17 せっかくの出会いなんですから、一期一会で終わらせたりしませんよ!
誤字報告、ありがとうございます!助かります!
ショルダーバックとか……恥ずかしい……!
「ここがエンジェ共和国の首都だ。」
「おぉー……。」
あれから三日、冒険者としての基本を学びながら移動し、エンジェ共和国の首都まで来た。主に木で作られた家が並ぶ街は、温かみを感じられる。
街にいる獣人さんたちは、今までの街で見てきたような、一つの種族が多いのではなく、沢山の種族の人が和かに暮らしているようだ。和気藹々とした雰囲気を感じて、やっぱり良い国なんだろうな、と思う。
「ここの冒険者ギルドの場所を教える。採ってきた薬草も納品しよう。」
「はい!」
あの会話以降クレスさんとは、先生と生徒のような感じになっている。教えてもらえるものを、しっかり吸収しようと、学んでいった。マディラさんはたまにクレスさんに代わって教えてくれるが、基本はニコニコと見ているだけだ。そのニコニコがたまに気味悪く感じる時がある。何か企んでいるような……一体何なんだろう。
ギルドに入って、ここに来るまでに摘んできた薬草を納品する。そうそう、魔力回復ポーションの薬草の名は、マポーの葉でしたよ!やっぱりかー、と思いながら摘んだよ!マポーの葉は、マリーゴールドの葉の事だった。タンポポといい、覚えやすくて助かるなー。
薬草採取にはだいぶ慣れた。基本的に街の近くで探すので、そこまで危ない魔物も来ないし、いざとなったら走って逃げている。ちなみに、自力で魔物を倒す事は出来ていない。スライム君に至っては、飼うことが出来ないかと、食べ物をあげてみている。その度にマディラさんには笑われているんだけれど……私は諦めないぞー!
「さて、この首都を軽く案内しよう。」
「はい!」
「あと、前に言っていた、美味しい店もこの街にある。今日の夕飯はそこにしよう。」
「はい!」
美味しいお店でご飯が食べられる事も嬉しかったが、約束を覚えてくれていた事が何よりも嬉しいと思った。……それと同時に、この夕飯をもって、楽しい旅が終わるのだと、なんとなく直感した。
連れて来てもらった食堂は、アットホームな雰囲気で、牛の獣人さんがフライパンを振り、牛のステーキを提供してくれるお店だった。大丈夫なの……?獣人さんは人という分類だから、共食いにはならないの?デリケートな問題かもしれないから、聞けない……。牛の獣人さんはニッコニコしながらフライパンを振っているけれど……。
お肉はとっても柔らかく、ニンニクの効いたソースが蕩けるお肉と絡んで口の中が幸せいっぱいになる。一緒に頼んだサラダは、レモンを使ったドレッシングを使っていて、さっぱりと口をリセットしてくれる。何とも素晴らしい組み合わせだ。
いくらでも食べられそう……!なんて思わず口にしましたよ、ええ。でも、お肉の大きさが半端なくて、一皿でお腹いっぱいです……。調子乗りました、すみません!ニッコニコの牛の獣人さん、もう大丈夫だから!フライパン用意しないで!
食べ終わって、クレスさんたちと一緒にお皿を返しに行く。飲み物を追加で頼んで、もう一度座ってゆっくりと食後のお茶タイムだ。
「一般的な食堂でのマナーも、もう大丈夫みたいだな。」
「はい。」
「ご飯食べるところでの失敗って、どんなだったのー?」
「……。」
「シカトされるー!チカちゃんひどーい!」
言いたくないだけですよー!
その後も、クレスさんとマディラさんとの、ふざけたような言い合いを楽しく聞いたり、冒険者としての仕事の話を聞いたり……。
あっという間に、空が暗くなってしまった。もう、一日が終わる。
「チカ。」
「……はい。」
「今日で基本的な事は伝えられたと思う。」
「はい、ありがとうございました。依頼完了です。ギルドに無事完了した事を知らせます。」
「ああ。また何かあったら指名依頼をしてくれ。」
「……はい。」
ちゃんと返事をするんだ。寂しいと思うのは、自分のわがままだ。こんなに親切にしてくれた人を、困らせるのはダメだ。
だから、ちゃんと笑顔で、お礼を言うんだ。
「本当に、ありがとうございました!」
「……ああ。」
深々とお辞儀をすると、ちょっと間をおいてから返事をくれた。顔を上げてクレスさんの顔をしっかり見ておこう。
クレスさんは微笑んで頷いた。何かあったら遠慮なく指名依頼を出させてもらうんだ。クレスさんが良いって言ってくれたんだもの。この人との出会いを一期一会で終わらせるのは……もったいないよね!
