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新星間戦記CIVILIZATION  作者: RYUJIN
第一章 地球圏奪還編
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シルバーフォース

 西暦5218年3月・・・。


 地球連合国家へ宣戦布告した太陽系統一帝国は地球へと強襲作戦を行った。


 地球連合国家の首都がある地球を中心に半径一千万キロメートルの範囲を地球圏と言い、地球連合国家にとって政治や産業的に最も重要な役割を担っている。


 太陽系統一帝国は地球圏の一番外縁である軍事、民間船の補給拠点であるアーセナル宇宙港を皮切りに月の衛星軌道まで迫っていた。


 もしこのまま月にまで侵略が及んだ場合は地球連合国家の国力をほとんど失う事になり、事実上の敗戦となってしまう。


 とはいえ地球連合国家第二の勢力圏である月面には豊富なグラビディウム資源と大気のないことから強力な対宙砲台があり、防衛能力は非常に高い。


 また、月面駐留艦隊が進宙し、月衛星軌道に展開していた。


 火星側勢力が月に展開した艦船は二個艦隊五万隻に及び、地球側の防衛艦隊は二万五千隻と半数であったが、月を背後に防衛戦を行う地球側に地の利があり、双方睨み合いが続いていた。


 これに対し地球連合国家は火星勢力撃退の為、地球駐留艦隊の進宙準備を進めていた。


 未曾有の緊急事態にジェス達新造艦クルーの元へも軍から招集があった為、皆乗船を完了して指示を待っていた。


 クルー達にとっても、ユーリアシスが搭乗する機動戦艦アマテラスへの奇襲を含めたこれまでの事態は衝撃的であり、船橋(ブリッジ)も緊張した空気で満たされていた。


 ジェスがリアルタイムで入る戦況に動揺していた所に通信が入った。


 その通信相手を確認したジェスは目を見開いた。


「久しぶりであるな、ジェス・ディーン」


「ユーリアシスで・・・陛下!」


 ユーリアシスの皇王即位前から知るジェスは、つい殿下と言いそうになり、すぐに訂正した。


「ご無事でしたか、陛下」


「間一髪、という感じであったが・・な」


 普段現人神のような扱いであるユーリアシスであったが、K.Cゼネラルグループの御曹司であり、自身の数ある戦果によって成り上がったジェスはユーリアシスとも交流があった。


 そんなジェスにとっても機動戦艦アマテラスに対する直接の襲撃は衝撃的であった。


「此度の火星勢力による襲撃と宣戦布告については皆周知であると思う」


「そして、現状の戦局も非常に不利な状況である」


 ユーリアシスはそう言いながら目を伏せる。


「ついては地球に駐留する戦力も月の防衛に投入することとした」


「そこでジェス・・・貴殿の試験運用する『機動戦艦シルフィード』及び試験量産艦『機動戦艦アイリス(ツヴァイ)』も戦線に向かってほしいのだ」


 それを聞いてジェスは驚きを隠せなかった。


「ですがアイリス(ツヴァイ)はともかく、機動戦艦シルフィードは最終調整の段階です・・まだ実用に足るかどうかは・・・」


 現在試験運用している機動戦艦シルフィードは暗黒物質吸収発電炉(エーテル・リアクター)から発生する大電力を調整するレギュレーターの調整が未完である。


 その問題を解決しなければ進宙は難しい状態であった。


「それについては余の艦(アマテラス)に臨時で乗艦していたクラリス技師を向かわせている」


「間もなくそちらへ到着するであろう」


 クラリス技師は機動戦艦シルフィード開発に携わっていた地球連合国家において最高の頭脳を誇るといわれている女性技術者である。


 彼女が戻ってくるのであればあるいは実現可能なのかもしれない。


 そんな話をしていた矢先、船橋(ブリッジ)のエレベーターへ通じる通路のゲートが開いて一人の少女が入ってきた。


 彼女はセレナやマープルたちよりも若干身長が低く、前髪の左右は猫の耳のように一度山なりになって頬の横から肩口まで伸びており、後ろ髪もきれいなダークブランのセミロングヘアであった。


