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24 ワームみたいなのが口を開けて、来いよ!って言っているのを想像しました。

 章が変わったのかもって言いましたが、あれは嘘です!むしろ、これから章の終盤の始まりです。


 ……たぶん。

 新しく作っていた街の周辺で、ダンジョンが見つかったらしい。


 「ダンジョンって……。」


 呆然と呟くと、近くにいたチーターの獣人の大工さんが反応してくれた。


 「嬢ちゃんはダンジョンを知らんかったか?」

 「すみません。一応冒険者ですが……あまり覚えていなくて。」

 「構わんよ。そうそう出るものじゃないからな。」



 教えてもらって私が思ったのは、ダンジョンという名前の生き物なのかな?という事。

 ダンジョンは動くことはなく、洞窟のような入り口がある。構造はダンジョンにより個性があり、定期的に道が変わってしまうのだそうだ。中で魔物が生成されているが、多くなると排出されてしまい、それが大量だと周りに悪影響を及ぼす。なので定期的に中の魔物を狩るのだそうだが、狩りに失敗して中で死んでしまうと、跡形もなく消えてしまうのだとか……。ひえぇ……。

 ダンジョンは基本的にギルドが把握していて、ダンジョンに向かう冒険者へのサポートをしている。

 ……大きな口を開けて餌が来るのを待ち、体内で育てている細胞が中に入った餌を消化する。細胞が多くなりすぎると、不要な細胞を排出……。生き物みたいだよね?


 「そして、今回騒いでいるのは、ギルドの把握していないダンジョンが見つかったって事だな!」

 「なるほどー。」


 これから街になる場所に、ダンジョンが出来てしまった……。これって普通の街にはならないよね?

 ……っていうか、この状況……もしかしてやばいのかな?


 「さっき出てきた魔物も、もしかして……?」

 「あぁ。数が多いとは思っていたが、ダンジョンから排出された魔物だったのかもしれない……。だとすると、周辺にも大量に排出されているかも……。」


 そう言うと、チーターの獣人の大工さんは尻尾を下げて、難しい顔をした。


 「とりあえず、嬢ちゃんは戦えないんだろ?家に入っておきな。」

 「はい……。」



 案内された家の中には、私の他にも戦えない大工さんの奥さんたちが集められていた。みんな不安そうな顔をしている。

 ダンジョンには個性があるって言っていた。今回現れたダンジョンがどのくらいの危険度なのか、はっきりしないうちは、この不安は取り除けないだろうな……。


 私だって不安だ。どんな強い魔物が出ているのかわからないし、みんなが一生懸命建てていた街が壊されたりしないか……。大量の魔物に囲まれたら……。それでも、出来る限り明るく振舞おうと思う。暗い気分でいたからといって、状況が変わるわけではないのだから……。


 「みなさん、今のうちに出来る限りの蓄えを作っておきましょうよ!持ち運びできるものがいいかな?小麦粉でおまんじゅうを作って、中身おかずにして……おやき、みたいな?」

 「そうだね……。今出来る事をやっておこうかね。」

 「……うん。外で警戒してくれている人の為にも、私たちも何かしないとね!それで、そのおやき、ってのはどんなものなんだい?」


 獣人さんというのは、メンタルもタフな人たちが多いのだろうか。さっきまで暗い顔だった女性たちは、少しずつ顔を上げていった。みんなのために動くという気持ちが、きっと奮い立たせているのだろう。


 「……震えながらも笑顔で、気丈に振る舞うあんたを見たら、落ち込んでなんていられないよ。」


 そう言って、一番歳上のおばちゃんに頭を撫でられた。

 あれ?私、震えてた……?手を見ると小刻みに動いていた。そうか、怖かったのか。でも、きっと何とかなるよね。


 それから、みんなでなんちゃっておやきを作った。小麦粉を練った生地の中に、お肉や野菜などのおかずを入れて、火で炙ってじっくり焼いていく。

 今回はお醤油は持ってきていなかった。あったら少しはおやきに近づけたかもしれないけどなー。


 大量におやきもどきを作っていると、見張りをしていた男の人が入ってきた。一番歳上のおばちゃんが、男の人に近づいて話を聞いている。私も耳をすませて、一緒に聞いた。


 「ダンジョンの場所と、魔物の種類は大体わかった!ここにいる人間は避難と、ギルドへ報告をしてほしい。」

 「わかったよ!馬車は動かせるのかい?」

 「冒険者と戦える大工を数名つける。第一陣はすぐに出発してほしい。大体五名は行けると思う。」

 「五名……。」


 おばちゃんがみんなを見る。最初に抜け出せる人を選ばないといけないというのは、責任重大だろう。


 「若い子から、だね……。いいね?」


 みんな何も言わずに頷いた。


 若い子順の五人の中に、私も含まれていた。でも私はみんなよりレベルが高いはずだ。……早く逃げたいとは思うけれど、生存率で言えばレベルが高い人が後の方が良いだろう。だから、私は後回しにしてもらうことにした。あれからさらに1上がったし。


 「私は冒険者ですし、レベルも一応25あります。なので、私は後で大丈夫です。」

 「……そうかい?ありがとう。」


 第一陣の五人は冒険者と大工さんと一緒に無事にここから離れていった。

 これでギルドに報告がいって、応援が来てくれるだろう。それまで、今いる人数でダンジョンから出てきてしまった魔物の対応をしないといけない。


 魔物と戦うことは出来ないけれど、無駄にレベルは高いから耐久力はあるはず。いざとなったら……。


 「マリー師匠が持たせてくれた、これの出番があるかもしれない……。」


 残り二本の魔道具。威力が前のと一緒なら、前と同じようにスキルも使わないといけないかもしれない。

 ……スキル【コンビニ経営】。この国ではまだ使っていないけれど、見られても大丈夫かな……?でも、背に腹はかえられないからね……いざとなったらためらわず使おう。


 「とりあえず、交代で見張りをするから、少しずつ外の奴らが休憩に来ると思う。メシを頼むよ。」

 「わかったよ!」


 夕飯は終わったけれど、このまま夜通し見張りをする人が出るならば、夜食が必要になるだろう。特にあのおじいちゃんは、人よりたくさん食べるかもしれないもんね!

 

 残った女性たちでさらにご飯を作っていった。


 「おぉー!いつもより一食多く食べられるわいー!うれしいのう!」

 「おじいちゃんポジティブ!」


 周りを警戒している大工さんに聞くと、そこまで魔物が跋扈しているわけではないらしい。今のままなら問題なく冒険者が来るまで耐えられるらしい。良かった!この家に避難していた奥さんたちもホッとした表情になった。少しでも心に余裕が出てくれば、笑顔も出てくる。

 私もふぅっと息を吐いた。思いのほか肩に力が入っていたのかもしれない。


 首都まで一日のこの距離ならば、二日後には冒険者さんが来てくれる筈だ。それまで頑張ろう、とみんなで声を掛け合った。

 いつもより暗い感じになってしまいました。

 千華は別に正義感とかで後になる、と言ったわけではないと思うのです。ただ、自分の方がレベルが高いから。レベルの低い人よりも耐えられるから。それだけです。日本人的な気質もあるかもしれないですね。

 ……譲り合い精神的な。

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