10 カルチャーショックって、海外に行ったことない私には無縁だと思っていました。
誤字報告ありがとうございます!
次の日の朝、部屋の前でクレスさんに挨拶をして、一緒に朝食を食べに行く。
「おはよう。チカ。」
「おはようございます。クレスさん、昨日はありがとうございました。」
「……いや、まぁ、うん。」
あれ?なんか歯切れが悪い?
「チカ、昨日みたいに一人で動くのは、あまり良く無い。出来れば連れがいるのだとわかるように、食器が並んでいる状態で待っていてくれ。俺も注意してから行けば良かったんだけどな……。」
なるほど。クレスさんが席を離れている間に、一人で動いていたから……私一人なんだと思われたのか……。
「すみません、全然気付かなくて……。これからは気をつけます。」
「……ああ。」
もしかして、これって……常識だったのかな?私、常識ない人認定されたかな!?流石のマリー師匠も宿屋の食堂マナーは言ってなかったよ!……もう今更だもんね、次からは気を付けよう。
……結局昨日のおっさん達はどうなったんだろうね。一瞬だけ外が騒がしくなった気もするんだけれど、分からずじまいだ。……分からない方が、平和だよね!
朝食を終えて、服を買いに向かう。クレスさんもこの街に詳しいってわけではないけれど、お店に並ぶ服の材質を見て、どの店が良いかアドバイスをくれた。
一番動きやすそうな服を選んで、スカートからズボンスタイルに変更だ。
見た目だけは、駆け出し冒険者に変身した!
その他に、タオルや下着なんかを数枚買って、私の買い物は終わった。
ちょっと早く終わったので、クレスさんとの待ち合わせ場所で待ちながら、見た目冒険者っぽくなった私は、中身も少し変化してないかな?と、ステータスを見てみることにした。
「ステータス。」
広瀬 千華 23歳 【冒険者 G】
レベル22
HP 1540
MP 330
力 25
体力 70
知能 31
精神 15
敏捷 18
スキル
【料理 1】
【コンビニ経営】
……あ、脱無職!やったーー!最低ランクだけれど、ちゃんと職に就いたよ!
っていうか……レベルめっちゃ上がったーーー!すごい!五歳児卒業した!!あれかな?ヤギの魔物を倒したから?魔道具のおかげだったんだけど、私が倒したことになるんだね!ありがとうございます!師匠!
でも、待って……知能……上がった……?え、前はキリのいいところだったよね……?確か30……。
1か……?たった1しか上がらなかったかーーーー!?レベルは20もあがったのにいいぃぃぃ!
「……大丈夫か?」
はっ!知能の低さに悶絶していたら、クレスさんが来ていた。……お恥ずかしい……。
「ダイジョブデス。」
……知能ってどうやったら上がるんだろうね。勉強?
「クエェェェ!」
「グリちゃーーーん!」
再びグリちゃんに乗って、高速で移動ですよ!乗る前まではこんなに気分が上がっているのにね。乗ったらもう叫ぶのをこらえる苦行ですよ!あぁ……グリちゃんモッフモフ可愛い……。
この先はもう国を出るところまで突っ走る事になるそうだ。国の大きさがちょっと分からないんだけれど、首都のある位置が国の中央なので、南端までは大体三日かかるそう。そこから国境を越えて、どの国にも属さない巨大な渓谷が、東、西、南へと分かれているらしい。
馬車が通る道ではなく、一切補装されていない場所をグリちゃんは走る。揺れるー揺れるー!あああああー!
日が落ちるまでひたすら走り抜け、門は閉まっているので、街を囲む壁の近くで野営をする。
街の周辺には魔物を寄せ付けない為の結界が張ってあるので、街の門が閉まる時間に間に合わず、入れなかったら、街の近くで野営をするのが安全なのだそうだ。マリー師匠が教えてくれた知識だ。
初めての野営だー!キャンプみたいな感じかな?石を組んだり、寝る為のテントを張ったりするのかな?とか思っていた私は、すっかり忘れていましたよ。ええ。
ここは異世界でしたよ。
何あれ?地面に布みたいなのを敷いたと思ったら、そこから火が出てきたよ?薪とか要らないんだね。
魔道具の筒と同じ形状の物から何か出たと思ったら、テントが勝手に組み上がって出てきたよ?頑張って組んだりしないんだね……。
凄いなー。これなら野営も楽ラクだね!
「どうかしたか?」
「いえ……何でもないっス。」
「クエー?」
カルチャーショックが半端ないよ!とりあえず何かお手伝いをしよう。
「お手伝い出来ることはありますか?」
「ああ。じゃぁこれから晩飯を作るから、手伝ってくれるか?」
私はクレスさんの言う通りにして、スープを作る。具材を混ぜるだけで簡単だ。
そのスープとパンという簡単な夕飯を二人で食べる。
グリちゃんにもご飯をあげると、クレスさんはグリちゃんの体を丁寧に梳かしてあげていた。グリちゃんにはまだ数日頑張って貰わないといけない。私もグリちゃんの羽をマッサージした。羽は使っていないんだけど、グリちゃんが気持ちよさそうだから、いっか!
そんな感じで三日、予定通りにこの国の最南端の街に着いた。
「ここがギベオン王国の最南端の街だ。この街を抜けて国境の門を出れば、カルセドニーの渓谷。どの国にも属さない、商人泣かせの魔物の巣窟だ。」
「魔物がいっぱい出るんですか?」
「ああ。だが、冒険者も結構通るから、みんなで協力して倒したりするんだ。」
「へぇー。」
魔物がかなり出てくるなら、国境を越えて商売するのも大変なのかもしれないなー。
「ここで野営をして、明日街に入り、国境を越えよう。」
「はい。」
「あーれー?そこにいるのはー、アイちゃんじゃーん?」
突然、空から声が降ってきた。この周辺に他に人はいないから、その声が私たちに向かっていると言うのはわかる。私は上を向いた。
白い馬が空を飛んでいる。羽をバッサバッサとはためかせ、馬が空を飛んでいた。この世界にはいろんな馬がいるんだなー。
馬さんの上に人が乗っている。夕日に照らされて、顔がはっきりと見えない。何となく、視線が私に向かっているように感じる。
でも、私アイちゃんって人じゃないよ?……アイちゃん……。アイ……ドクレスさん?
私の横を何かが勢いよく通り過ぎた。え?羽のある馬さんがサッと移動して何かを避けたっぽい?速すぎて、何が起こったのかよくわからないんだけど?
「いきなり攻撃とかー、ひどいじゃーん!アイちゃーん!」
「お前が出ると、ロクなことがない。さっさとどっかいけ!」
「出るってー動物扱い?ひーどーいー!」
クレスさんが攻撃したの?でも、敵って感じではないような雰囲気。クレスさんを見ると、渋ーい顔をしていた。
「お知り合いですか?」
「いや、知らない奴だ。」
ほんとかなー?
「お知り合いっていうかー、ちょーお友だちだよー!」
振り返れば、羽のある馬さんは地上に降りていた。馬から降りた自称ちょーお友達さんは笑顔でこちらに歩いてくる。
「はじめましてだね、こげ茶の髪のお嬢さん。僕はマディラ。よろしくねー。」
マディラと名乗った人は、オレンジに近い赤色の髪をした、人懐っこそうな顔の細身のイケメンだった。
イケメンだー!またイケメンだよー!……ただ、ずっと渋い顔をしたクレスさんを見ると……よろしくしない方が良いのかな?
大体ですが、東京から長崎までくらいが、グリちゃんが走った距離です。一日七時間、時速六十キロで走った感じです。すごいな!グリちゃん!