13 キャンプファイヤーって心が踊るし、焚き火って心が落ち着くよね!
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カルセドニーの渓谷まであと半分、と言うところでお昼ご飯になった。草原がサワサワと音を立て、風で雲が流れていく。空の青さと地面の緑が目に優しい。まだ遠くに見える渓谷の山の迫力もすごい。
手頃な岩に座って、街で買ったパンを食べた。中にササミのようなお肉と葉物の野菜が挟んである。かかっているソースはアッサリめで胃もたれはしなさそうだ。パンが固めで、よく噛んでいるとすぐにお腹がいっぱいになった。
食べ終わってお水を飲んでいると、グリちゃんが空を見上げた。釣られるように私も見る。
羽をバッサバサとはためかせ、馬のアイリーちゃんがこちらに向かってきていた。
「本当に来たか……。」
クレスさんの心底嫌そうな呟きに、思わず笑ってしまった。それにしても早かったなー。
「やぁ!お待たせー!」
「待ってない!」
仲良いなー。
「アイリーちゃん!マディラさんも、早かったですね!お疲れ様です!」
「ヒヒィン。」
「えー!アイリーが先なのー!?ひどーい!」
ニコニコしながら言っているので、そんなに気にしてはいないだろう。
羽のある馬のアイリーちゃんは、ちょっとツンデレさんだ。労いの言葉には、そっぽを向いてしまうが、鬣を優しく撫でると、尻尾が嬉しそうに揺れるのだ。かわゆい……。
食後のデザートまでにみんな揃ったので、マーケットで買ったリビラスを食べる。完熟した桃のような甘さと、バナナのようなまったり感がとっても美味しかった!でもちょっとヘビーだね!
「さぁ、あとは麓まで駆け抜けるだけだねー!」
「駆け抜ける……。」
もちろん走りますよねー!グリちゃんと叫びながらズンドコ進んだよ!
日が傾いて、空の三割くらいがオレンジ色になってきた。私たちは予定通りに渓谷の麓に到着した。
渓谷の入り口は、たくさんの人が泊まるみたいで、キャンプ場のようになっていた。渓谷に入るのを朝一番にするために、みんな調整するのだそうだ。
今までの野営とは違って、たくさんの冒険者さんが声をかけてきたり、ルートの確認をしたりしている。その騒がしさが、中学生の頃行った、臨海学校のキャンプを思い出した。みんな真剣な顔をしているのに、失礼かな?
「大丈夫か?」
冒険者さん同士の話し合いも終わったのか、クレスさんが横に座る。いつもグリちゃんに乗るときに、もっと密着するからね!このくらいの距離じゃぁ、もうビックリしませんよ!
グリちゃんに乗って叫んでいた私を心配してくれる。この心遣いがとっても嬉しい。
「はい。そんなに疲れてはいなかったので。……不謹慎かもしれないのですが、楽しそうだなって思って見ていました。」
「そうか。楽しそう、か。」
クレスさんは繰り返して言うと、タレ目な目を細めて微笑む。火に照らされているから、より温かい笑顔に見える気がする。
「そうだな。こんなに大勢の冒険者は見るのも初めてだろう。それに、ここにいるのは皆、腕に自信のある者ばかりだ。」
そう。みんな自信がある、という顔をしているのだ。エネルギッシュって感じ?その雰囲気が楽しそうに見えているのかも。
「この渓谷は、そんなに危ないのですか?」
「ああ。ここは前にも言ったが、魔物の巣窟。この渓谷が大きく伸びていて、国を分けているから戦争が起きない、と言ってもいい。」
この大陸の地図はマリーさんに見せてもらった。四角形を四十五度回転させたような形で、真ん中にこのカルセドニーの渓谷が聳えている。海を渡る以外に、渓谷を通らずに他国に行く事は出来ないんだそうだ。
……きっと、海も魔物がうじゃうじゃいるんだろうなー。
「じゃぁ、冒険者さん達は強者揃いなんですね!」
「ふっ、そうだな。みんな出来る限り安全に通るために協力し合っているんだ。明日は同じ方向へ向かう、あっちの一団と一緒に移動するぞ。」
十人くらいの団体がクレスさんの指差した先にいた。みんな談笑している。そうか、あの人たちと
一緒にいくのかー。
「西で良いんだな?」
「はい!楽しみです。」
私は、これからどの国に向かうのか、決めた。
東はデュモルツ帝国。西はエンジェ共和国。南はグランディディ王国。なのだそうだ。違いは……。
デュモルツ帝国は、近隣の小さな国を従えている国で、その皇帝はかなり欲深いとの話。そんな話聞いたら、関わりたくない。
エンジェ共和国は、色々な種族が住んでいる。人間も獣人も仲良く暮らしていて、穏和な国らしい。
グランディディ王国はギベオン王国と違って、良い政治を行っている国なんだけど、ちょっと閉鎖的。らしい。
獣人気になるよねーーー!一回は見てみたいよねーーー!
国の説明を聞いて、即決でした。西のエンジェ共和国に行きます!モフモフ楽しみーーー!
「そうか。あの国は良いところだ。協力しあって生きている。みんな優しいから、きっと気に入るだろう。」
「そうなんですね!より楽しみになりました!クレスさんは詳しいのですか?」
「何度か足を運んだ程度だがな。ギベオン王国よりは詳しいぞ。」
「じゃぁオススメの美味しいご飯屋さんに、連れて行ってくださいね!」
「ああ。」
「あーあー、なんかここ暑くなーいー?」
マディラさんが、プンスカという音が聞こえてきそうな顔でやって来た。
「僕がー!一生懸命情報集めている間にさー!なんかラブラブしちゃってさー!」
「ら、らぶらぶって……。」
そんなつもりは無かったんだけど……外からはそう見えていたのかな!?恥ずかし!!
「僕もー、チカちゃんともっとお話したいー!」
そう言って、私とクレスさんの間に体をねじ込んで来て座った。なんだか……。
「子供っぽい……。」
「えええーーー!?チカちゃんに子供って言われるのはなんだか心外ー!」
「ええええぇぇ……。」
その後はマディラさんと国の違いの話になった。
……いつの間にか、クレスさんはグリちゃんのところに行ってしまっていた。
早朝、カルセドニー渓谷に足を踏み入れた。
魔物の巣窟って聞いていたから、もっと鬱蒼とした山なのかと思っていたけれど、とても澄んだ空気の綺麗な山だった。川の走っている谷間に沿って作られた道を進んでいる。川を見下ろせるような位置にある道は、川と山の緑とで、なかなか絶景だった。
冒険者さんのパーティ二つと一緒に移動している。私はグリちゃんに乗って移動。みんなは徒歩だ。馬車一台がやっと通れるくらいの細道で、危ないからとグリちゃんに乗せられた。まぁ自信ないからありがたいけどね……。
「グリちゃん、ありがとうね。」
「クエッ!」
細道を進んでいると、ちょいちょい魔物が出てくる。ウサギや猿、ヤマネコっぽいのも出てきた。でも、みんなで協力してあっという間に倒してしまう。
もっとやばそうなのが、うじゃうじゃ出るんだと思ってた。
そんな事を考えていたから、私は油断してしまっていたのだろう。
突然、体がブレた。グリちゃんからズレ落ちる。あ、と思った時には数メートル下の川に向かって落ちていた。
……チカ!!!
上から、名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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