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環境適応

俺達が8層で寝泊り始めからしばらくのことだが、俺はあることに気づいてしまった。

「なあ、有紀。ちょっとだけ結界弱められない?」

「へ?なんでまた…?」

「うん、少し思うことがあってね。多少瘴気に触れてみたい。」

「ええ…。まあ最悪瘴気で倒れたら長老に処置をお願いすればいいか。」

有紀が少し結界を弱めた…ような気がするが、対して差を感じない。

「もっと弱めて。」

「わ、わかった…。」

更に弱まった気がする。俺の呼吸に不純物が入ってるような、そんな感じがある。

「もう少し…。」

「嘘でしょ?これ以上?」

俺は首を立てに振ると、有紀も恐る恐る結界の操作を更に続ける。

「スー…ハー…」

深呼吸すると結構瘴気が入ってきているような気がする。さっきから「気がする」ばかりだけど、そうとしか言えないんだよな。

「修司、大丈夫なの?」

有紀が心配そうな顔して聞いてくるが…正直全然問題ない。

「なんかね、全然問題ないんだよ。この分なら解除してもいいかも、ってぐらい。」

「いやいや、解除とか怖いよボク。」

有紀が嫌がるからもうしばらく結界は維持してもらう。それにもうしばらく様子見ないと瘴気のある環境で生活できるかわからないしね。

俺は何となく思ってたんだよね。6層の奥のうっすら瘴気がある空間のときから。

この空気の感覚、この世界に来て時間が経ってたから忘れてたけど、俺の世界の都心で吸う空気に近い。

向こうも排気ガス含めて空中には不純物が溢れていたけども、その感覚だった。

だから都会っ子?の俺にとっては瘴気が含まれていても耐性があったんだと思う。


更にしばらく経ち、俺に付与していた結界は解除された。

今までは寝起きする部屋でだけ解除していたけど、これで瘴気の溢れる空間を俺は結界なしで動くことになる。

勿論体への悪い影響は無かったし、それを村長に報告すると「シュウジさんの世界も瘴気に類似したものがあるのか」と驚かれた。

モノとしては全然違うけど、故郷の世界の空気で耐性がついたのは確かだ。

「もしかしたら、だけど。」

唐突に有紀が話しだした。

「リアル…っていう言い方はおかしいかもしれないけど、修司たちが居た世界の人はビーナやヒルメルのように魔力や瘴気を操る術は無かったよね?」

「ああ、そうだね。」

「身体能力的には低い…、と思われていたけど、実は世界に対する適応能力が一番高いのかもしれないね。」

そう、俺もそう思ったんだ。

魔法なんて向こうじゃ使えなかったけど、この世界に来てから魔力の概念が俺の中で出来上がったわけだし、瘴気に触れてから瘴気に対する耐性を発揮した(これは耐性を持っていた、とも言えるかも)。

能力的に一番弱い?からこそ、環境による適応や能力に伸びしろがあるのが俺達の特徴なのかもしれないし、女神達が召喚していた理由の一つとも推測できる。

まあでも「この大規模な召喚の理由」には至らないけどね。


結界なしで過ごし始めた2日後、俺に多少違和感があった。

龍眼チェックしてもらったが何も異常なし。

「魔力の流れは問題ない…から瘴気が体の中の魔力の流れを阻害しているわけでもないみたい。質は…ボクは見れないから分からないんだよね。こういう対人に関しては同様の翡翠の魔女の分野だからね。」

そうか、違和感というのは別に痛いとかそういう感覚じゃないから魔力の部分だと思ったんだけど、流れに影響ないなら…質か?

「それにしても修司、少しずつ魔力感知できるようになってるんじゃない?」

そういえば、自分の魔力については捕らえられるようになってきてるな。

有紀が結界弱めるときも「そんな気がする」程度ではあるけど判断できるようになってる。

「場数を踏んできたからかな?」

「本当はこの世界の人なら基礎の基礎ではあるけど、その辺はじっくり取り組む時間なかったからね。」

実戦の中で掴むしかなかったとは言え、確実に成長してるのは実感できる。

「もっと戦いまくれば更に魔力感知しやすくなるかもしれないなー。」

ともあれ魔力の質に変化があるとしたら瘴気が原因だろうけど、魔法や魔術は発動するのか?という部分は重要なので使用してみる。

ブラスト、フレイム、ロック、ミスト、ブラインド…問題なし。

ハードスキン、アヴォイドは魔術としての構築が阻害されてるみたいだが、魔法としてなら使用できた。

「瘴気の影響なのかな?それとも魔法を習得したことで魔術が妨害されてる…?」

「魔法覚えたら魔術が使えない、なんてことはミランさんは言ってなかったはず。実際両方使える人もいるんだろう?」

「そうなんだけどね、でもそしたら理由が分からないんだよね。」

確かに…。

そして魔法のハードスキンにも変化があった。

普通に使用しているときは何とも無くて見落としていたが手に意識を集中させるとボウと手の周りを紫の光がうっすら(本当にうっすら)纏っている。

「これ、なに!?」

有紀も興味深げに見ている。と同時に体の心配されたが本当に体自体は何とも無いんだよな。

「光ってる色からして、俺の魔力に瘴気が混じってる?のかな…。」

普段は魔法効果7割程度にして消費魔力セーブするが、こうやって一部だけ10割の効果にするとその部分だけ光るようだ。

試しに全身10割の魔力量でハードスキンの効果をあげると、全身薄紫のオーラが包む。

「瘴気と魔力の混合?ってボク聞いたことないよ。」

「そりゃ、俺はこの世界の人間じゃないから、前例ないだろうさ…。」

実際には前例あるのかもしれないが、少なくともビーナにはその情報は出回っていないので、現時点で俺と有紀の間では「初めて」の事例になるかな。

環境の適応…それによる魔力の変質…、この8層の滞在は俺を「特別」にする機会なのかもしれない。

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