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新星間戦記CIVILIZATION  作者: RYUJIN
プロローグ
6/20

少年期5

 突然の奇襲により戦場と化したリソラ前線基地は、ジェスが革命軍SA(スレイブ・アーマー)を撃退したことにより落ち着きを取り戻した。

 しかし、破壊されたSA(スレイブ・アーマー)や物資、死亡した人員など被害は甚大であった。

 戦いを終え、オーバードライヴとエーテル消費により慢心創痍となったジェスは、セレナの具合を確認するためにデビッドを探していた。


 しばらく人ごみを掻き分けながらシェルター内部を歩いていると、避難した民間人や士官学校生を誘導していたデビッドを発見した。


「デビッド!!」


「・・・・ジェスか!」


「お前がいるってことはセレナはメディカルセンターに搬送できたってことなんだよな!?」


 ジェスは少し興奮気味でデビッドに詰め寄った。


「・・・無事搬送できた・・・だけど・・」


「だけど・・・・?」


 そういいながらデビッドは視線を伏せた。


「やはり右腕と右目は失うことになるらしい」


「そうか・・・」


 正直怪我の具合から見て、右腕は諦めていたが右目までうしなうことになるなんて・・・。


「あんなところに出てこなかったらセレナは・・!」


「誰も予想してなかったことなんだ、仕方ないよ」


 そう言いながらも二人の顔は暗くなってしまう。

 セレナは今もメディカルセンターの回復ポッドで寝ているのだろう。


 この時代の医療技術は高度である。簡単な怪我や病気はもちろん、手術などが必要なものやかつて不治の病と言われた殆どが機械やナノマシンによる回復促進処置で治療できる。

 しかし、完全に失った四肢や損傷がひどい部位の治療はできないこともある。


「親父に連絡してK.Cメディカル&ヘルスの技師を紹介してもらうよ」


 この時代は再生医療の分野も非常に高度である。

 人工筋肉や皮膚を用いて、言われなければ生身と区別がつかないほど精巧な義手もある。


 たとえ失った目や腕が戻らなくても最新鋭の義手や義眼を駆使すれば、見た目や使用感は失う前とさほど変わらないはずだ。


 ただそれでも生まれ持った自分の体の一部を失うことに変わりはない。


 そしてそれが女性であったら尚更だろう。


「容態は安定しているみたいだから、今日のうちには一般病室に移るみたいだぞ。 ひとまず、俺たちが無事なのも知らせて安心させてやろう 」


 そう言いながらデビットはジェスの肩に手を添えた。


「こうやってみんなが生きていたのはお前が一人戦ったからだ。 みんながお前に感謝している。 誇っていい。 きっとセレナちゃんもそう思っているさ」


「ありがとう・・・」


 デビットの言葉を聞いていたら、少しばかり救われた気がした。


 確かにあのまま革命軍の攻撃を許していたら、更に犠牲者が出ていただろう。


「とにかく今日はもう休め。 こっちは俺に任せといてくれ。 俺も少ししたら戻る。 そして明日二人でセレナちゃんに会いに行こう」


「・・・わかった」


 ジェスはお言葉に甘えて自室に戻ることにした。


 セレナの負傷、そして激しい戦闘が続いてセレナとデビットの安否が確認できた今、一気に疲れが押し寄せて来たからだ。




 自室に戻ったジェスは上着だけ脱いで椅子の背もたれにかけ、そのままベッドにダイブした。


「セレナ、すまない・・・」


 そう独り言ちながら、ジェスは眠りについた。



ーー。



ーーー。



ーーーー。




 翌朝ーー。


 セレナが無事に一般病室に移ったのを確認したジェスたちは二人でセレナの元へ向かった。


 あれからセレナは自分に降りかかった現実を知ってどうなったのか。

 そんな不安がジェスによぎっていた。


 セレナがいる病室の扉の前に到着したジェスは、深く深呼吸してからノックした。


「どうぞ」


 中から声がしたのを確認してデビッドと病室に入る。

 どうやら容態は安定しているようだ。


 中に入ると、そこには右目に眼帯をつけているセレナがいた。

 眼帯をつけているのと綺麗に断面が塞がった右腕以外には目立った外傷はない。

 さすがはメディカルセンターのナノマシン治療技術だ。


「セレナ・・その、すまない。俺がもっとしっかりしていれば」


 セレナの姿を見てやるせなくなったジェスは伏し目がちにそう言った。


「いえ、ジェスはよく戦ってくれました。ジェスが私たちを守ってくれなかったら今頃もっと悲惨なことになっていたでしょう。寧ろ右腕と右目くらいで済んだのを喜ぶべきです」