 クリッとした大きな瞳はルビーのような赤色で長いまつげが影を落としている。


 そんな美少女の顔立ちとは違って服装はショートパンツ丈の作業用ツナギに黒のニーハイといった装いで、ハイカットの安全ブーツを履いている。


「クラリス・レーゾンデートル国家軍部筆頭技師、只今乗艦致しましたのです!」


 そういいながらクラリスと名乗る少女はビシッと敬礼をした。


 クラリスは元々火星で生まれ育ち、革命軍の軍事技術者であった母と共に10歳の時にリソラへ亡命後地球連合国家へ移民した。


 天才技術者であった母は火星に居た時から過酷な生活環境により病弱で、その後地球で亡くなったがその娘であるクラリスも天才であった。


 母親が亡くなった後は連合国家がクラリスを保護し、軍の士官学校に入ったがその際にグラビディウム結晶体レンズの理論を確立。


 それに目を付けた連合国家と光学兵器開発をしていたレグレックスという民間企業が目を付けてクラリスを引き抜いた。


 そして、近代光学式兵器で最も威力が高いとされる結晶体レーザーを開発したことにより19歳という若さながら連合国家軍部筆頭技師の立場を確立していた。


 クラリスは機動戦艦シルフィードの開発にも途中から携わり、その開発速度を速める一助となった。


「クラリス技師、到着しましたか」


「はい、無事機動戦艦シルフィードに到着したのです!」


 考えれば月面で艦隊が睨み合いをしている状態で単身シャトルで地球に降りてきたのだ。


 かなり危ない橋を渡ったのであろう。


「クラリス技師よ、余の艦でそなたに話をした通り機動戦艦シルフィード実践投入の為の手助けをしてほしい」


「御意なのです!」


 そう言うとクラリスは深々とお辞儀をした。


 皇王陛下に対する最上位礼である。


「して、クラリスよ。機動戦艦シルフィードが実践投入できるようになるにはどれくらい必要か。戦局が良くない故、到着早々申し訳ないが急ぎ取り掛かっていただきたい」


 ユーリアシスの言葉を聞いたクラリスが自身の視界に資料を投影しているのか、少し思案して答えた。


「遅くても半日あれば問題ないと思うのです!」


 現状最終段階で停滞している問題を皇王陛下の前で言い切るのだ。さすがは連行国家最高の技術者と言ったところである。


「あいわかった。そなたに期待しているぞ」


「そしてジェスよ。そなたは艦隊の進宙準備を進めてほしい」


「そなたのこれまでの活躍と能力、そして現在開発している艦隊の能力も承知している」


「ユーリアシス・ミリフュージアの名においてジェス・ディーン、そなたを現時刻を以て大将とする」


「そなたの運用している艦隊は連合国家宇宙軍において十三番目の艦隊として地球圏奪還へ向け動いてほしい」


「無論、これまで通り艦隊については完全に軍属とはせず、あくまで民間主体の独立艦隊として動いてもらっても構わない」


「そなたの開発する機動戦艦シルフィードもアイリス(ツヴァイ)も確か船体は銀色であったな・・・・」


「では連合国家宇宙軍第十三独立艦隊・・・シルバーフォース(銀の艦隊)と名付けよう」


「シルバーフォース・・・・」


「ジェス・ディーン大将・・・・そなたに地球圏の命運が架かっている。厳しい戦いになるが・・・期待しているぞ」


 そういいながらユーリアシスは微笑んだ・・・。



 その他細かな伝達が続いた後、ユーリアシスとの通信は切れた。


 そして、シルバーフォース各艦は慌ただしく進宙の準備を進めた。


 機動戦艦シルフィードについては、驚くことにクラリスにより結局四時間程度で本当にレギュレーターの問題を解決することができた。


「・・・まさか、本当にやり遂げるとは・・」


「ジェスさんっ!クラリスを侮ってはいけないのです!クラリスは天才なのです!」


 そういいながらクラリスはつつましい胸を張って威張った。


「そうだったな、クラリス・・・助かったよ」


 そういいながらジェスは無意識にクラリスの頭を撫でてしまう。


 どうにもクラリスの小動物のような見た目がそのようにさせてしまったようだ。


「えへへ、褒められたのです!」


 クラリスのふにゃっとした顔を見る限り、まんざらではないらしい。


 こんな様子で天才なのだから驚きだ。


「セレナ、進宙できるアイリス(ツヴァイ)は結局何隻になる」


「・・・・・はい、シルバーフォース全艦で二万隻です」


 そういうセレナの目は何故かジト目であった。


「よし、十分だ・・・」


「それにしても月・・か、月と言えば第二艦隊が駐留しているな」


「はい、そうですね」


「となると・・・・デビッドが指揮しているのか・・・」


「久しぶりの再会が戦場となるとは・・・な」


 そう言いながらジェスは船橋(ブリッジ)にライブ投影されている月の映像を見る。


 そこにはこれから激しい戦いになると予想される無数の艦による群れが映っていた。














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