達は容赦なく君を始末するよ。他国に逃げるのが一番だと思うけど。」

 「嫌よ!他国でひっそりと地味に生きるなんて!今までと同じように暮らせないのなら行きたくない!」

 「……じゃぁバレる直前まで贅沢して、死ぬの?」

 「それも嫌!死にたくなんてない!ちゃんと責任取りなさいよ!」

 「聖女としての力はないのに、贅沢させろ。仕事もできないのに、慎ましくは出来ない。それはもう、わがままじゃないのかな?他国で生きるならば、きちんと最後まで責任を持って生きていけるようにするつもりだよ?」

 「慎ましくなんて……!そんなの普通の人と同じじゃない!」

 「そう。君はもう聖女じゃない。普通の人なんだ。」

 「……。」


 部屋の外がドタバタとうるさくなってきた。そろそろ潮時だろう。


 「リゲル様、そろそろ……。」

 「そうだね。」


 主人は立ち上がると、手紙を元聖女に渡した。……それは千鶴の書いたものだ。


 「これは、君と一緒に召喚された人が書き残したものだよ。」

 「……あ。」


 そんな人間がいたのだと、今思い出したような顔をしている。元聖女にとって、どうでもいい人間だったのだろうが……忘れていたとは。


 「君と一緒に召喚された女性は、自殺を装って殺された。アンタレスと父によって、ね。君が聖女ではなくなったと気付かれたら……彼女と同じ道を辿るだろうね。」

 「……。」


 実際に殺されている人がいると知って、やっと理解したようだった。このままでは自分も同じなのだと。本当に死ぬのだと。

 千鶴が死んだという事は一度伝えたはずなのだが、それもまた聞いていなかったか、忘れてしまっていたのか。存在を忘れるくらいなのだから、元聖女にとって本当にどうでもいい事だったのだろう。自分以外どうでもいいという考えなのがよく分かる。


 元聖女は手紙を震える手で開き、中を読んだ。




 『お父さん、お母さん。


 私はもう二人に会うことは出来ません。日本的に言うなら……神隠しに遭った、って感じかな?


 そちらに戻ることは出来ないから、手紙を書きます。いつかこの手紙がお父さん達の元に行くことを願って。


 もう会うことは出来ないけれど、ずっと二人が元気に過ごしていけるよう祈っています。


 お父さん、ビールの飲み過ぎで最近お腹がタプタプしてきてるんだから、少しはお酒、抑えてね!少しでも歩いて健康でいてね。

 お母さん、お父さんのお酒のおつまみは、そろそろ揚げ物ばかりじゃなくて、野菜も取り入れたほうがいいよ。あと、パートのしすぎで、体壊さないようにね。

 二人とも働くの好きなんだろうけれど、たまにはのんびりと旅行に行ったりして、リフレッシュしてね。


 今まで育ててくれて、ありがとうございました。私はとても幸せでした。

 どうか心配しないでください。私はこの世界でなんとかやっていくつもりです。


 本当に、本当に、ありがとうございました。二人とも、お元気で。』



 主人が翻訳した内容はこのようなものだったらしい。

 千鶴の親に対する愛情と感謝が書かれたものだった。その文字は、微妙にブレているように見えた。


 「それはね、殺される直前に書いたと思われるものだよ。何とか生きていこうと前向きに捉えた矢先に、彼女は殺されている。」

 「殺される……。」

 「君も同じように自殺に見せかけて殺されるかもしれない。わかってくれたかな?」



 その後は、項垂れたまま、なんの反応も示さなかった。やっとわかってくれたようだ。

 主人はマリアンヌに元聖女を任せた。魔力の使いすぎで具合が悪くなって、蹲っていた所を保護した、ということにして部屋に帰らせる。



 主人は執務を行う机に頬杖をついて、微笑んだ。


 「さて、説得もしたし、後は計画の通りにすればいいね。」

 「はい。お疲れ様でございました。」

 「わかってはいたけれど、強欲の名前に相応しい駄々っぷりだったねー。でも、これでやっと終わる。少し無理やりな部分もあったけれど、彼女達が無事にいてくれたらいいね。」

 「はい。」


 元聖女は、他国にいる協力者の元で暮らす事になるだろう。何かあったらすぐに情報が来るから、私や主人が生きている限り安全を保障される。

 千鶴は……あのチャラい冒険者に聞いて、生きている事は分かった。だが、どこで何をしているのかは教えてくれなかった。まったく、ケチな冒険者だ。


 どうか千鶴が、健康で楽しく生きていてくれることを願う。

 ……いつかまた、会えないものだろうか……。

 千鶴は千華がとっさに言った偽名です。ギベオン王国では千華は自殺した、という事になっています。


 風邪を引いたのと、元聖女のめんどくさい感じを出すのに時間がかかってしましました……。

 最近温度差が激しいので、皆さんも風邪にはお気をつけください。


 次こそは、マディラ視点です!

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