ベタ東ダンジョン10層2
俺達は長老に10層へ挑む許可を貰いに来た。
10層は彼らの試練の場としても使われているため、バッティングすると気まずい。
それにきっと長老のことだから護衛を手配したがるだろうと考えてのことだ。
「試練は滅多に行いませんから、明日でも良いですよ。9層まではヤミ、ヴィヴィ、ラウノの3人をつけましょう。10層だけは掟によりラウノしか入れないが…。」
「十分です。ありがとうございます。」
というわけで、普通に明日になった。
護衛…9層のモンスターで消費させないためにつける護衛なのと、10層に関しては倒れた俺を回収する目的でラウノさんが付き添う。
「それと、女人禁制…と言っても別に部外のユウキさんまでそのルールに則る必要はありませんよ。」
良かった、有紀が参加するなら10層空けませんと言われるかと思ったが、そんなことは無かった。
まあ別に7層以降が魔族の…マルタ族のものというわけではないから言われるはずもないんだろうけどね。
しかし、このダンジョンに潜っていてはっきりしたことなんだけど…。
「このダンジョンさ、火に弱いモンスターばかりいない?」
「ボクもそう思った…。」
今日も4畳のフロアで俺と有紀は寝泊りするわけだが、その前に茶を飲みつつ雑談に興じる。
リラックス効果のある茶なので明日の本戦の前に精神的な興奮を抑えるのに役立つ。
しかも10層も木のモンスターなわけで、これはフレイム連打が勝利への道かな?
ただ、トレントは若干枯れた木のイメージだけど、腐朽の妖樹はそれよりは瑞々しいらしい。
燃えるには燃えるけど延焼は難しいか?
「それはそうと、修司。」
俺がぼんやりと明日の作戦を立てていたところ、有紀から声がかかる。
「ん?」
「もう4ヶ月経つんだけど、地上に戻ったらそろそろ王都に行く?」
「あー、そうだったな。」
忘れてたわ。王都にいくのが目的だったんだ。
ステータス的には皆と合流できるだけの力があるのか、若干疑問ではあるけども、資金面はギルドの依頼であるロックゴーレムの岩…後何気に忘れてたけど4層の湧き水採集の報酬がある。何よりも8層での狩りでも素材を分けてもらえたし、地表で換金できれば結構なお金になるはず。
「武器防具の更新は今回は諦めよう。多分王都に行く旅費でお金掛かるだろうし…。」
「そうだな。まあ今回装備を更新する必要ないでしょ。マルタ族に武器防具メンテナンスしてもらったからまだ当分使えるし。」
しかし、クラスメイト達はどうしてるのか…。
確かに元々輪に入って何かするっていう俺達ではないけど、別にサボったり斜に構えてたわけでもないし、逆にハブられてたわけでもないし、嫌われてたわけでもないし。
そんな微妙ポジションでも俺達はあのクラスの一員だからね。
とか思いつつも、やっぱり合流したときに俺だけ雑魚キャラだったらどうしようっていう心配はあったりする。
いやね、一応同じくらいの冒険者でみたら強いほうに入ってるはずなんだよ、ボスモンスターの実質ソロ討伐もできたんだし…。
けどそれは「一般の冒険者」の範囲での話だ。クラスの奴らは女神から加護とやらを貰ってるわけで、天才・秀才と言われるような冒険者と同等の位置に居るに違いない。
うーん、合流していいのか心配になってきた。
ともあれ、俺に必要なのは明日のことなので、考えを切り、眠ることにした。
翌日、軽めの食事とストレッチをして、10層へ向かう。
このダンジョンは6層が最も広く、そこから下へ潜ると徐々に狭くなる。10層は入り口からボスの居るフロアまで一直線の通路があるだけの単純な構造をしている。
「ボスは動かないって事は、出現場所も常に同じなんだな。」
そりゃ妖樹が壁にめり込んで出現されても困るが。
道中はヤミ、ヴィヴィさんがモンスターを倒してくれるので俺は単純についていくだけでよく、楽をさせてもらった。
「で、この先が10層って事になる。」
あっと言う間についてしまった…緊張してきたな。
「ヤミ、ヴィヴィ。お前達は10層途中の階段で待機していてくれ。」
「はい!」
階段を下りる最中に俺は何となく違和感を持った。
「ラウノさん。」
「ああ、分かるのかシュウジさん。」
10層の階段から瘴気が薄くなってきているのを感じる。
「そう、妖樹は瘴気を吸収しているんだ。だからこそ我々にとっては苦戦する相手…ということになるね。」
瘴気を吸収するということは、彼らは瘴気がない空間での戦闘を強いられる、と言うことになる。
更にトレントに見られるように植物系のモンスターは体力が多いのか、弱点を突かないと長期戦になる。
この二つの要因が魔族にとって妖樹を難敵としているわけで、だからこそ「試練」として討伐対象とされているということになる。
「だが、シュウジさん。君は瘴気が無くても戦闘能力に影響は無いわけだから、少なくとも我々よりアドバンテージがある状態だ。あとは長期戦をどれだけ粘れるかだ。頑張れよ!」
ラウノさんが背中をバシバシ叩いてきて痛い。
「わ、わかりました!行ってきます!」
「修司、ポーションの確認した?何時ものモンスターとは違うんだから、気をつけるんだよ?」
「おう、大丈夫だ。ポーションは2本、マジックポーション1本。最小限だが持ってる。」
ポーションは合計3本…もっと入れられればいいんだけど、ボス戦に態々バックパックを担ぐ馬鹿は居ない。いや、パーティーなら有りなんだけどね。
動きやすさを重視した結果、俺は荷物はポーチのみだし、そこに入る量で言うとポーション系3本が限界だった。
有紀とラウノさんは入り口で待機し、俺一人ボスのフロアに通ずる通路を歩く。
緊張してきたけど、同時にワクワクもする。
※現時点のステータス
佐野修司 ランク2
ステータス
筋力:80
敏捷:80
体力:70
魔力:90
スキル
魔術:ブラスト、フレイム、ロック、ミスト、ブラインド、ウォール、バインド、キープ
魔法:ハードスキン、アヴォイド
アーツ:パワースラッシュ