「しかし、それはっ・・・」


「それに、今回の出来事は一つのチャンスと思っています」


 言いかけたジェスを遮った言葉は意外な内容だった。


「チャンス? 」


「はい・・・」


 そして、セレナはしっかりした眼差しで二人を見ながら口を開いた。


「ジェスのお父様に連絡しました」


「親父に?」


「はい・・・」


 ジェスからセレナの義手と義眼を作ってもらうよう頼もうとしたが、どうやら先に本人から声をかけたらしい。


「私はジェスのお父様に戦闘義手と義眼をお願いしました」


「なんだって!?」


 それは驚きの話だった。


 女性であるセレナが完全に違和感のない義手や義眼を望むならまだしも、戦闘義手や義眼を望むとは思わなかった。


 戦闘義手とはその名の通り戦闘用の義手である。


 SA(スレイブ・アーマー)の技術を応用して強力な力や機能を盛り込んだものだが、見た目や使い心地がかつての自分のものから大きく離れる。


 義眼も片方の目に色を合わせるという具合には行かなくなるはずだ。


「どうして・・・」


 そういうジェスにしっかりと片目の視線を合わせたセレナには、どこか覚悟の光が見えていた。


「私たちはこの戦いを生き抜いて平和な世界になるまでみんなで生き残ると誓い合いました」


 それを聞いてジェスとデビッドとジェスは頷く。


「ですが、わたしもずっと二人に守ってもらうわけにはいかないのです」


「共に信頼しあって、守り会える。そんな仲間であるからこそ、私はジェス達に並び合える存在になり得ると思うのです」


「・・・・・・」


 まさか、セレナがそこまでの気持ちを持っているとは思わなかった。


 セレナは宇宙船を操縦する技術的にこそあるが、自分自身の戦闘力がないことに負い目を感じていた・・・。


 それがジェスにとっては衝撃だった。


 だが、そこまでの気持ちがある以上可能な限り力になりたいという気持ちも確かにあった。

 

 だからこそ・・・。


「セレナの気持ちはわかった。K.Cインダストリーが手掛けてる新造艦の装甲材に使うものを義手の骨格につかったらかなりの強度があるはずた」


「K.Cインダストリーの技術を惜しみなく駆使して満足のいくものを必ず提供しよう」


「ありがとうございます・・ですけど一つ残念なこともあるんです」


「・・・・?」


「義手と義眼の作製、そしてそれらの調整作業のためにすぐにでも地球に帰らないといけません」


「新造艦の試験運用にも、おそらく同行できないと思います」


「そうか・・・」


 確かに義手や義眼を作るなら、機能を失って間もないはやい時期に取り掛かるほうがいい。


 戦闘用として使いこなすなら尚のこと早い方がいいだろう。


 セレナと離れるのは寂しいが、デビッドとも離れるのだからそれも仕方ないことだろう。


「ちなみに、地球に立つのはいつなんだ?」


「・・・明後日になります」


「そりゃまた急な話だな」


 すかさずデビッドがそう呟いた。


「なるべく早いほうがいいので・・・」


「本当に残念ですけど、ジェスも新造艦の試験運用で地球のK.Cインダストリー造船ドックに用事はあるでしょうから会える機会はあるはずです」


「そうだな」


 そういいながら心ばかりか明るい表情のセレナを見てジェスは少し安心した。


「結局おれはひとりってわけかっ」


そう言いながらデビッドは苦笑いをした。


「まあ、そう言わないでくださいデビッド、きっと会えるチャンスはありますし通信もできます。お互い近況を伝え合いながら頑張りましょう」


「そうだな!」


 二人のやりとりを見たジェスは、今回三人が生き残ったことが本当に不幸中の幸いと思った。


「みんな別の道を歩むことになる・・けど俺たちは昔から変わらない約束がある」


 セレナがそう言うと、三人は視線を交わし合って頷いた。


「この戦争の日々を駆け抜けて、必ず三人とも生き残って平和な世の中になるのを迎えましょう!」


 そういいながらセレナは片手を差し出す。


 それに残りの二人が手を重ねた。


「かならず戦いで活躍して生き残るぞ!」


「「「おうっ!」」」


 デビッドの言葉に合わせて三人は掛け声を挙げた。


 この日、再び三人はこれからの行き先を誓い合った。


 そして、セレナは一足先に地球へと旅立った。


 そして数ヶ月が過ぎ・・・。

 ジェス達二人もそれぞれの進路へと歩み出した。


 動かない戦局の中でも、三人はそれぞれの役割を果たそうとしていた。


 しかし、このリソラ強襲をきっかけとし、更にはその後に重なる偶然により・・・。


戦争の流れは大きく変わることとなる。









仕事が立て込み更新が遅れましたが、引き続きプロローグは続いていきます。

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