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月のダンジョン3

中級魔術は初級のものより術の構築が難しく、俺のように接近戦闘しながらだと正直キープしたものをリリースするぐらいしか使用用途がない。

というか、初級魔術のウォールが即時発動できない時点で俺には扱いづらい。

有紀は魔術処理量に特化してるので複雑な魔術でも短時間で発動させることができる。

「そういや、見たことないな。」

基本的には俺のレベルアップを目的としているため、有紀は初級魔術で立ち回ることが多かったからね。

俺の眼前のナイト、ウォーリアはナイトが前に、ウォーリアが後方に配置を変更している。

こいつら今までのモンスターと違って多少連携とってきているのが厄介だな・・・。

この2体にプラスしてアーチャーが隙を見て俺を攻撃してくるというのは今までのように1対1の状況を作りにくい。

ただ、先ほどの戦闘で分かったけど、ウォーリアが特攻するタイプでナイトは堅実に攻めてくるタイプみたいなので、今は膠着状態だ。

ウォーリアは傷を負っているが、それでも突撃してくる機会をうかがっている、ように見える・・・。

というか、斧避けたからよかったけど、さっき縦に振ったとき、地面に当たった衝撃で後方数メートルぐらい地面えぐれてるからね。

斧の一撃はウォール1枚じゃ死ぬ!

逆にナイトはまだ未知数だし、アーチャーは有紀が請け負ってるからやっぱりわからん。

今のこの膠着状態を利用して有紀をチラ身する。


有紀が使用した魔術・・・その一撃でアーチャーはその動きを止めた。

発動する直前、確かに冷える感覚があったけども。

「まさか一瞬でこうなる?」

アーチャー達は全身霜だらけになりその動きを止める。そしてプレート全体に亀裂が入り・・・崩れる。

フルプレートが崩れたことで核だけ露出していたが、その核も冷気により消滅していく。

有紀が使用した魔術は「フリーズ」。

ダメージを与える目的ではなく、対象を冷却させるという魔術だ。ただ、相当の冷却力なのはフルプレートが崩れた点でも分かる。

ヒートショックという現象がある。金属を急速に冷やすとその温度差で金属が収縮し、ヒビが入ったり割れたりする現象だが、これが起こるだけの温度変化が一気に発生したと言うことになる。

初級の魔術と比較しても明らかに「人に向けたら死者でる」レベルの魔術・・・これが中級魔術か。

まだ一匹だけアーチャーの核が辛うじて生き残っていたようで、残骸からふよふよと浮き出てきた。が、有紀はその持っているサーベルを振るとヒュと軽い音と共に、その核が真っ二つに割れて今度こそ消滅した。

龍牙穿空の特殊能力、飛ぶ斬撃(と有紀が命名した)だ。

「は、早いな・・・。」

有紀は「ふう」と息を吐き、俺を見る。

「さ、修司1対2だ!頑張ってね。」

俺は有紀の戦いにちょっと目移りしてしまったけど、幸いそれはナイトには気づかれなかったようだ。

依然膠着は続く。


この膠着状態、実はわずかに俺のほうが有利だったりする。俺は魔力回復に費やすことが出来るからね。

さて・・・今のうちに回復した魔力でウォールのストックを作っておく。

ゴースト・ナイトとウォーリアは恐らくスケルトンと同じく、目は無いが目に当たる部分で俺を認識していると思われる。

ということで、ミストを展開・・・そしてダッシュ!相手はナイトの後方に居るウォーリアだ。

ナイトはそうはさせまいと俺の前に出ようとするがブライドを目(と思しき部分)に使用し、視界を遮る。

やはり俺を探してる・・・その目の部分で認識してるのは予想通りか。

そのままナイトを無視してウォーリアへ。こいつはミストのせいで完全に俺の姿を見失っている。

ナイトとウォーリアはわずかな距離の差だったが、ナイトはギリギリ俺の認識圏内だったので俺を見失わずに済んだ(その後ブラインドしたけども)。一方でウォーリアはミスト使用時点で俺の姿は一度完全に消えている。

さっと背後に回り、奇襲をするように一気に背中から烈炎の剣+パワースラッシュで切りつけると、最初に破壊した鎧の亀裂が更に大きくなり、切っ先が核に届く。ここまでは無言で一気に進め・・・。

「うおおおおお!」

と雄たけびを上げ、切っ先に引っかかった核をそのまま焼き切る!

