閑話 イケメンチャラ冒険者の挑発
マディラ視点のお話です。
本日二つ目の投稿です。
ずっと笑いながら見ていた。
この二人はこのまま終わるのか、と。
スライムすらも倒せない、薬草を採って満足している異世界の女性と、それを愛おしそうに見つめるタレ目の大男。
まどろっこしいいいいぃぃーーーーー!
人の恋愛って見ているとこんなにヤキモキするものなのかなー!僕はこんなにまどろっこしい恋愛した事ないぞー!?
まぁ、チカちゃんは仕方ないよね!まだ召喚されてからそんなに日が経っていないし、生活も安定していない。まずはこの世界に慣れる為、恋愛とかそっちのけで頑張っているのだろうさ!
でもさーこっちのタレ目は……。
「ヘタレー。」
「……。」
ステーキを食べ終えて、話をして、チカちゃんと別れてからこの大男を馬鹿にする。
言い返しもしないのか。お人好しは良いけれど、側から見ていてイライラするよ。
あいつがチカちゃんに惹かれているってのは、初日にわかった。チカちゃんが号泣した時、オロオロした顔で、背中をさするのを見た時にね。
渓谷では人が落ちて亡くなるなんて日常茶飯事だ。運がなかったと諦める人が大半だ。チカちゃんが落ちた時、もちろん僕も探したけれど……半分は諦めていた。まさかあそこまで取り乱すあいつを見る事になるとは思わなかった。しかも探し出した事にもびっくりした。
あいつに優しくされて、色目を使ったり、無駄に近づいていく女が多い中で、あそこまできちんと距離を保って接する女性は少ない。チカちゃんは素直で真面目な性格なのだろう。だから……。
「僕も良いなって思っているんだよねー。」
「!!」
肩が大げさに跳ねたのを横目で確認する。そんな反応するならさっさとつば付けときゃ良いのに……。
「アイちゃんが行かないなら、僕がもらうよ。良いよね?」
「物みたいに言うな……。」
「でも、何も言う気はないんでしょ?じゃぁ良いじゃんー。」
「彼女は必死に生きている。今は邪魔しない方が良いだろう。」
「ええー。絶対、すぐ隣で支えた方が良いじゃん。……それってさー。」
ビビってるだけでしょ?弱虫。
隣から伸びてくる握りこぶしをバック転で避け、ニヤリと笑ってやる。
「結局さー、拒否される事が怖かったんでしょー?何も言わなければこの距離のまま、たまに顔を見れるもんねー。恩人として?そのポジションは確かに楽だよねー。でもさ、それ以上行かないなら、僕が隣に立ったって良いんじゃない?」
「黙れ。」
「君に止める権限なんてないでしょ?明日にでも僕が声をかけようっと。付き合う事になったら、ちゃんと祝ってよねー?」
「いい加減にしろ!」
「弱虫アイちゃんは何も出来ないもんねー。」
流石に煽りすぎたかなー?でも、それでも君は言わないんでしょ?
この後、街の外で朝日で目が眩しくなるまで模擬戦をした。
僕は模擬戦のつもりだったけれど、あのタレ目の大男は本気で僕を気絶させる気だったかもねー。僕が彼女の元に行けないように。お互いボロボロになったけれど、まぁまぁ楽しかったかな!
それからはずっと一緒に行動している。ランクも同じだし、依頼をこなすのには丁度いいから良いんだけれど……。前は僕が付きまとってたのに、逆になっちゃった。
僕がチカちゃんの元に行こうとすると、一緒に付いて来て、三人で食事をする。
……言う気は無いのに、その愛おしそうな目で見るのはどうなの?
ほんと、いつになったら動くのかなー。この大男は。




