月のダンジョン
1日目、昼は俺達とエミリーは3人で和室を堪能してダラダラと過ごしていた。
何ヶ月ぶりかのだらけた生活だわ・・・。
「さて、私は他の魔女が来たら相手しないといけないし、席を外すよ。」
「行ってらっしゃい~。」
エミリーは途中で退室したが、俺達は畳に寝転がってて有紀に至ってはいつも以上にノンビリとした返事をしてしまう。
考えなきゃいけない事も多いけどたまにはこういう時間大事だよな。
「4日目だっけ?重要なのは・・・。」
俺は有紀に声を掛ける。
「うーん、そうだねー。」
有紀が間の抜けた返事を返す。
チラっとみるといつものハーフパンツ・・・袖口が広いんだけど、隙間から下着が見えちゃってる。
今日はブルーか。衛生面は魔術で何とかなると有紀は言っているが、そんな彼女でも下着は何着も持っていて色が違う。変える必要なくても変える、っていうのは要するお洒落のためだろう。
まあ見ておいてあれなんだけど、だらーんと手足を投げ出して天井見ながらぼーっとしてる有紀。
・・・無防備すぎじゃない?と思うけど言わない。理由はわかるな?
ジーと見ながら会話を続ける。
「暇だし、少し月のダンジョン潜ってみるのも良いかなと思ってさ。」
俺の提案にしばらく考える有紀、でも直ぐに「良いね」と返事をして、体を起こす。
下着見てたのバレるまえに俺は顔を逸らす。
「ダンジョン行くの?それなら・・・私が素材集めに利用しているダンジョンなら転送魔術で送れるよ。」
エミリーに相談してみたら、彼女はアッサリ承諾してくれた。
しかも送ってくれるとか、サービス旺盛だな。
月にもダンジョンはいくつもあるが、最寄のダンジョンは30層からなる中級~上級者向けダンジョンだ。
ちなみに奥まで潜ってたら魔女会終わってしまうので、1フロアで実力試し程度で考えているんだけど、どうしようかな。
「修司君の実力なら7層なら丁度遊びやすいだろうけど。うーん、でも有紀にもリハビリしてもらいたいし15層でも行ってみたら?」
エミリーが15層を勧めたのは有紀のリハビリということだが、実際にはもう一つあった。
「修司君の戦い方から考えると、キミのアーツ・・・もっと強力なものにしておきたい。烈炎の剣、だっけ?」
「更に強力・・・?どういうことだ?」
「えっと、キミのそのアーツは魔力を熱に変換して剣で炎に具現化させていると私は推測してるんだけど、違うかな?」
「うーん、イメージはそんな感じかな。それを論理的に言えというのは難しいんだけども。」
「ああ、大丈夫。そのイメージなら、恐らくキミの体の中は上手く魔力が伝達してるけど、そこから剣には5割ぐらいしか伝達が出来てないと思うんだ。」
俺はその辺は自分では気づけないが、体から物へ魔力を伝達するとどうしても自分が流した魔力を全部伝えるのは出来ないらしい。
今俺が使っているショートソードでは半分ぐらいしか伝達できてない、とエミリーは考えているようだ。
要するに5割しか自分の魔力が伝わってないのにあれだけの火力を出せてる、と言うことになる。
「15層の一番奥の部屋なんだけども、特殊な魔力が渦巻いていてね。そこだけは魔力溜まりでモンスターが生まれてこないんだ。でも、その部屋の中央に鉱石を置くと・・・鉱石が魔力を吸収して鉱石自体が少し魔力を帯びるという、ちょっと不思議な空間だよ。」
金属を磁石で擦ると、その金属が磁性を帯る磁化というものがある。何となくそのイメージが頭にわいたけど、多分そのイメージで問題なさそうだな。
要するに鉱石・・・今回は俺の剣に魔力を帯びさせ、それにより俺が剣へ流せる魔力量を増やすという形らしい。
「勿論それでも5割から8割ぐらいかな。10割全部魔力を通すならそもそも1から作り直さないといけないんだよね。」
「なるほど、でも3割分でも威力にしたら大分差が出るし、興味あるな。」
「修司、そしたらボクも手伝うから15層行こうか?」
15層までの移動は楽だった、というか転送で一発だった。
地下に向かって伸びるダンジョンなので15層・・・というと地下になるはずだが・・・天井や壁が白く光っており、非常に明るい。
「地上か!?ってぐらい眩しいね。」
「うん、ただ目が潰れるってレベルじゃなくて良かった。」
俺達の世界でいう蛍光灯のような光なので目には優しい・・・ように思える。
この15層のマップを見ると奥までは最短8フロアで到達するので、戦闘時間含めても一日あれば戻ってこれるはず。敵次第だけどね。
敵はフルプレートを身に着けた亡霊で、種類は全部で5種類居る。
・ナイト:剣と盾を持つ防御型
・ウォーリア:斧を振り回す攻撃型
・アーチャー:弓を使用する遠距離型
・クイーン:他のゴーストと比較して一回りスレンダー
・キング:他のゴーストよりも1周り大きい
が・・・クイーンとキングは「王の間」とエミリーが名づけたフロアにしかいないので、今回の最短経路に絡むことはないのでこいつらはスルーでいいだろう。
ナイト・ウォーリア・アーチャーの3種類を相手にすることになる。
「混合はアルカ村のスケルトンでもやったし、大丈夫かな?」
俺は少し楽観してた。勿論油断はしていなかったけども。