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新星間戦記CIVILIZATION  作者: RYUJIN
プロローグ
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10/20

動き出す暗躍

 イリアスとマープルが加わった時期から数か月後・・・。

 地球連合国家領宙域の外縁部にて皇王専用艦機動戦艦アマテラスが率いる直属艦隊である連合宇宙軍第一艦隊が御前軍事演習を行っていた。


 この艦隊は全部で十二ある連合国家宇宙軍艦隊のうちの一番艦隊であり、ユーリアシス皇王が搭乗する連合国家宇宙軍総旗艦機動戦艦アマテラスの護衛を行う艦隊である。


 その所属艦船はおよそ五千隻でこれは連合宇宙軍の一個艦隊の標準である二万隻程度に比べると非常に少ない数である。


 というのも現状停戦状態である以上、嵩み続ける軍費の積極的な削減をユーリアシス自身が訴えているからである。


 その構成している艦も巡洋艦ロードランナーという大戦初期から使われている艦船に近代化艤装を行ったものが主である。


 とはいえ、単独で相対超光速度航法(跳躍)を用いない通常の民間武装船はせいぜい二百から三百メートル程度の大きさであり、近代化艤装を行ったロードランナー一隻にすら毛ほどのダメージを与えることも不可能である。


 尤も、艦隊戦を行わないならはっきり言えば五千隻でも過剰といえるが。


 その艦隊の中心に座する機動戦艦アマテラスの艦橋(ブリッジ)は通常の軍用艦船とは異なり、三階層ほどのフロアがある。


 それらが劇場の様に上の階層へ行くに従って斜めに控えた様な構造になって、どこからでも船橋(ブリッジ)全体を見渡せる様になっている。


 そして、一番上の階層は和風と呼ばれる建築様式でも特に格式高い宗教的なデザインの柱と屋根をあつらえており、一段高くなった床には畳が敷かれ中心にユーリアシスが座している。