次の日から、私は一人で薬草採取をこなしながら、暮らす場所を探し始めた。毎日しっかり薬草採取をこなせば、宿屋で暮らすことも出来なくはないのだけれど……それだと貯金出来ないからね!
私はいずれ、コンビニ経営のスキルを試してみたいと思っている。そのためにはお金が必要なのだ。
あのスキル、何にしてもまずは先にお金を要求される……。そのお金どこに行っているんだよ!と思うのだが、そう言う事は説明書に書いていないのだ。謎スキルだわぁ……。
それで、店を出すためには、ある程度のお金が最初に要求される。お金を出せないと、警備設定が『弱』になってしまったり、価格設定が異常に高くなって、売れずに破綻……という事になる。
……破綻って、どうなるんだろうね……?
そうならないためにも、まずはお金を貯めないと!だから、出来る事なら宿屋ではなく、アパートのような安く住める場所を探している。
ついでに、クレスさんとマディラさんは、しばらくはエンジェ共和国で依頼をこなすそうで、たまに一緒にご飯を食べに行っている。
二人は言い合いをしながらも、戦闘時のコンビネーションは抜群らしく、冒険者ギルドでもすごい奴らがー!と、噂になっている。それを聞くたびに私はニヤニヤしている。そして変な目で見られている……。
「なーなー!ここはどんな店なんだー?」
「きっとお薬を作るところよ!」
「えー!あんまり楽しくなさそう!」
「キャンディ食べたい……。」
ギルドに薬草を納品した帰り、子供達の楽しそうな声が聞こえて来た。通りを見ると、小学校低学年くらいの子供たちが二人一組で手を繋ぎ列を作って歩いている。一番前と後ろに大人が付いて見ている。
……懐かしいなぁ。私も小学生の時は、無理やり作らされたバディと手を繋いで、学校外を歩いたものだ。
最前列にいた大人は店の前で立ち止まると、ここがどんなお店なのか、どういう仕事をするところなのか、という説明を始めた。子供たちは興味津々で、お店をキョロキョロと見ながら話を聞いている。
私はさりげなくその近くに行って、一緒に話を聞く事にした。
「ここはポーション屋さんです。体力ポーションや魔力ポーション、その他にも解毒薬や胃腸薬、風邪薬などを作り、売っています。」
ポーションに解毒薬まではわかるんだけど……。胃腸薬に風邪薬って……。お薬屋さんってイメージなのかな?
「スキルに調合がある人には向いていますね。」
なるほど、お店の紹介だけでなく、どんな人がこの職に向いているのかまで教えてくれるのか……。学校的なものを考えていたけれど、どちらかと言うと……職業安定所?
「おいらには無いやー。細かい事苦手だしー!」
「私も調合はなーい。……でも興味はあるなー。」
「やっぱり楽しくなさそうー。」
「キャンディ食べたい……。」
さっきからキャンディ食べたいとしか言っていない子がいるんだけど、ちゃんと話聞いているのかな?大丈夫?
「後は、このようなお店で働きたいと言う人は、計算も頑張らないといけませんね。」
「「「「えーーーーー!?」」」」
子供たちの声が重なって、可愛いくて、可笑しい。みんなの耳がピョコピョコと動いていた。
「でもよー、先生たちも計算苦手じゃんかー。」
「そうよそうよー!」
先生と呼ばれた人は困った顔で、そうなのよねー、と言っている。えぇー。先生なのに計算苦手って……。先生達は文系で、理系の先生がいないって事なのかな?そんなに難しい数学が必要なの?
「もう少し、計算が出来る人員が増えたらねー……。寮だし、お給料も良いのに、教えられる人が増えないのよねー。」
先生のそのつぶやきに、私は思わず手を上げていた。
物語的には第二章が始まっているのかな……?でもどこからってハッキリとは決められないんですよね……。
章を決めるのって難しい!




