vs『腐朽の妖樹』3
今の状況まとめると…
左腕骨折(してるような痛み)。体力は満タン、魔力も体感で7割ある。
あとは全体に数十箇所深くは無いが切創あり。
キープされていたウォールはもうストックがない。
敵のほうは根が復活しているのと、幹はたぶん3メートル中1メートルは削った。
核は今攻撃している根元から1メートルの地点にある、とラウノさんの助言だ。
だから次の攻撃で核に手が届くはずなんだけど…
「参ったな…。」
幹を大きく切ってから先ほどまで出ていた煙が止まっている。要するにここからは燃えにくいんだろう。
でも俺の攻撃手段で唯一通じるのはフレイムだけだから結局勝負はそれでしか出来ない。
と、迫ってきた根に関しては冷静に切り、フレイムで退ける。
単発の根の攻撃なら流れるように対応できるようになった。
ズキっと左腕が痛む。バックラーは腕と手で支えるタイプだけど、今に至っては手でもてないし、腕も折れてるだろう判断から、バックラーを捨てる。どのみち防御はもう期待できないしね。
俺を攻撃する根は3本あるわけだが、とりあえず3本無力化させておこう。
ダッシュで近づき攻撃仕掛ける2本を避け、切り、燃やす。
ここまでは普通に出来てることなんだけど、こっから先だ。
妖樹の攻撃パターンがさっきまでと違うわけだから油断はならない。
キープ…ウォール3ストック分は根を無力化させたことで再度補填できた。
けど、気づいた。
切創が治らないのはまだ分かる…。
「血が止まらないのか。」
浅い傷でも先ほどから少量の血が滲み続けているのだ。
妖樹の葉の攻撃は浅いからと油断していたが、それがここに来て結構負担になっている。
先ほどまでポーションで体力回復させていたはずなのに、3本の根を無力化させ、ウォールの補填をしている間に体力が7割(体感ね)まで落ちてる。
「結構まずいぞ、これ。」
ただ、まだ根が復活するまで時間はある。迫る体力の限界に勝負を急いではダメだ…。
深呼吸して、考える…。
もっと火力が必要だ。残る魔力は更に10分は戦闘可能な量はある。だが体力はこの後の攻撃分も考えると10分後には限界になりそう。
一方妖樹もあと少しで核に届く。それを壊せば…という状態だ。
「ふう…はぁ…」
逃げるという手もあるな。けど、出来ればここで終わらせたい。
次はクラスメイトと合流するために王都に行くんだし、合流したところで俺が付いていけないのは避けたい。そんな意地があるからね。
「スゥー…ハァ…」
あれ?
「できるやん!」
関西人じゃないのに関西弁で叫んじゃった。
誰も聞いてないから良いよね。
でも、深呼吸で俺は閃いた。
残りの時間も少ない。ここで終わらせる。
俺の魔力は瘴気により変性している。というのは有紀の推測だけど、俺自身もそう実感している。
魔力を練り上げる。集中させるイメージだ…
イメージ、これは魔力を使う上で重要な点だ。
実際にどういう経路で魔力を通すというのは理論ではなくイメージ力の問題だからね。
ならその魔力が瘴気の性質により燃焼するイメージを持たせてみる。
腹…古文の先生が「丹田」と言ってた気がするけど、そこだろうと思われる場所へ一旦魔力を集めるイメージ、そして燃やすイメージ…
「ぐ…!」
腹部が熱くなるのを実感し、それを手に…そして剣に移していく。
俺が味わった熱は腹部から肩、腕…手へ移り。
「できた!」
ボッと剣に炎がともる。
フレイムでも同じ事は出来る。だが、それ以上に燃え盛っている剣。
窯へ鞴で空気を送るように、俺は絶えず剣に魔力を送り続けると、その剣は更に燃え盛る。
正直持ってるだけでも熱さを感じる。
ただ、これは常に魔力を送り続けなきゃいけないので魔族と同じく「超短期決戦」の技だな。
時間もないが、これで勝てる!
絶対の確信を持って俺は妖樹に向かった。
「てことで、倒したわけだけど。」
俺は有紀の魔術により「腐敗の妖樹」による切創を治癒してもらいながらラウノさんへ報告をする。
見られると恥ずかしいけど、有紀に膝枕してもらってて気持ちが良い。
冗談で言ったらしてくれたんだけどね。でも冗談と言ったら叩かれるから言わない。
「ほう…。シュウジさん、やはり我々には無い戦い方をするので非常に興味深いが、最後の技は逆に我々のテクニカに近いものがあるね。」
「エンチャントっていう魔法があるんだけどね、それに近いものかな?」
エンチャントは武器に魔法を付与する能力らしい。
ハードスキンなどは「自己強化」の延長で装備にも付与できるが、攻撃魔法に関してはそうも行かない。
攻撃魔法というのは基本的に手から放つ魔法なわけで本来であれば武器に留まるのは無理なんだけど、それを無理やり留めておくのが「エンチャント」という魔法になる。
勿論エンチャント中は敵を切ったら終わり、とかじゃなくて魔法の持つ属性の効果は持続する。
例えばフレイムをエンチャントした武器は効果中は燃える剣として振ることが出来るわけだ。
今までのエフェクトの無い世界から、やっと…ファンタジーらしいエフェクトの付く魔法が出てきて何よりだ。
「ただ、エンチャントとは違うね。修司はフレイムつかったわけじゃないんでしょう?」
「うん、俺は別に魔力をそのまま燃やすイメージで剣に持っていったんだよ。ヤミが使っていた技をイメージした感じでね。」
「シュウジさんの魔力は瘴気により変質している、と聞いていたが…その影響かもしれないね。」
「俺もそう思います。」
有紀が持ってきたバックパックに収まっているマジックポーションを飲み、俺はみんなの前で炎の剣を出す。
「すご…。でもこれは確かにフレイムとは違うね。魔術感知もしてないし…。何より威力が修司のフレイムよりも高いような…。」
「うむ、やはり我々のテクニカに近いね。」
「…っと、出しっぱなしにすると魔力が直ぐ枯渇するんですよ。その辺も魔族の技に近いかもしれませんね。」
俺の剣はラウノさんにより「烈炎の剣」と名づけられた。