 ユーリアシスは傍に侍従が控えた状態で生花を嗜んでいた。


「グローリアス。訓練宙域へはあどどれくらいになる」


「ロードランナーの速力はあまり速くないので。何事もなければあと小一時間かと」


「ならば、それまでにこれも完成させるとしよう」


「生花ですか。本当にお好きで御座いますな」


「なるほど花というのは面白いものでな。同じ種類の花を用いても二つとして同じものはできぬ。それでいていずれ枯れるもので儚い」


「諸行無常とは正に言い得て妙であり、余のこれからの治世についても考えさせられる」


「そしていてなにより華やかだ。どうか、そなたにも一つ誂えようではないか」


「陛下から下賜されるのであれば喜んで頂戴致します」


「よかろう。そなたの執務室に合う様なものを後で持たせよう」


「ありがたき幸せ」


 そんなやり取りが続きながら、航行は続く。


 全天球スクリーンには多数の巡洋艦ロードランナーが整列していた。


 五千隻とはいえその姿は壮観である。


 このまましばらく続くであろう慣性航行の時間に演習の内容を再度確認しようとグローリアスはユーリアシスの前から辞しようと思った矢先、艦橋(ブリッジ)に動きがあった。


「グローリアス長官! 艦隊左舷側方に重力反応! 距離二万五千! 球体半径五千キロです!」


 グローリアスはまた若い皇王を補佐する宰相的な立ち位置であり皇王に委任された軍の最高権者であり、停戦後に各自治政府で設立した連合宇宙局長官でもある。


 第一艦隊において戦略に疎いユーリアシスの代わりに軍を指揮するのは当然の流れである。


 オペレーターは自然にグローリアスへと指示を仰いだ。


「球体半径五千キロだと!?一個艦隊クラスの相対超光速度航法(跳躍)か!?」


 だが、停戦協定によって軍用艦船が連合宇宙局の許可なく相対超光速度航法(跳躍)を使うことは出来ないはずである。


 であるが、現実として起こってる重力反応は相対超光速度航法(跳躍)以外は有り得ない。


 ユーリアシスは仕掛かりの生花を侍従に渡すと近くに浮遊していた専用座席をナノマシンによる思考通信で呼び寄せて腰掛けた。


 この座席に使われているシェルは表面が漆と金箔で化粧された優美なものである。


「対象、間も無く物質化(マテリアライズ)します!」


 その美しい双眸で件の左舷を眺めると、映る宇宙空間が歪んだ様に見えると同時に赤い鋭い光を放ちながら次々と艦影が物質化(マテリアライズ)した。


 その艦影は光学的な差異がなければ赤色の艦船であり、かつての革命軍の旗色である。


 次々物質化(マテリアライズ)する艦船は一万五千隻にもなろうとしていた。


「艦籍識別!!アンノウン!フレンドリーコール反応なし!軍用艦の艦隊です!」


 オペレーターが言い放った直後、目の前を無数の光条が横切り、前方に映る自軍の艦が多数爆散した。


「て、敵艦による左舷からの艦砲射撃です!!自軍百五十二隻轟沈!尚も増加中です!!」


 近代艦隊戦において軍用艦船は幾重もの対策を用いて敵艦からの砲撃を防ぐ。


 その一番始まりとなるのは、近代軍用艦船に標準装備されている『EBシールド』である。


 EBシールドは船体に装備されたシールド展開器により船体の周囲の任意方向に展開できる。


 艦船を完全に包むようにもできるし、一定方向に盾のように展開することもできる。


 展開面積が小さいほど強固なシールドを省電力で展開でき、あらゆる物理的な攻撃をその耐久力に応じて防ぐことができる。


 敵砲撃に被弾するほど展開出力が下がるが、それらは即座に回復される。


 しかし回復力を上回るほど連続的な被弾をするとシールド耐久力を超えて敵艦砲が貫通し、船体に被弾する。


 また、自身が砲撃する際は射線上のEBシールドを解除しないといけない。


 この段階になって続いて船体を防御するのが『重力式跳弾装甲』である。


 これは装甲表面に張り巡らされたグラビディウム装甲膜により、およそ入射角45度以上で命中した砲撃をほぼ完全に弾く能力を持つ。


 その特徴により、重力式跳弾装甲は敵の砲撃が装甲面に対して垂直に命中するほど被弾の影響が大きくなる。


 そして最後は艦船自体の装甲によって防御するのだ。


 つまりは軍用の敵艦を沈めるには、EBシールドを突破しうる出力の艦砲を連続して適切な角度で命中させる必要があるのだ。


 また、艦船の構造上もっとも攻撃力のある砲撃ができるのは艦船の前方方向であるため、攻撃対象に対して艦首を向けることを基本とする。


 つまるところ、艦隊戦において取られるポピュラーな兵法は物量によるロングレンジ攻撃であり、いかに敵の側面を取りながら艦首を向けることができるかどうかを重要とする。


 艦隊側面に突如物質化(マテリアライズ)した敵艦隊からの攻撃は、EBシールドを展開する間を与えられずに行われ一次攻撃でかなりの自軍艦船が被弾・轟沈する結果となったのだ。


 相対超光速度航法(跳躍)の目的地状況など通常は知り得ないがためにそれが作為的なのか偶然かはわからないが、少なくとも非常に不利な状況であることは変わらない。


「グローリアス長官!敵艦への砲撃許可を!」


 不幸中の幸かここには皇王も連合宇宙局長官もいる。

 砲撃許可は現場で即座に下された。


「数も状況もあまりに不利だ。ここに来て数が仇となるとは・・・」


 思わず爪を噛むグローリアスであるが、一番守るべきは目の前に座している皇王ユーリアシスである。


「本艦隊は陛下の座するアマテラスの離脱を最優先とし、緊急相対超光速度航法(跳躍)を行う!目的地を月面衛星軌道に設定!月面方面防衛に就く第二艦隊へ合流の通達をせよ!」


「わかりました。本艦隊は緊急相対超光速度航法(跳躍)の準備を行います。目標月面衛星軌道、大通信衛星ダリウスへ接続開始!賢者の匣による座標演算を開始します」


「・・・・なんとっ!?」


 グローリアスの指示により相対超光速度航法(跳躍)の準備をしていた操舵手(ナビゲーター)が困惑した声を上げた。


「どうしたというのだ!?」


「大通信衛星ダリウスへの接続は問題ありませんがダリウスの座標演算システム(賢者の匣)からの応答がありません!」


「なんだと!?」


 太古の昔から、宇宙空間であらゆるものが光速度を突破するには無限にエネルギーが必要な為不可能であることは科学的な不変の常識である。


 現在用いられている相対超光速度航法(跳躍)と呼ばれている航法は通常宇宙空間における出発地点と到着地点を設定し、出発地点から通常宇宙空間よりも圧縮された(空間的な密度が高い高位空間)である亜空間を経由してある程度の速度で航行し、到着地点に関連付けられた地点から通常宇宙空間に再度物質化(マテリアライズ)することにより通常宇宙空間側の観測者から見た移動距離と所要時間の関係上、すなわち理論上の光速突破を実現することにより長距離の移動を可能にする技術である。


 現在通常宇宙空間側の観測者から見た相対的な理論速度で人類が出せる最速の速度が光速の100万倍とされている。


 しかし、現在の技術で亜空間を航行する船体および乗員へ影響が考えにくい最長の航行可能時間が1時間程度とされている為、一度の相対超光速度航法(跳躍)で移動できる最大距離は100光年強程度とされている。