核はその一撃で粉々に壊れ、ウォーリアは消滅した。

残るは1体だ!このまま畳み掛けるぞ!


・・・と思ったことが俺にもありました。

このナイト、ガードが硬い。

スピードアップの効果で攻撃はかわせるが、背後に回って必殺の一撃を決めようとしてもプレートが削れるだけでウォーリアの時の様に核が見えるレベルの破損はしていない。

「このナイト、ハードスキン使用してるよ。」

「まじか、烈炎の剣でも削れないのはやばいな・・・」

ちなみにウォーリアの一撃も(かわせたから問題ないけど)フォースによる上乗せが行われていたようだ。

有紀が相手していたアーチャーは急所への命中率を高める魔法を使用してた、と有紀から後から聞いた。

いやあ、良く避けたな、俺・・・。

ただこのナイトが使用するハードスキンは背後を重点的にガードしているようで、表のほうはそうでもない・・・らしい。これは攻撃していて分かったことだけども。

もしかしたら魔法は使うけど、熟練度はそこまで高くないのかもしれないな。アーチャーの攻撃を俺がかわせたのもそうだし。突破口は、相手の魔法熟練度の低さになりそうだ。

これまた厄介なことに正面はシールドが邪魔をしてるんだよなあ。五角形の形をした銀色の盾は俺が前に出るとその行き先を塞ぐように突き出してきたり、あるいは相手の剣を避けた先で盾をぶつけようとしてきたり、結構動きが細かい。

ただ俺の攻撃が通じない代わりに、向こうの攻撃力も圧倒的に低い。

剣による攻撃は他のゴーストの隙を突くような形でやってくると脅威なんだけど、単体だと速度もないしかわすのはたやすい。盾の動きは細かいけどやっぱり回避は可能なので当たることはない。

いろんな意味で膠着してるんだけど、どうしたもんか。

「修司、ボクも手を貸そうか?」

「いや、もう少し粘るわ。」

幸い俺の得意な1対1の状態だしね。

背面は硬いから攻撃が通らない・・・正面はそんなに硬くない。ただし盾がある・・・。

あ・・・、なら盾もてなくすればいいか!

俺は烈炎の剣を使用する。魔力消費激しいので短期決戦で行こう。

ダン!っと一気に駆け寄ると、ナイトも盾を前に構え俺の迎撃準備を始める。

「甘いな!」

盾を避けるように右にステップすると、俺はナイトの左側に移動した状態になる。

この状態で腕を狙ったらどうなるか。

「おらっ!!」

剣を下から上に思いっきり切り上げる。この切り方でもパワースラッシュはちゃんと発動する。便利だぜ!

ガシュッと音を立ててナイトの左腕は切断される。

「思ったとおりだ。ハードスキンは背面だけしっかりしてるけど他は脆い!!」

ナイトは一歩下がって剣を振るうが、盾を持てなくなった時点で勝敗は決していた。

避けざまに胸部を切りつけ・・・切りつけ・・・隙間から核が見えたところで、ズボっと剣を差しこみ、核を壊すとナイトは消滅した。

行動パターンはナイトは細かく動く、ウォーリアは特攻してくるのが脅威、アーチャーは一発が急所行きなのでこれらが連携しっかりしてくると俺はこんなに楽勝ではなかったな。

ある程度連携は出来てたものの、やっぱり人間のとる連携に比べたら「こいつを利用しよう」程度の連携だったし。


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