次元の魔女
魔女衣装。
有紀の場合は背中がガッツリ露出した黒いチャイナ服とハイヒール。
彼女は黒いオフショルダードレスにハイヒール。
凄く・・・魔女です。
しかもスタイル良く見せるためなのか分からないけど、やっぱりくびれの部分細く作られているようだ。
スタイルは有紀と同じくらいだけど、更に背も少し高いので有紀よりもセクシー要素がある。・・・って言ったら絶対有紀に殴られるから言わない。
「次元の魔女・・・。何でここに・・・?」
有紀もここに彼女が居たのが予想外だったみたいで少し驚いてる。
「いやね、キミを転生させたでしょ?あの後しばらくして暇だったし、キミの転生先に遊びに行ってたんだよ。ほら、これ見てみ!」
ジャーン!と言って取り出したのは・・・。
「ヘアアイロンかな?ってこっち持ってきちゃったの!?」
「へへへ、そうなんだよ!これで龍眼よりもクルリンってした髪になるよ!」
ドヤ顔で言い出すこの魔女は次元の魔女・・・。
栗毛の髪の所々が縦カールしてるのはこの人、ヘアアイロンを次元を越えてもってかえって来ちゃったんだな。
有紀が言うには現存する魔女で最も力の強い魔女ということだし、次元を超えるというのは女神並みの事をやってるらしいんだけど、雰囲気的に最強っていうのはぶっちゃけ見えないな。
「大丈夫だよ、龍眼!コレは別に世に広めるつもりはないからさ。私が個人で使うだけだからね。」
「あ、はい。」
有紀もなんかこの人の雰囲気におされ気味だなあ。
「え、それで次元の魔女。さっきの話に戻るけどキミは何をしにこっちに?」
「うん、別にヘアアイロンを見せに来たわけじゃなくてね。『魔女会』やろうかと思うのよ。」
「魔女会・・・」
「前やったのはキミが転生する40年ぐらい前かな・・・。でも最近魔女が何故か増えてるでしょう?一度集まれる人たちで集まってみてもいいんじゃないかな?って思って。転生してしばらく戻ってくるはずがない龍眼の気配も何故かしてたしね。」
次元の魔女、彼女がこっちに戻ってきたのは2年前・・・俺達が転送される前か。
と、急に彼女は俺のほうを向く。
栗毛の髪の毛に、目は青色と茶色のオッドアイだ。見る人が見たらオッドアイはマイナスの印象だろうけど、もしかしたらそんな差別的な人が彼女を見ても悪い印象は持たないかも。そのくらい魅了する力がある。
「キミ、異邦人だね。キミと同じ異邦人が大量に召喚された・・・というのは聞いているはずだけど。その目的はまだ知らないでしょう?」
召喚された目的!そう、俺がまさに王都に向かうのはクラスメイトとの合流もあるが、それで目的や帰還する方法を確認するためでもある。
「今度の魔女会、それについても私から話をするよ。・・・だから、キミも招待してあげるから龍眼と一緒においで。」
そういいながら、俺と有紀に一通ずつ封筒を渡す。
「この中に、転送の魔術を仕込んであるから、移動したいときは封筒ビリっといっちゃってね!中に入ってる紙を破けばいいだけだけど、イチイチ封筒から取り出すのも面倒でしょう?」
「お、おう。」
なるほど有紀が押されるのも分かる。俺も押されるわ。
というか有紀といい、この魔女もそうだけど魔女って言うのは可愛い子しかなれないの?ってぐらい好印象の外見が多いな。
「お、私のことさっきから見てるけど、いいのかい?ちょっと『遊ぶ』なら別にいいよ?」
まるで「お姉さんとイイコトする?」みたいな感じで誘われてしまうと、雰囲気に飲まれてOKしちゃいそう。
「はい」と言おうとしたところで足を蹴られる、有紀に。
「痛って!なにするんだよ!」
有紀を見ると、めっちゃムクれてる。
「いやね、女たらしみたいな顔してたからついね!つい!」
「いや、意味分からん。俺そんな顔してたか!?」
「してたよー。いやあ、修司さんはムッツリスケベですからね~!」
ちょっと、魔族の皆が見てるところでそういうの言うなよ・・・。
「ははは、キミら本当に仲良いね。大丈夫、冗談だよ・・・龍眼。」
「い、いやボクは別にそんな事言われても・・・。」
次元の魔女に対しては有紀は強く出られないのは、恐らく転生させてくれた次元の魔女に対する恩でもあるからかな。
「ふふ、でも龍眼。良かったね、転生した価値があったみたいで。」
「え?」
「ん?ああ・・・キミはさっきから雰囲気が昔と違うけど、そういうことか。」
そういうこと・・・っていうとたぶん昔有紀が俺に教えてくれたけど、過去ここで過ごしていたときの記憶の大半がない・・・という話のことかな?
「そうだね。分かっちゃう?」
「うん、普通は向こうで死んでから戻ってくるからうまい具合に切り分けられるんだけどね。今回は女神の召喚に巻き込まれたんでしょう?だから混濁が起きてるんだよ。・・・ま、時間が解決してくれるけどね。」
まあ、なにやら難しい話だけどね、半分は理解した。そのうち記憶もどるんじゃない?って話なのは分かった。
「でも、今のキミは昔の龍眼より『幸せ』を実感してるみたいで、良かったよ。」
「幸せ・・・?」
有紀自身も言われたことは理解できなかったみたいだ。けど・・・直ぐ何か納得したのか「ハッ」とした顔になる。
「そうか、そうだね。転生したのは、灰色に染まった思い出ばかりだったからだ。」
「それは思い出したんだ?そうだよ。私が魔女達に転生させてあげたいのは行く先で『これから生きていく糧』になるような思い出を持ち帰って欲しかったからだ。そして、キミはそれを出来たわけだ。」
「うん・・・、でもまた帰るかもね、向こうに。」
「それはまあ女神の力をどれだけ利用できるか次第だけども。私も戻るときには尽力するよ。安心してね、龍眼。」
次元の魔女は有紀の頭を撫でる。
お姉ちゃんキャラだな、さっきのはしゃぎっぷりと比べると。