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アルカ村ダンジョン3層入り口

2層から3層へ至る階段を見つけ、降りる。

3層の施設はすぐ目の前にあった。

「ここは階段を下りたフロアが大きいね。天井まで高さもある。施設を作るのに最適なんだね。」

有紀が言う通り、3層は2階建てどころか3階建ての建物が入るほど高い。

道理で階段下るのが長いと思った・・・。

広々としているフロアには宿だけでなく武器防具やポーションなどの道具屋もある。

「すげえな、一通り必要な設備が揃ってる。」

「そうだねえ・・・これなら3層を拠点として、強化できそうだね。」

ここはクラン『ラッキーリップス』が村と契約して初心者向けの支援を行っているらしい。

ご都合主義な話だがモンスターについては次の点が共通している。

①モンスターは魔力が集合して沸く。

②入り口・階段がある最初のフロアには沸かない。

③階段を使用しない。階層の移動はモンスター専用の通路がある、と言われている。

つまり、この3層の施設があるフロアには別のフロアにつながる経路だけ塞げばモンスターの進入を防ぐことができるわけだ。

1箇所しか出入り口がないので、そこに見張りを立てれば良い、ということになる。


「こんにちは、3層は初めてかな?」

階段を下りて直ぐにあるカウンターに居るオジさんに話しかけられた。

「あ、はい」

ちょっとキョドりながら答える。

「ようこそ、3層へ。ここはラッキーリップスが管轄する冒険者用エリアだよ。ここを拠点にしてさらに実力アップを目指すと良い。」

「ありがとうございます。」

「修司、ここでお金払うんだよー。」

え?お金?払うの?

「そう、いいかい?修司。確かにアルカ村とクランは契約をしているけど、基本的にクランを養うほどの金額は得られないんだよ。だから、安全なエリアを維持する代わりに冒険者はクランにお金を支払う、っていうわけ。」

「おや?そこの可愛い子は仕組み分かってるみたいだね。ただ、ここは初心者向けのダンジョンだから、当然お金が無い人もいるだろう?だから後払いもOKだし、あまり大金を請求することも無いから安心するといい。」

ついでに支払いは1度だけで良いとのことで、かなり良心的らしい。

ダンジョンによっては「毎日支払う」とか「大金を支払う」とか、結構がめついところもある。

支払えない人は施設のあるエリアへの立ち入り禁止・・・と言うわけだ。

「他のダンジョンでのクランの運営はどうこう言うつもりはないけど、少なくとも俺達のクランは初心者冒険者の支援を目的にしているから、払えないから追い出すということはしない。払う気がないヤツもたまに居るけど、それも仕方が無い。他のダンジョンで同じ事をしないと願うだけさ。」

オジさんは丁寧に説明してくれる。

さらに言うと、別にクランのメンバー全員が3層生活しているわけではなく、ここを護衛するグループと、別のダンジョンで狩りしているグループに分かれるらしい。

3層組もずっと篭るわけじゃないようで、持ち回りで地上に出て買出しすることもあるようだ。

オジさんの様子から、このクランはいわゆるマッタリ系なんだろうか。

ともかく金を納める。

1人5000コム・・・コムというのが単位で、大体物価から1円=1コムみたいな感じで分かりやすい。

「確かに良心的だね。5000は安いよ。」

有紀が払いながら言う。

「そうだろう?あとはギルドに依頼する依頼主から報酬の1割分を納めて貰っているから、それで何とか運営しているよ。マスターなら普段は宿の一室を事務所にしているからそこに居ると思うよ。機会あれば話してみると言い。」


オジさんと別れて、施設を見て周る。

「商品は少し割高になっているね。村と3層行き来する手間が省けるから当然と言えば当然だけど。」

有紀がポーションを見ながら言う。

「割高っていってもな、お嬢ちゃん。ここの価格はちょうどベタの町と同じ価格だぞ。」

「ベタと同じかー。となると、王都はもっと高いね・・・。」

「ん?どこ・・・?」

俺だけわからなかった、どこの町?

「ああ、修司。ベタの町っていうのは、ここと王都の途中にある町だよ。向こうにもダンジョンがあってね。冒険者が次に目指す地点・・・みたいな所さ。」

「そう、それにベタの町からは単なるダンジョン攻略だけじゃなくて対人の依頼も出てくるから、どうしても怪我は避けられないし、ポーション需要が増えていくんだ。王都に至っては各地の小競り合いに兵士を派遣するもんだから、国がポーションを求めることがあるからさらに需要が増える、だから価格はもっと上がる。」

「そうなんだな、説明ありがとう。」

店の人にお礼を言い、離れる。

今はアルカ村で購入したポーションが数本残っているし、基本的に有紀が癒してくれるから(いろんな意味で)いざという時のために持っているだけだ。

隣の有紀を見ると、あれ?何か考えてるみたい。

「どうしたの?有紀。」

「うん・・・実は物価がボクの予想よりも上がってた。思いの他、お金に余裕は無いかもね。」

先ほど2人で1万払って、残りは5万コム程だ。

確かに俺が3層で狩りできなかったら数日は出費だけの生活になりかねないな。

もちろんそんなときは有紀が単独で狩ってくるだろうけど。

あとはギルドの依頼次第か。


ダンジョンの中は時間の感覚がつかめないせいで、ダンジョンに潜ってから1日なのか半日なのか分からない。

1層は苔のおかげで日没が分かりやすかったが(日光がない時間は苔の光も弱くなるため)、2層以降はいつも薄暗いせいだ。

なので時間が分からないので「腹が減ったら食事を取る」「疲れたら休む」という行動指針を取ることにしている。

二人の意見で「今日は宿を確保して終了する」ということになったので宿へ向かう。

有紀はともかく、俺は結構疲れた・・・、宿取ったら少し眠ろうかな。

と、考えながら宿に向かったが、宿では眠気が吹っ飛ぶような話が待っていた。

「1泊1万コムです。」

「高っ!」

俺はビビった、村の宿の倍じゃん、それ!

「村のほうは部屋が余るから安かったけど、ここは拡張できないし部屋の数も限りがあるし、冒険者さんも上よりここに集まるもんで・・・必然的にこの価格になるんですよ。」

ちなみにこの宿代もベタの町・・・恐らく俺達が次に目指す町と同じ価格らしい。

どうする?有紀と確認する前に・・・

「1部屋借ります!」

返答早!っていうか、1部屋って同じ部屋ってこと!?

「ちょっと有・・・」

「修司!これはいつかある話なんだよ。いつかダンジョン内のフロアに結界を張って寝泊りする・・・なんてこともあるんだ。一緒の空間で寝るのはいつかある話で、それがボクの予想よりもずっと早かっただけの話なんだよ。」

早口で言われた。顔赤いっすね有紀サン。

「お、おう・・・。でもな、有紀は冒険者時代に慣れてるかもしれないけ・・・」

「・・・ないよ・・・」

「え?なんて?」

「ボクが冒険者で各地回っていたときは、一人だったんだよ。その・・・だからボクも実は初めてでね。いや、でもボクらは昔同じ部屋で寝てたわけだから大丈夫でしょ・・・?」

その昔っていうのは男同士だったときの話で、今は男女なんだけど・・・とは思ったが有紀の顔ヤバイ。

この子は男女意識するとこんなことになっちゃうのか。

俺もドキドキするけど、有紀は顔赤すぎて湯気が出てるように見える、そんなに恥ずかしいのか。

・・・分かった、有紀の覚悟を俺も飲もう。

「そうだな、1部屋お願いします。」

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