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23 かまくらってまだ作った事ないんですよね!いつか作って入ってみたいです!

 前話から少し時間が経ちました。その間、千華はのんびり暮らしていました。


 今回から、新章的な感じだとおもうのです。……たぶん。

 獣人さんがたくさん暮らしているエンジュ国に来て、初めての冬を越した。

 多分、この世界に来て、半年は経ったんじゃないかな。最近は春に向かって暖かくなってきている。


 エンジュ国の冬はそこまで辛くはなかった。雪はたまに降るくらいだし、積もったのは一回だけだった。

 その雪が積もった日は、子供達と雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりして遊んだ。あまり積雪が多く無かったせいで、雪玉はちょっと土が混じり、みんな最後は泥んこになってしまって、他の先生に怒られたりしたけれど、とても楽しかったなぁ。


 野菜は冬の野菜が出回り、そこまで食物に苦労もしなかった。乾燥トマトベースのお鍋にしたり、チーズをたっぷり入れたお鍋にしたり……あれ?この冬お鍋ばっかり食べてなかったかな?……まぁいいか!

 同じ寮の先生方と囲むお鍋は美味しかった!


 年が明けて、みんな一つ歳を取る。お誕生日っていう概念もあるみたいなんだけれど、歳を取るのは年が明けた時って決まっているらしくて、お祭り騒ぎで年を越した。

 国民全員のお誕生会みたいなもので、とっても賑やかで楽しい年越しだった。


 年の境目は冬と春の間にある感じだと思う。年越しのお祭りをしてから、だんだんと暖かくなってきたから。


 年を越して、黒い毛並みの柴犬の獣人ジェット君は、就職をした。彼は色々な場所でしっかりと話を聞いて、考えた上で冒険者になった。クレスさんのようなカッコいい冒険者になりたいのだそうだ。今は私と一緒に薬草採取をしたり、初心者恒例のスライム倒しなどをしながら経験を積んでいる。

 私のようにスライムすら倒せない、なんて事もないので、立派な冒険者になる事だろう。将来が楽しみだ。何より、ジェット君自身の目がキラキラしていて、冒険者を楽しんでいるっていうのが伝わってきて嬉しくなる。


 私が餌付けしていた緑のスライム君は、見事に私の家に入り浸るようになった。飼っているのではない!入り浸っているのだ!私が作るご飯をきっちり半分奪って、どこかへ去っていく……。そしてご飯を作る時間になると、戻ってきて部屋でだらけながら待っている。言うこと聞かないし、自由過ぎるし……飼えていないよね……。

 唐揚げを作る日は、ずーっとお鍋の横でプルプルしている。そして揚がったそばから勝手に食べていくのだ……。私の分もとっておいてよ!この緑スライム、唐揚げの時だけは慈悲がない!!



 ……そして、クレスさんとマディラさんは、年を越える前にこの国を出てしまった。

 マディラさんが緊急指名依頼が入ったとかで、行かなければならなかったのだとか……。ギベオン王国に。


 他国にいるから、断ることも出来るって言っていたのに、行ってしまった。


 「ちょーっと、相手が悪くてねー。今回は行くことにするよー。」


 クレスさんは、と言うと……。


 「俺は行かんぞ。」

 「だめー!抜け駆けは許しませんー!……それに、時間を空けた方が良い時もあるんだよー。あ、チカちゃん!余裕が出来たらお手紙書くからねー!」

 「!俺も書くぞ!」

 「わかりました。楽しみにしていますね!」


 マディラさんによって、強制的に連れて行かれてしまった。何について言っているのかよくわからなかったけれど、クレスさんは最後まで反抗していた。

 ただ、グリちゃんは久々の長距離に、嬉しかったのか、ものすごい勢いで走って行ってしまったよ……。


 春には戻れると思うって言っていたけれど……確実に日差しは強くなって来ていて、春までに本当に帰ってくるのかわからないな、と思っている。お手紙も来ないし……お忙しいのかな?


