21 本気を出すときって思ってもいない声が出るものですよね!え?出ない?
誤字報告ありがとうございます!
いつも本当に助かります!
「今日は、冒険者さんに来てもらいましたよー。」
「「「「ええぇぇーーー!?」」」」
子供たちの驚く声に、ニンマリ笑うと、犬の獣人の先生に軽くチョップされた。
「先生の顔じゃないわよ。」
「えへへ。すみません、嬉しくて。」
みんな目をキラキラとさせて、入ってきたクレスさんとマディラさんを見ている。
二人の体格差は見事だ。
クレスさんは、筋肉質で高身長。武器は、大きく重いであろう大剣。胸当てや脛当てなど、部分部分に金属を使っていて、魔物の攻撃を剣で受けて、動きを止めながら戦う、という感じだ。
マディラさんは細身でしなやかな身のこなし。細いけれども、必要な筋肉は付いているのだろう。たぶん、長距離走者のようなものかな。武器は短く軽そうな剣を左右の腰に下げている。双剣使いだ。魔物の攻撃を避けながら戦うスタイルという感じだ。
真逆のような戦闘スタイルだからこそ、二人は一緒に戦うと噛み合うのだろうな……。などと考えていると、子供たちはわらわらと二人の周りを囲んだ。
「すっげーー!でっかい剣だーー!にーちゃんもでけーーー!」
カイン君はクレスさんを見て、その大きさにびっくりしている。
カイン君はまだ成長期だから、もしかしたらクレスさんくらい大きくなるかもしれない。男の子ならやっぱり大きくなる事に憧れるのかな?
「……ステキ。」
サーシェちゃんはマディラさんのスタイリッシュな感じにメロメロっぽい。じーっと見つめて、一切離さない。目がハートってあんな感じなのかなー。
二人の冒険者としての活動の話は、人は当たり前のように騙してくる事があるのだと、大変さを考えさせるものもあった。戦った魔物との話は、手に汗握るような内容で、良く生きていたなーと思わせるようなものもあった。
まるで物語のように語るマディラさん。その話しぶりに、子供たちは聞き入っている。話し上手だなー。マディラさん。
子供たちは真剣に聞いて、そしてとても楽しそうだった。その顔を見ると、二人にお願いして本当に良かったと思う。
スワン校長も一緒に来ていて、二人の話を聞いていた。今までなかった試みだったし、どんな話をするのか気になっていたのだろう。校長の瞳も子供達に負けないくらいキラッキラしていた。
「武器持ってみたい!」
「危ないよ。やめた方が良くない?」
話が終わって、それぞれにみんなで質問をしていた時に、カイン君が武器に触れたい、と手を挙げた。クレスさんに向かって、期待を込めた目で見るカイン君。ジェット君は止めようとしている。刀身の長さは、カイン君の背より少し小さいくらいだ。持てるのだろうか……という疑問と、危ないかも、という不安がある。私も止めようかと近づいたところで、クレスさんが答えた。
「いいぞ。こっちに来い。」
「やったー!」
「……いいなぁ。」
ジェット君も本当は持ってみたかったんだね。でも、お兄さんだし、危険だと思って止める方に回ったみたいだ。ちょっと残念そうな顔をしている。ジェット君は良いお兄ちゃんだなー。
クレスさんはカイン君に危険がないように、慎重に持ち方を教えてあげていた。もちろん剣はみんなのいない方向を向いている。
「ぐぬぬぬぬ……!」
カイン君から変な声が出ている。必死に持ち上げようとしているみたいだけれど、ピクリとも動いていない。……そこまで重いものだったの!?クレスさんは片手でも持ってたよね!?
結局、かなり頑張っていたけれど、少しも動かせていなかった。カイン君は悔しそうに剣から離れた。
「レベルが足りないのかもな。」
「うーん……レベルかぁ。」
なるほど、ステータスの力の部分が足りていないのか。……じゃぁ、筋肉全然無いように見えても、レベルが高かったら大剣も持てるのかな?もしかして、マディラさんも余裕で持てるのかも……!あの細身で大剣をブンブン振り回す姿を想像して、思わず苦笑いが出てしまった。
「君も、試してみるか?」
「良いんですか!?」
クレスさんは残念そうな顔をしていたジェット君のことも、ちゃんと見ていたようだ。ジェット君、嬉しそう。良かったねー。
「うぐぐ……!」
ジェット君はちょっとだけ剣を動かせた。持ち上げる、まではいかなかったけれど、すごい!