 また、通常宇宙空間上の座標と亜空間上の座標は地球を原点とした座標系で計算されるが簡単に言えば現在位置の座標から三次元的に仮定すればX,Y,Zをいくら足し引きするという形で計算される。


 本当はそんな単純な計算で求めるものではない為、相対超光速度航法(跳躍)には高度な座標計算が必要で専用の演算システムが必要である。


 現在その高度座標計算をすることが可能な唯一の設備が、惑星リソラ衛星軌道上で全宇宙の通信の大半を処理する大通信衛星『ダリウス』にある、人類史上最高処理速度を誇る生体コンピューター『賢者の匣』である。


 これは一基で軍用艦船一隻の制御コンピューター相当の処理速度を持ち、独立自立思考が可能な生体コンピューターArtifical Nerve Processing Unit 略して『ANPU』をコアとして二万八千基集め、それによる高度並列処理演算をすることを可能にしたスーパーコンピューターである。


 これにより相対超光速度航法(跳躍)は、大通信衛星ダリウスと通信を行い高度座標演算を肩代わりしてもらうことで初めて可能となる技術である。


 その高度座標演算を行うことができないということは、任意の地点への相対超光速度航法(跳躍)による戦線離脱が不可能ということである。


「しかし!現に目の前にいる敵艦は相対超光速度航法(跳躍)で奇襲してきたではないか!」


 高度座標演算を行うのは敵艦隊も同じであり、こちらが出来ないのであれば相手もできないと考えるグローリアスの発言は尤もである。


「大通信衛星ダリウスの代理演算の接続を妨害してきているのか・・・・もしくは賢者の匣そのものを機能不全にした上で何らかの方法で相手は独自に演算が可能なのか・・・」


 いずれにしても最速で戦線を離脱しないといけない事実は変わらない。


「敵艦隊からの砲撃依然続いています! 自艦隊轟沈数五百を突破! 本艦EBシールドも長くはもちません!」


「奇襲を受けている圧倒的不利状態である今は相対超光速度航法(跳躍)以外の離脱方法は考えられない・・・」


 そういいながらグローリアスは顎に手を当てて考え込む。


 そうしながらも次々とスクリーンに映る艦船が爆散していく・・・。


「・・・・確実に決まっている座標を目的地として現在位置との差分を演算するのであればアマテラスのANPUでも処理可能か」


 一縷の望みをかけてグローリアスが操舵手(ナビゲーター)に問いかける。


「・・・・本艦のみであれば時間をかければ演算も不可能ではないかと」


「必要な時間はいかほどか」


「・・・・・試みたことが無いので何とも言えませんが・・・三十分程度は見ていただきたく・・」


「陛下の身がかかっている。二十分で処理してくれ」


「わ・・・わかりました。本艦の演算処理を回せるだけ回します」


「到着地点を地球衛星軌道へ変更! 残存艦数の内千隻を殿として取舵九十度回頭!残りは本艦を防御する陣形を維持しうる最大戦速で直進! 敵艦隊と距離を置きながら各自跳躍演算! アマテラスが亜空間進入完了後に各艦跳躍の上当宙域より離脱する!」


 矢継ぎ早に指示を出した後に眼前で繰り広げられる激しい砲撃を眺めながらグローリアスは独り言ちた。


「・・・・いよいよ・・・か」




〜設定資料〜


連合国家宇宙軍量産汎用型巡洋艦『ロードランナー』

地球連合国家宇宙軍で標準採用されている汎用型巡洋艦で、大戦初期からおよそ70年以上も現役で使用されている艦船である。

EBシールド等の近代兵装が搭載されていなかったが、順次近代化改修を行いながら再使用されている。

主な設計は当初の連合国家宇宙軍の技術部にて行われていたが、大戦長期化による供給力不足により使用部品の多くをK.CインダストリーがOEM生産している。

このことがK.Cゼネラルグループ発展の大きな一助となったと言われている。



スペック

連合国家宇宙軍ロードランナー級量産汎用型巡洋艦『ロードランナー』

型式UN-RN01C

全長2350m

全高520m

全幅590m

満載排水量 6,246Mt

乗員 380名

初期起動機関 単発式対消滅機関

巡航機関 双発式グラビディウム機関

跳躍航法機関 アンチクァンタム亜空間機関

巡航機関定格出力 1,150,000Gw

電源 イ型液化グラビディウム電池2基

装甲 ハイチタニウム跳弾装甲+EBバリアシールド(近代化改修後)

兵装

主砲 K.Cウェポンシステムズ製荷電粒子砲2門

対機動兵器用短距離迎撃レーザー50門

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