魔女会
魔女達は普段バラバラに行動するが、この魔女会の誘いで集結する。
勿論強制ではないので不参加の人も居るようだけど。
有紀は今回で2回目の参加、というか開催自体が彼女が生きていて2回目だから出席率100%なんだけどね。
「うーん、でもボク前回の参加の事覚えてないんだよね。」
「そっか。まあ行ってみるか。」
俺達は開催初日から移動することにした。
魔女会は全部で1週間だが最初から最後まで参加する必要もなく、エミリー曰く「重要な話は4日目だけ」とのことで、それ以外の日は会場でマッタリ過ごしたり、魔女同士で交流持ったりするんだとか。
「んじゃ、行ってみるか。」
食事なども向こうで用意してくれるらしいので、俺達は買出しもせずに行くことにする。
貰った封筒をそのまま破れば良いんだっけか。
「これも魔術なのかな?」
「さあ・・・でもエミリーは色んな異世界ふらふらしてるから、どこかで身につけたのかもしれないね。」
有紀は然程気にする様子もなく封筒を破る。
行動、早!
俺も慌てて破る。
破いた、と思ったら景色が一瞬で変わった。
「うお!?なんだここ!」
「会場だよー!直ぐに会えて嬉しいよ、修司君。それに、有紀。」
出現した目の前に次元の魔女、エミリー・ノートンが居た。テーブルに座ってヘアアイロンで髪型のセットしてた。
電気どこから出てるんだよという気持ちもあるけど、それ以上にどこに飛ばされたのか気になってしまう。
「ここはどこなんだ?」
「月だよ。」
ふぁ!?月・・・?
「夜になるとちゃんと輝いていたでしょう?白く。」
「いや、それは分かるけど、そんなところにどうやって!?」
部屋の中だから外の様子はわからないけど、エミリーが月に会場作ったと嘘つく理由はない。
だから月に飛ばされたのは本当だろうけども・・・。
「前はさー、ちゃんと地上でやってたんだよ。けどね、前回かな・・・そこの有紀と陽光の魔女が戦ったらハッスルしすぎて地形変えちゃったんだよね。ちょっと騒がれすぎちゃったからココに会場作ったんだよ。」
「ええ!?」
今度は有紀が驚く。彼女は記憶が大分欠落してる。まさか一時期流れた龍眼の魔女の恐ろしい噂の根拠が前回の魔女会だったとは思ってなかったようだ。
「まあ、キミや陽光だけ悪いって訳じゃないのよ。私も『いけいけー!』なんて調子乗って2人を囃し立ててたからね。」
エミリーが「テヘ」と首を傾げながらウィンクする。いや、可愛いけどねそれも。
「お前ら本気で戦うと普通に恐怖の対象だな・・・。王都がソレを見て魔女に手を出すの躊躇ってるらしいぞ。」
「ダヨネー。悪いことしちゃったね!」
別に悪かったとは思ってなさそうなノリでエミリーが答える。
まあ、魔女が戦って地形が削れようとも俺には直接関係ないから良いのだけど。
魔女会では普段抑制している魔女が自分の全力をぶつける相手と会える訳だから、たまにそうやって戦うらしい。
同時にエミリーが序列を決定する際に納得行かない魔女が「こいつより上だ」と思う相手を指名し、戦闘するというイベントでもある。
前回は陽光の魔女と龍眼の魔女の戦いが地形を削りすぎるぐらいの勢いだったせいで、ドン引きした他の魔女は戦わなかったらしい。
「ボクそんな頭おかしいことしてたのか・・・。」
「いやあ、凄かったよ。と言っても地形の破壊は大半が陽光の魔女のせいだけど。でも彼女があそこまで力解放するぐらいにはキミは厄介な相手だったわけだ。」
「なんだ、ボクが地形削ったわけじゃないなら頭おかしくはないね。」
いや、それだけの戦闘を継続するって点では頭おかしいと思うけどね、俺は。
この魔女会の会場は確かに衛星上にあった。上には俺達の過ごしていた星があるし。
「ここでも月と呼ぶんだな。じゃあ向こうは地球?」
「よく分かったね。その通りだよ、修司。」
でたよご都合展開。
「でもちょっとだけ違うんだ。こっちの世界の月は、空気が存在するし、重力も地球と似ているんだよ。」
ということは外に出ても俺は死なないんだな・・・魔女はまあ死なないだろうけど、俺は生身なのだ。
まあ、別に観光を楽しむと言うつもりはないので会場の中でふらふらする程度でいいかなって思う。
「有紀、修司君。キミらは同じ部屋にしてあるからね。」
エミリーが俺に部屋を案内してくれるというので任せてみたらそんなことを言われた。
いや、俺は構わないけどね!もうすっかり4畳の宿でも眠れる仲だぜ!
「ボクは・・・別に構わないよ。もうすっかり4畳の宿でも眠れる仲だよ。」
有紀に、俺が思ったことと同じ事言われた。
「はは、ちゃんと広い部屋だから安心してね。気を利かせてあるんだよ、私。」
エミリーは一応気を使ってくれる子だった。
前言撤回。アイツは全然気を使ってない。いや、違うか。気の使い方がおかしい。
「・・・うーん、予想外だった・・・。」
有紀も頭抱えてるし。
部屋はね、確かに広い。2人で30畳の空間は逆に不安になるレベルだ。
荷物を置き、ソコに行く。
「うん、ちょっと流石の俺もこれは過ごせるか不安になるな。」
なんで広めに部屋を作ってくれたのに・・・。
「ベッド一つっていうのはなあ。」
寝る場所として用意された所にはテーブルもあるし、クローゼットもあるし、調度品もあって洒落ている。でも、ベッドだけはダブルサイズのベッドが1個あるだけだった。
確かに狭い部屋でも一緒に眠れる仲だって言ったけど!
まさか同じベッドで寝るっていうのは想定外だぞ!
「俺、そこのソファーで寝るわ。」
「いや、ボクがそっちで寝るよ。」
お互い気まずい。有紀なんて顔赤くなってるし。変なこと想像してるんじゃないの?
「何?修司・・・。変なこと想像してないだろうね?」
こっちの台詞を先に言われてしまった。
「とりあえず、寝るとき考えよう・・・。」
問題の先送りを提案すると、有紀も「そうだね」と飲んでくれた。
その時になったら俺がソファーに駆け込んで寝ればいいしな。