のんびりお店編 1
のんびりお店編、ちょいちょい入れていきます!
誘拐事件?が終わってから、季節が一つ分過ぎた。夏前から、今は秋っぽい感じ。だんだん涼しくなってきて、果物が美味しい季節だ。
今、私の目の前には立派な新築のお店が聳えている。……いえ、聳えてはいないです。こぢんまりとしています。ウソつきましたごめんなさい……。
とうとう……とうとうお店を持てるんだもの!誇大した表現も使いたくなるよ!
誘拐事件の慰謝料的なものをいただいて、その分とカルセドニー渓谷のお姉さんから返してもらったスキルの手数料とを合わせて、結構な額になったのでお店を建てたのだ。
こうしてお店が完成した姿を見ると、ここに至るまでの事を感慨深く思い出すなぁ……。
「え?ダンジョンの側にお店だすか?」
「はい!ギルドの出張所のすぐ近くの土地を買いたいんです!」
「……頭、大丈夫だすか?」
「えぇ……。」
商業ギルドにて、いきなり頭の心配をされました。
心配です!みたいなつぶらな瞳で、バカにしているでしょ!?その瞳に騙されたりしないんだから!
商業ギルドで私の担当になってくれたのは、たぬきの獣人のポンキチさん。ギルドの制服の上から、何故か前掛けを付けている。語尾もちょっと変。……なんだかお金にうるさそうなイメージが湧くけれど、そうじゃ無いと思いたい。お金よりも私の頭の心配してくれているし……。
「ダンジョンの側はとっても危険なんだすよ?わかっているだすか?」
「はい!わかっています!」
「その元気すぎる返事が逆に心配だす……。」
残念なものを見る目でダンジョン近くの危険性を説いてくれたポンキチさん。うん。わかっていますよ。だって……。
「少し前になるだすが、あなたが買おうとしている土地のダンジョンは、魔物が溢れる事件があっただすよ。」
その事件、私いましたからねー!
「大丈夫です!身を守るのは得意なんです!一応冒険者もしています!」
冒険者カードを見せると、それをしっかりと見て……疑いの眼差しを向けられた。
「……あなたがだすか?」
「はい!」
「……冒険者ギルドに確認を取らせていただくだすね。」
「……はい。」
全然信じてくれない!カードも見せたのに!?そんなに頼りなさそうかなぁ。……あ、腰にスライム君と不吉そうな人形さんが付いていたからかな?
ポンキチさんの指示で、弟子っぽい背の小さなたぬきの獣人さんが冒険者ギルドに走って確認に行った。
しばらくして帰ってきた小さいたぬきの獣人さんはコソコソと報告しているようだった。お弟子さん、尻尾がフリフリしていて可愛い……。
「……そうだすか。本当に冒険者だっただすか。」
「嘘つかないですよ……。」
「いや、結構いるんだすよ?嘘ついてお店出そうとする人。そういうのは大体怪しい物を売ろうとしている人だす。」
「そうなんですか……。」
私怪しい物を売るそうって思われたのかな?
怪しい人じゃないか見極めたり、確認したり……商業ギルドの人って結構大変なんだろうな……。
「チカさんの場合は、見た目がすぐ死にそうだから確かめただす。冒険者なら……と思っただすが、ランクは高くないだすね。」
「あぁー……。」
ランク全然上がっていないんだよね……。まぁ薬草採取とお手伝いしかしてないものね。
……これはしっかりと大丈夫な理由を話さないと、許可を貰えなさそうだ。
「ポンキチさん!私が安全にお店を出せる理由をお話しします!ただ、その理由はあまり広めたくはないんです。」
「ふむ……。わかりましただす。そういう相談はいくつか受けた事もあるだす。こちらへどうぞだす。」
ポンキチさんは個室へと案内してくれた。そこには契約書も用意されていて、準備万端な感じだった。
「商いというのは、秘密にしたい事が多くあるだす。この契約書はギルドで作っているものだす。」
「おぉー。」
クレスさんがくれたもの以外の契約書は初めて見た。机の上に置いてある契約書の四隅には、クレスさんがくれた物とは違う紋様が入っている。なんとなーくだけれど、イメージは風っぽい。
契約書は、クレスさんがくれた物と同じように、署名をすると一回浮いてキラキラと光った。
机に降りたのを確認してから、そっと腰にしがみついている人形さんに聞いてみた。
「この契約書、きちんと機能して精霊さんに見てもらえたのかな?」
コクン。
「そっか、ありがとう。」
大丈夫そうだ。たとえギルドとは言え、疑う心は持っておかないとね!私、少しはたくましくなっているんだから!
