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龍眼の魔女3

<神城有紀の視点>

体中がびりびりする、顔も潰れちゃってる。

魔女は被弾することが滅多にないために体への()()()()()()()()()

不老不死の時点で痛覚なんて要らないと思うんだけど、なんで痛覚が残ってしまったのか。そのせいで防御しきれない攻撃はダメージと共に強烈な痛みを伴う。

勿論ダメージは回復するし、痛みもなくなるけども、回復するまではズキズキと痛むわけだ。

でもボクが受けたダメージはその「痛み」を感じる余裕もないぐらいの大きさだ。痛すぎて感じない、そんな感じか。

…て思ったらじわじわ回復してきた。

不老不死というのは別に「ただ死なない」という訳じゃなくて、こうやって復元される。魔女として覚醒した時の体に戻ろうとする力が働くから負った怪我も戻ろうとする、老いた歳も戻ろうとする。

痛い…痛すぎて何も感じなかったのに、回復するにつれ痛みが出てくる。

痛い!!!!痛いよ!!!

めちゃくちゃ泣きたくなるけど、ボクの体はまだ動かない。

でも、そんな悶絶するときに「有紀をパートナーに」というワードが入ってきた。

エイリーがとんでもないことを言ってるのは分かった。

ボク自身は龍眼の綽名を手放すのは構わない、と思っていた。

勿論これは自分のアイデンティティではあるけども、それより大事な者が出来たわけだから、そのためなら別に綽名なんて捨てても良かった。

けど、この勝負に負けたら修司も彼の意思と関係なく翡翠の魔女のクランに入るハメになる。

それはダメだ…。

立たなきゃいけないけど、立っても勝ち目がない。

龍眼は魔力の流れを見る眼だから他の魔女よりもより鮮明に翡翠の魔女の魔術を見ることが出来るし、まだまだ余力があるのもボクは理解してしまった。


「良いの?それで。」

「うん、ボクはボクが修司を守るんだって思ってたし、そうやって来たけども…。それは傲慢な考えだったよ。ボクじゃ翡翠の魔女に対抗する術がない。」

「でも、それで交代してもいいのかな?キミが私の力を思い出せばまだ勝てるよ。」

「そうだったね、でも…。今はまだボクには扱いきれてないんだよ。それ、分かってるでしょう?」

「ごめん、意地悪言ってしまったね。確かにキミの今の全力じゃ、あの魔女には届かないと思う、どうやっても。」

「…だから、キミに頼むよ。ボクの代わりに。」

「それは構わないけど。うーん、今キミの代わりに表に出たら、しばらく戻れないよ?」

暗闇の中からもう一人のボクが現れる。

この子が本来の人格、龍眼の魔女だ。

ボクはこの子に託す。

「勿論、私としては、キミが私の力を使いこなせたときにはキミをベースにして融合したいんだけどね。でも、今回の入れ替わりは下位の人格であるキミの精神が磨耗してるから、元に戻るまでは私が表から下がれないんだよ。」

言ってることはわかる。

今のボクは自分の意識の中なのに、その意識の中ですら消えそうなぐらいに弱ってる。

本当に消えるって事はないけども。

でもこの状態では表層にボクが出るのは無理だよと、そう言ってるわけだ。

もっと言えば、主人格の龍眼の魔女が表に出たら、彼女自身も「下がりたくてもボクが出られないから下がれない」状態になる。

何日…もしくは何ヶ月?分からないけども、しばらくボクは眠ることになりそうだ。

「でも…ね、それでもいいんだ。修司を…守って欲しい。これだけはお願いね…。」



<???の視点>

暗闇から現れたもう一人の私は泣いていた。

泣くというのは私にはなかったことだけど、彼女の感覚は主人格である私にも伝わってきた。

修司が巻き込まれることの焦り・怒り、そしてどうにもならない自分の無力感。今まで持ったことがない感情・感覚…でも「とても悲しいこと」なのは分かった。

彼女はもう一人の私。けれども、同時に娘という感じもある。…娘居ないけども。

「安心してほしい。ちゃんと私が守っておくよ。キミも修司もね。」

遠方に光が見える。そこに向かって歩く。歩きながら深呼吸をする。

私は龍眼の魔女。

「龍」という文字を使うのは特別なことだ。

1つは「龍脈」という大地を流れる魔力を見る力と言う意味で「龍眼」。もう1つの意味は「龍」を彷彿とさせる戦い方をする魔女という意味で名づけた、と次元の魔女(エミリー)に言われたことがある。もっとも、後者の意味…もう一人の私も知ってたと思ったけど、知らなかったのかな。

もしかしたら修司に引かれるのが怖くて無意識にその意味も、戦い方も忘れてしまったのかもしれないけど。

「でも、多分彼は引かないよ。もうずっと一緒にいるんだからね。」

コツコツと意識の表層に向かって歩く。

翡翠の魔女…強くなったと思う。けどまだまだ私の敵ではない。

「もう一度格の違いを見せておかないとダメかな。」

龍眼の名を継ぐだけの力はないと、そう教え込んで二度と変なことを口に出さないようにさせないとね。

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