15 今度遊ぼうね!って話は、早めに予定を組まないと、いつまでもそのままになりますよね!
誤字報告ありがとうございます!
とっても助かります!
大柄で、濃い紺色の髪の男性は、ずっと私を探してくれていたのだろうか……。彼の掠れてしまった声が、私の胸を苦しくする。私からはしっかり確認出来ているのだけれど、目は合わない。
「さぁ、行っておあげ。」
「はい!」
私はクレスさんの元に走った。体力はもう全然なかったけれど、早く大丈夫な姿を見せなくちゃって思ったら、走り出していた。途中でエアーカーテンのようなものを潜った気がした。
「クレスさん!」
「!!……チカ!」
目の前まで走って、クレスさんとしっかり目を合わせる。ちょっとタレ目で優しげな顔は、朝とはだいぶ変わって、草臥れている気がする。
「ご迷惑おかけし……」
「良かった……。」
頭ポンポン頂きました!クレスさんからも近づいてくれて、ちょっとドキっとしたんだけど、頭ポンポンでしたよ!
「……本当に、生きていて良かった。」
「……探してくれて、ありがとうございました。」
「ああ。」
「クエェーー!」
「グリちゃんも、ありがとう!」
「クエッ!」
頭をポンポンされながら、グリちゃんの嘴で背中をグリグリされる。なんだか胸がほわほわする。川に流されて、一人で……きっと緊張していたんだろうな。
「さて、もうよいかえ?」
「あ、お姉さん!」
「……。」
「グエェ……。」
青い髪のお姉さんが近づいて、話しかけた途端にグリちゃんが固まってやばい声を発した。グって発音出来たんだね。
クレスさんも黙ってしまって……どうしたんだろう?あ、助けてもらった事、言わないと!
「クレスさん。この方はタオルを貸してくれたんです。休憩もさせてもらいました。」
「そう……なのか。」
どうしたんだろう?クレスさんの顔から汗が。顔色もなんだか良くない?
「ほっほっほ。別にとって食ったりせぬぞ。我は争いを好まぬ。チカの話を聞かせてもらったら、我が子のせいだとわかった故、そなたを手引きしたまで。」
「……ありがとうございます。」
手引きしてくれた?クレスさんは頭を低く下げてお礼を言った。……もしかして、お姉さんってなんか偉い方だったのかな?
「さて、チカ。」
「はい。」
「また、この渓谷に入ることがあれば、あの家に寄っておくれ。今度はゆっくりと、そなたの世界の話を聞きたいでの。」
「はい!是非寄らせてもらいます!」
艶やかな笑顔で言われて、断れるわけないよね!……っていうか、お話とかほぼ強制みたいなものだったからね!断るなんて許されないでしょ!
それに、言わなければいけないっていう圧力?みたいなのはあったけれど、基本的に優しかったし。ペドリット君可愛かったし、また会いたいし!
「ほほ。じゃぁ、これを渡しておこう。」
お姉さんが渡してくれたのは……青い貝殻?ハマグリのような形と大きさだけど、平べったい。貝殻じゃないのかな?光に反射して、オーロラのような輝きを放っている。綺麗だなぁ。
「そなたの提げているカバンに入れておいたら良い。来たい時にカバンから出せば、ここまで導いてくれよう。」
「わかりました。ありがとうございます!」
私は言われた通り、ショルダーバッグに貝殻を入れた。よし、ちゃんと見えなくなったぞ!
「ではな、チカ。また会おうぞ。」
「はい!お世話になりました!」
緩やかに手を振ってくれたので、私も振り返す。お姉さんが最後にカーテンを閉めるような手振りをすると、一瞬で見えなくなった。おぉ、ファンタジー!
クレスさんとグリちゃんはしばらくしてから動き出した。汗、なかなか多量だ……。
「大丈夫ですか?」
「……チカ、あの方が何か知っているのか?」
「青い髪の綺麗なお姉さんとしか……。」
「……そうか。」
「え、クレスさんは知っているんですか?」
「知らない方が平和だ。うん。」
えぇー!教えてくれないの?
……クレスさんが汗を多量にかき、グリちゃんが固まって変な声で鳴くほどやばい人なのかな?……知らぬが何とか…かな!でも優しかったよ?……たぶん。
「さぁ、急いで渓谷を抜けよう。まだ日が落ちきる前には出られるだろう。」
「はい。グリちゃん、もう一回よろしくね。」
「クエ!」
私はだいぶ西の方へ流されていたようで、道はないけれど、少し頑張れば抜けられるそうだ。今度は絶対に落ちないように、しっかりグリちゃんにしがみついた。
「そういえば、マディラさんは……。」
「あいつは他の人たちについて行った。」
「そうだったんですね。」
「Bランクが二人も抜けると、迷惑になってしまうからな。最初はマディラも上から探していたんだが、どうにも見つからないのと、あまり空を飛ぶと魔物に見つかって呼んでしまう。だからマディラは他の人と先に渓谷を抜けて、俺が残ったんだ。俺のグリフォンの方が足が速いから、魔物に見つかっても逃げ切れる。」
「後でマディラさんにもお礼を言います。他の方達にもご迷惑をかけてしまいました。」
「あれは……仕方がないだろう。」
避けようがなかったって事ですかね!……ほっほっほと笑う艶やかな顔が浮かんだ。
あと、馬のアイリーちゃんよりも足が速いグリちゃん凄い!
その後は、日が落ちる前に渓谷を出ようと黙々と歩いていった。クレスさんとグリちゃんがね!
私はしっかりと!しがみついていましたよ!もうヘロヘロで、しがみつく以外出来ないんだけどね!
不思議と、魔物には遭遇しなかった。きっとあのお姉さんのおかげだろうと、クレスさんが言っていた。
私はまた一人……人かどうかわからないけれど!
この世界で私を知る者が増えた。きっと良い人?だと思う。また渓谷に来たら会いに行こう。あの綺麗な貝殻みたいなのを持って。
「チカちゃーーーーーーん!!」
「アイリーちゃーーーーーーーん!!マディラさーーーーーーーーん。」
「ひどい!僕より、アイリーを呼ぶ声の方が大きい!」
相変わらずノリの良いマディラさんとも合流出来た。渓谷を出てすぐにある、キャンプ場みたいな場所で待ってくれていた。
アイリーちゃんの鬣をゆっくり撫でると、返事はしてくれなかったけれど、尻尾を振ってくれた。相変わらずツンデレさん!でもそこが可愛い!
今はプンスカしているマディラさんに、後でしっかりお礼を言おう。
一緒に渓谷に入った二グループの冒険者さん達も、見つかって良かったって、声をかけてくれた。ありがとうございます!
キャンプ場で一泊して、いざ獣人さんがいる共和国へ!
共和国は国境の壁が無いそうだ。ギベオン王国のような、ながーーーーい壁を作るのって大変そうだものね。その代わりに巨大なアーチがあるんだって!アーチをくぐったら入国したって事になるのかな?誰でもウェルカムな感じが、穏やかな国ってイメージにピッタリだね!
この、目の前に広がるとーーーっても広大な森を抜けたらアーチが見えてくるらしいので、二グループの冒険者さんたちとはここでお別れして、ひとっ走りします。
ええ。もちろんグリちゃんで!
楽しみだけどーーーーーあああああああーーーーーーー!!!速いよーーーーーー!!
……これならきっとすぐに着くね……。
お姉さんに逆らう魔物なんていないですよ!
お姉さんの匂いがしたら、魔物は一目散に逃げます。千華はしばらく、魔物避けに使えますね!