「動いた!すげぇ!」
「すごいねぇ!ジェット君!」
「えへへ。」
カイン君の尊敬の眼差しに照れるジェット君。黒くてクルンと巻いている尻尾がブンブン振れている。
「普通の剣なら余裕で振れそうだな。」
「ありがとうございます!」
「チカも持ってみるか?」
「えっ!?」
「チカは無理だろー!」
クレスさんが声をかけてくれて、びっくりした。カイン君は無理だと決めつけて笑っている。
ふむ……。そんな決めつけたような言い方をされると、ムキになってしまう。やってやろうじゃないか!
「やってみます!」
「えええー!チカ、気をつけてね!」
ジェット君が心配してくれた。なんて優しい。カイン君はずっとニヤニヤ笑っている。
クレスさんに持ち方を教えてもらって、私は力を込めた。レベル22をなめるなよーーー!
「ふんぬーーーーー!!!」
持ち上げた。そう、私は大剣を持ち上げることに成功した。腕プルップルしてるけどね!ふらっと剣が傾いだところで、クレスさんが手を重ねて支えてくれた。ゴツゴツした手に支えられて、ちょっとドキッとする。やっぱり、クレスさんの安定感は抜群だ。
「ありがとうございます。」
「ああ……。ふっ……。」
「?」
お礼を言うと、クレスさんは何故か吹き出す笑いをこらえている。不思議に思って見ていると、カイン君がゲラゲラ笑い転げていた。
「チカ、ふんぬー!って、ふんぬー!って!あははははは!」
「え、私そんな掛け声出してた?」
「ああ。真剣だったんだな。くく……。」
は、恥ずかしいいいいーーーーーーー!!
良いところ見せようとして、そんな掛け声になっているなんて、全然気が付かなかった!
ふんぬー!って、女性の出す声じゃないよねぇ……。ああ、穴があったら入って穴塞いで閉じこもりたい……。クレスさんも堪えきれずに、とうとう笑い始めてしまった。くぅ……!恥ずかしいよぉ……。
そんなこんなで、見学の授業はお終いの時間になった。
二人にお礼を言って見送り、さて授業に戻ろうか、と思ったら、隣に来ていたスワン校長がこちらを見ながら微笑んでいた。
「今日来てくれた人のような冒険者さんじゃったら、また呼んで話を聞きたいのう。子供たちも、とても良い経験をさせてもらったのう。ありがとうのう。」
「はい!」
二人を呼んでお話してもらう作戦は成功したようだ。
校長には、次にまた冒険者さんを呼ぶのなら、ランクのある程度高く、信用の置ける人を選ぶようにお願いした。全員が全員、良い人とは限らないのが冒険者、なのだそうだ。クレスさんが言っていた。
今回の事が、子供たちの進路を決める手助けになったなら、嬉しいなぁ。
明日は休みで、今日来てくれた二人に美味しいお店を紹介する予定なんだけれど……。
実は、お店で食べることはあまりして来なかったんだよね。いつも食材を買って、自炊していたから……。
だから、美味しいお店を紹介するのではなくて、美味しい食材を使ってご飯をご馳走しようと思う。
家庭料理なら多分大丈夫。……ふふふ。多分……ね。料理のレベルは、少しだけ成長したのだ。
「ステータス。」
広瀬 千華 23歳 【冒険者 G】
レベル24
HP 1680
MP 360
力 25
体力 70
知能 31
精神 15
敏捷 18
スキル
【料理 2】
【コンビニ経営】
ふふふ……。1しか上がってないって?大丈夫。この街で、私は、ある物を手に入れたのだ!それと組み合わせれば、何とかなるはず!!
……お礼のご飯が、絶望のご飯にならないように、頑張ろう……。
そろそろ、イケメン騎士さんの方も書きたくなってきた……。
もうちょっとしたら、出せるかな……。




