閑話 イケメンチャラ冒険者の嘱目
マディラさんの視点です。
連続で閑話ですが、この後は時間が進んでしまうので、書いておこうと思いました。
閑話なのでちょっと短めになっています。
夜遅くまでかかった魔物討伐依頼。報告は次の日にする事にしたんだけど……。
チカちゃんを見かけるとは思わなかった。
最近は職業学校の先生をしているって話だったし、学校が休みなら朝から街の外で薬草採取している事が多かったから、この時間にギルドの近くに来るなんて珍しいと思ったんだ。
アイちゃんもビックリしていたね。いると思わないところに好きな子がいたらビックリするよね。
まぁ、チカちゃんは獣人の子供と一緒にギルドから遠ざかっていくところだったんだけれど。
「ちょっと僕たちが遅かったかなー。惜しかったね、アイちゃん。」
「いや、別に……。」
そっぽを向いてチカちゃんから目を背けるアイちゃん。隠そうとしなくても良いのに……。もう気になっているのはバレバレなんだよー。
そう思ってチカちゃんの方をもう一度見ると、横の細道から腕が出てきて、チカちゃんが引っ張られるところだった。
「あ!アイちゃん、チカちゃんが……。」
教えてあげようと思ってアイちゃんの方を見れば、もう走り出していた。見てなかったんじゃないの?
ってちょっと!
「アイちゃん!待て!」
きつめに言うと、止まってくれた。目がジト目になっているけれど気にしない。
「……なんでそんな、ペットを躾けるみたいな言い方なんだ。」
「こう言わないと止まらなそうだったから。アイちゃん、ちゃんとチカちゃんに教えたんでしょ?酔っ払いの撃退方法。」
「……だが!」
「様子をみて、ダメそうだったら助けよう。ね?先生?」
「……。」
先生として教えたのでしょう?見守るのも先生の務めだよ、と暗に匂わせれば、アイちゃんはちゃんと抑えてくれた。
離れた場所から二人で様子を見ると、チカちゃんは腰に腕を回されて引っ張られている。酔っ払いが下卑た笑みを浮かべているのが見えた。腕を掴まれている獣人の子供は必死に抵抗しているが、歯が立たなそうだ。酔っ払っているとはいえ、あれは冒険者だろう。子供では無理だ。チカちゃんは無表情であまり逆らわず、何か考えているように見える。
……汚い手で触らないで欲しいものだなぁ。
チラと隣を見れば、今にも飛び出して行きそうな男。きっと同じような事を考えているだろう。歯がギリギリいってるよ。
チカちゃんは膝を落とし、酔っ払いの不意を突いて少しの余裕を作ると、一気に膝を蹴り上げた。
ナイスキック!
隣の男もガッツポーズしているよ。
チカちゃんは酔っ払いがうずくまるのを確認して走って逃げていった。
「ほら、ちゃんと先生の言われた通りに出来たじゃないか。ね?先生。」
「うむぅ……。」
「彼女も少しずつ強くなっているんだよ。時には見守ることも大事だよ?」
「……。」
強くなって、成長しているのだとしても……それでも守りたい、ってのはわかるんだけれどね。
その後、もちろん酔っ払い冒険者にはお灸を据えたよ?もう二度と、女性にちょっかい出せないように。出そうなどという感情も起こらないように……ね。
数日後、チカちゃんのお願いで、子供達に冒険者の事を教えに行った。
子供達に教えるのは楽しかった。
みんな目をキラキラさせて話を聞いてくれるもんだから、ついつい熱く語っちゃったよ。
その中でも鹿の獣人の女の子、サーシェちゃんだったかな?その子には、僕の熱さに負けず劣らずの熱い視線を送られたね。若干嫌な寒気もしたけれど、笑顔で乗り越えられたと思う。
僕が少女の熱い視線に四苦八苦しているときに、端の方でアイちゃんとチカちゃんはなんかイチャイチャしちゃってさー。武器を持つ手を支えてあげたりなんかしちゃってさー!まったく、あっちもこっちも熱いっての!
「ありがとうございました!」
「ああ。じゃぁ、明日。」
「はいっ!」
子供達との時間も終わって、帰り際に明日の約束を再確認するアイちゃん。チカちゃんと離れてから僕は揶揄ってやった。
「今日明日の事なのにわざわざ確認しちゃうなんて、まったくアイちゃんは余裕がないなー!」
「……。」
アイちゃんったらムスーっとしちゃってー。
「時間をかけて実らせるつもりなら、焦りは禁物だよ。アイちゃん。まったくー初心なんだからー!」
「……。」
無言で襟を掴まれて、街の外に引っ張られていく。
……あ、これ、朝まで模擬戦コースかも?
徹夜で模擬戦後のピクニックは、日差しが目に眩しかったなー。楽しかったけどねー!
酔っ払いがどうなったのかは……ご想像にお任せいたします!