 ……って!帰ってくるって言うと、まるでここが帰る場所だと決めているみたいじゃない!二人とも冒険者さんなんだから、こことは限らないんだよね……。それでも戻る、と言ってくれたのだから、一度は顔を見せに来てくれるはずだ。

 大丈夫かな、なんてあの二人を心配するのも差し出がましさがある……。

 つまり、私はただ待つだけなのだ。もどかしいような、寂しいような……。そんな微妙な気持ちを持て余している。忙しくして、紛らわすくらいしか出来ないんだよね……。

 ……イケメン成分が不足気味ですよーー!




 私は、年が明ける少し前から、一つ仕事を増やした。


 この首都から、乗合馬車で一日くらい走った場所に新しく街を作る事になったそうで、冒険者ギルドで作業を手伝ってくれる人員を募集していたのだ。

 学校での授業の数を少し減らして、たまに手伝いに行っている。討伐系の依頼は出来ないけれど、家を建てたりする人の補佐や、食事の用意などは手伝えるからね。こういう依頼があるのは本当に助かる。


 貯金は少しずつしているけれど、雀の涙程度だ。お店を出すためにも、もう少し貯めたいところ……。

 受けられる依頼は出来る限り受けて、チマチマ稼いでいこうと思っている。



 今回は、三日かけてお手伝いをする。初日は移動と夕飯の支度をし、次の日は一日お手伝い。三日目の朝ご飯をお手伝いして、首都に帰るという予定だ。今日は二日目。


 「おーい!そっちの工具箱を取ってくれー!」

 「はーい!ただいまー!」

 「嬢ちゃん……ご飯はまだかいのぉ?」

 「おじいちゃん!さっきお昼ご飯食べましたよ!」

 「そうだったかいのぉ……。あぁ、こんな感じでどうかのぉ?」

 「おじいちゃん!このタンスめっちゃ可愛いです!流石です!次は机だそうですよ!」

 「ほぅほぅ……。夕飯はまだかのぉ……。」

 「ただの食いしん坊!?」


 癖のある職人さんもいるけれど、とっても明るくて楽しい職場です!今は数軒のお家を完成させて、中の家具なんかを作ったりしている。

 出来たお家には職人さんが住み込んで、移動の時間を省略してでも早く他の家を作ろうとしている。私は住み込みではないから週に一回しか来れないけれど、その完成の早さには毎回驚くほどだ。


 出来上がっていくお家は、みんな木のぬくもりを感じる優しい色合いだ。色を統一して作っているので、沢山の家が並んだら、さぞ美しかろう。


 「おーい!魔物が出たぞー!」

 「なにー?またか!」

 「冒険者さんは手を貸してくれー!」


 新しい場所を開拓するには、魔物との戦闘も避けられないらしくて、大工さんたちはみんな腕っ節も強い。私なんかより、よっぽど強いのだ。

 今も数人の冒険者さんを連れて、熊の魔物を殴り倒している。……って先頭に立っているのはおじいちゃん!


 「おじいちゃん!?」

 「ふぉっふぉっふぉー!わしの夕飯の邪魔をする奴はゆるさんぞぉーい!」


 おじいちゃん大工さんは冒険者さんよりも強そうだ……。冒険者さんが呆然とみている中で己の拳のみで熊の魔物とやりあっている。なんだあのハイスペックおじいちゃんは……。


 「おわったぞー!」

 「おーうお疲れさん!」

 「それにしても、最近魔物が頻出しているな……。」

 「確かに多いが……この辺に縄張りがあったんだろう。しばらくは仕方ないさ。」


 街を覆う結界が張れれば良いのだけれど、結界を張る魔道具は他国で作られていて、品薄でまだ確保出来ていないらしい。早く手に入らないかなー。



 「今日はここまでにしよう。」

 「はーい!夕飯は出来ていますよー!」

 「飯じゃー飯じゃー!」

 「おじいちゃん!落ち着いて食べてくださいね!」


 今日の仕事も終わり、みんなで夕飯を食べる。私は夕飯の後片付けなどを終わらせるまでが仕事だ。

 みんながそれぞれ寝るために建てたお家に帰る。それを見送りながら、後片付けをしていると、遠くから見張りの冒険者さんの一人が、声を荒げて走ってくる。


 「大変だーーー!!ダンジョンが見つかった!!」


 ダンジョン……だと?

 ずいぶん前にギルドの職員さんに聞いたような……。


 なんだったっけ……。

 のんびり暮らしていたけれど、唐揚げだけは争奪戦だったみたいです。

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