「これで大丈夫だすな。」
「はい。では、教えますね。私はスキルを持っていて、それが……かくかくしかじか……まるまるもりもり」
「後半何言ってるだす?」
……とまぁ!そんなこんなで、許可が下りて私は新築の店舗の前に立っているのです!
「すごいなぁー!これが私のお店かー!」
「なんだか緊張感が抜けてる気がするだす!これからだすよ!気合入れるだす!」
「そうでした!」
だすだす言うたぬきの獣人のポンキチさん。なんだかんだで仲良くなりました。
私の担当さんでもあるし、仲が良いことに越したことはないよね!
お店の設計の時点から、あーでもない、こーでもない!と文句をいっぱい言われたり、仕入れの相談でどーした、こーした!と愚痴を言われて……あれ?仲良くなったのかな?
「とにかく、お店おめでとうだす。」
「……ありがとうございます!」
「土地代は毎年国に払うだすから、しっかり売り上げ出すだすよ。」
「……はいぃ。」
仲良く……なれたのかなぁ?
問題がちょっとだけあった。
今のままだと、食品しか入ってこない。アールさんにお願いしてあるのは、コッメ、ミーソ、ショーユ、お野菜、それと手に入ったらお魚。うん、完全に飲食店だよね。
だから、街のお店の人に交渉して、商品を数点ずつ置かせてもらうことにした。冒険者さんにとってあったら嬉しいものを……。街で買うよりはちょっと割高でね!
冒険者ギルドで扱っている体力ポーションや魔力ポーションは無いけれど、女性が嬉しいお泊まりセットとか、解体用のナイフが折れちゃった時用サバイバルナイフとか、色々使える!タオルにお鍋!……いや、お鍋は料理にだけ使おう。殴るのに使っても強そうだけれど……。
そんな様々な物を扱う事にした。冒険者さん専用コンビニっぽくなったかな?
ただ、仕入れに問題があった。スキルを使って移動しないで仕入れたいのだけれど、各お店の人と契約を交わすのもどうかなと思って……。あまり多くの人に私のスキルの事を話すのはなんだか怖い。だからといって自分で仕入れに移動していたらお店を毎回閉めなくちゃいけなくなるし、スキルの便利さを活かせない。
悩んでいたところ、ポンキチさんが相談に乗ってくれて……結果、ポンキチさんにお願いする事にした!
商業ギルドに私の欲しい物を集めてもらって、ポンキチさんに渡してある折り畳みコンテナで送ってもらうのだ。
もちろん、誰も見ていない部屋でね!
「すごく使われている感じだす……。でも担当としてはお手伝いするのも大事だす……。んー、やっぱりちょっと不服だす!」
「はっはっはー。」
なんだかんだでパシリっぽいもんね……ごめんねポンキチさん!ギルドにちゃんと手数料は払うから許して!
こうして私のお店は順調に開店準備を進めていったのだった。
そういえば、ポンキチさんのお弟子さんは二人いた。
名前はナノキチ君とピコキチ君だそうだ。
……うん!何も言わないよ!
たぬきの獣人さん達の名前の由来は……わかりますよね?
ピコって言う単位、名前が可愛すぎですよねー。
自分の書きたい事に集中したいので、しばらく感想は止めさせていただきます。
(`・ω・´)




