25 高校生の頃、隣を歩く友達が買ったモナカアイスがトンビに取られた瞬間、私の目の前は真っ茶色になりました。
いつも見てくださってありがとうございます!
みんなが休憩を挟みつつ、朝を迎えた。私も仮眠のような短い休憩を何度か挟んで、見回りをしていた人に食事を出したりと、忙しい夜だった……。
朝になるまでに狩った魔物の数は二十匹にのぼった。街予定地の敷地からすぐの場所に解体待ちとして山になっている。
熊、ツノの付いたウサギ、狼、猿、などなど……獣系の魔物がほとんどだ。
「一晩でこんなに……。」
「だいぶ溢れているみたいだ。もしダンジョンの発見が遅れていたら……溢れかえった魔物に、この周辺は飲み込まれていたかもしれないな……。」
チーターの獣人さんの言った事を想像してゾッとする。私たちは運が良かったのかもしれない。
怪我人も軽い症状のものばかりで、みんなの顔にも余裕が見える。悪い状況を想像すると、今がどれだけ助かっているかがわかる。
「タポーの葉は足りていますか?」
「あぁ……。まだ大丈夫だろう。」
体力ポーションの薬草の数が足りているか、大工さんの奥さんの一人が声をかけてきた。チーターの獣人さんと、他に警戒をしていた大工さんとで確認を取って、答えている。
「ただ、調合できるやつも一人しかいないから、余裕はあった方がいいかもしれん。調合をするやつには、あまり無理はさせたくは無いが……怪我人を放っておくわけにもいかないからな。余裕のあるうちに作り置きしてもらおうと思っている。」
だとすると、日の出ている今のうちに薬草を手に入れた方が良いのかもしれない。
私は手を上げて、提案する事にした。
「日の出ている今のうちに薬草採取をします!私冒険者になってずっと薬草採取していたので、得意です!」
「嬢ちゃん……ありがとうな。お願いするよ。ダンジョンが発生したのとは反対の方向で採取してくれ。必ず、誰か人の目のある場所でな。」
「わかりました!」
少しでもみんなが無事に乗り越えられるように、自分に出来ることはやろう。
ダンジョンとは反対方向に向かう。こっちにはそこまで多くは警戒をしていないけれど、みんな屈強な人たちだ。私は採取に集中させてもらおう。
黙々とタポーの葉を集める。
タンポポの種は風で飛んでいくから、比較的同じ場所に着地する。結構密集してくれるから、順調に次から次へと見つけられる。
いつものように探しては採ってを繰り返していると、視界の端にマポーの葉が見えた。
念の為採っておいた方が良いかな?
ちゃんと人がいるのを確認して……。
……あれ?さっきまであそこに人がいたのに、誰もいなくなっている。
近くで魔物が出て、応援に行ってしまったのかもしれない。
とりあえず、一旦戻ろう。
何となく、あまり音を立てないように……静かに来た道を戻る。
そろーり、そろーり……。
ガサッ!
!!!
背後から……音が……。
ガサガサッ!
ゆっくり振り返る。
……あれ?何もいない?
と思ったら、目の前が緑一色になった。
何だ何だ!?何がどうなった!?と、あわあわしていると、緑が下に落ちていった。
……君は……。
「スライム君!!」
よっ!って感じに右側の部分を伸ばしてあげる仕草をするスライム君。
家に入り浸るようになって、だいぶ人間みたいな仕草が増えてきた。スライムとして大丈夫なのかなってたまに心配になる。
魔物じゃなくて良かったー!視界が緑一色になった時は、もう死んだのかと思ったよ。ふぅと息を吐いて、プルプルなスライム君を見る。それにしても……。
「家から馬車で一日のこの場所に、一人で来たの?」
スライム君は、どうだ!と言わんばかりに体を反らせた。そして、体をブルブルと震わせる。その仕草は……まさか……。
「ご飯を催促している……だと!?」
君は、ご飯を食べたいが為に一人で走ってきたというのか……!なんという執念!!
「でもね、今危険がいっぱいで、スライム君が満足できる程のご飯を用意出来ないんだよ……。ごめんね。」
スライム君は体全体を縦に伸ばしてブルブルと震えた。な、なんだってーーー!?という声が聞こえた気がした。
最近スライム君との意思疎通が、何となくだけれど、出来るようになった気がする。嬉しい限りだ。
スライム君ははてなマークのように体を曲げた。なんで?と、言っているようだ。
「街建設予定地のすぐ近くに、ダンジョンが発生したんだって。それで、魔物が大量に出てくるかもしれないから、みんなで警戒しながら魔物を抑えているんだよ。今ある材料で、冒険者さんが来るまで耐えないといけないから、みんなお腹いっぱいまでは食べていないんだよ。スライム君にもそんなに食べさせてあげられないんだ……。」
説明を聞くと、スライム君はうな垂れるように地面にだらけてしまった。ごめんね……。
「とりあえず、見張りの人が近くにいたんだけれど、見えなくなっちゃったから街予定地に戻らないとね。スライム君も来るでしょう?」
聞くと、スライム君は私の肩に乗ってきた。もう歩く元気もないみたいだ。
「ちょっとだけなら、何か作ってあげるからね。」
プルプルして、頼むよー。と言っているようだ。つい、笑ってしまう。
街予定地の方へ向かうけれど、一向に誰にも会わない。おかしいな。さすがに一人くらいは会いそうなものだけれど……。
ガサッ!
……勘弁してください。
今度こそ魔物か……と、振り向くと、ハムスターの獣人の大工さんがいた。泥んこで、あちこちに傷がある。
そして、後ろからさらにガサガサッと音が聞こえてくる。
今日はガサガサデーかな……と、ちょっと現実逃避をしていると、獣人さんが叫んだ。
「嬢ちゃんいたか!良かった!見失って、心配したんだ!とりあえず、街まで逃げてくれ!応援を呼んで欲しい!!」
ハムスターの獣人の大工さんが言い切る前に、後ろから飛び出してきた猿の魔物。獣人さんが手に持っていたハンマーで迎え撃った。猿の魔物は殴られて後ろに吹き飛んでいく。
「次から次へと来やがる!早く逃げろっ!」
「……っ!はい!応援を呼んできます!」
私に出来る事は応援を呼んでくる事。魔物に対して何も出来ないのが悔しいけれど、ここにいても足手まといなんだとわかっているから、背中を向けて走り出した。
早く、早く応援を呼ばないと!レベルが上がったおかげで、前よりも走るのは速くなった。でも、今はそれでも遅いと感じる。
さっきの大工さん以外の人は、どこにいるんだろうとか、あっちの見張りの人数が何人いたっけとか、余計心配になるような事ばかりが頭に浮かぶ。それを振り切るように、足を動かした。
必死に防衛する人と、家を囲むように群がる魔物。数の差は、歴然だった。
その光景に、このままでは無理だと容易に想像出来た。
街を作ろうと集まった獣人の大工さんや、その奥さん。数人の冒険者さんの苦しそうな顔が、目の前に広がっている。
昨日までの楽しそうな顔との対比に、胸が苦しくなる。
自分が生きる為にも、ここにいる人々を助ける為にも……私は覚悟を決めた。
やってやろうじゃないですか!!
だんだんサブタイトルの部分が長くなってきている気がします。
ついでに今回のサブタイトルは実体験です。




