思考行方不明 及 救済消失
「くたばれや、ジジイぃいいい!」
「うるせぇよ、青臭ぇガキがぁあああ!」
両足を踏ん張り互いの拳を受けとめた格好のまま青筋をたてて言い合う二人。
「おお、怖っ。学年主任ってのはどーも暑苦しいねぇ」
場外観戦している鶴尾先生が言った。
「あはは・・・」
(いや・・・のんきなこといってる場合じゃ無いですよ~!!!)
冷や汗をかきながら思っていたが言えない。しかし、俺はあることを思いだした。
(あれ、月見先生は・・・どこに?)
ぐるりと探すと、
「わお、りーおー!お腹すいたからお菓子貰うよ~」
窓横に並べられた教師専用の個人机の引き出しから一袋失敬する。当の本人は
「あぁ?勝手に取れや!おら、邪魔だボケ!」
後ろから拳を振り上げた他学年の先生を軽々と投げ飛ばす。
(いやいや、お菓子じゃなくて止めてくださいよ!)
内心シャウト・・・
そのまま、投げ飛ばされた教師をシャガミ避け、フラりと倒れ込むオジサン教師を後方に下がりつつ襟首を掴み
「いいかんじにヨロシク!」
と伸びきったミイラじいさんを戦乱の中に投じる、いや、逆輸出と言うべきか・・・・・
(なんでわざわざ輸出しちゃうんですかぁあああああああああああああ!)
俺は頭を抱えた。
「はじめ」
不意に頭上から声がする。見上げると、谷切がいた。
心配そうに見つめてくる。
「俺・・・無理かも、止められないや・・・」
半泣き笑いの顔をしながら言った。酷い顔だったろう・・・それでも、谷切は
「大丈夫だって、止められるさ」
にこりと微笑む。
神か・・・・お前は・・・内心拝みかけたが、
「あ、でも、生徒なら行けるけど、これはちょっと・・・」
(俺がお前を崇拝しかけた心を返してくれ!!!)