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魔族との邂逅3

8層。

拠点は8層到達して直ぐの場所にあった。アルカ村のダンジョン3層と同じような形だな。

ここには70人が住んでいるらしい。

俺達がどう思われるのか、少し不安だったが予想以上に大歓迎を受けた。

「話に聞いていた通り、肌白いんだな。」

「ああ、でも姿は俺達と同じだし、馴染みやすいな。」

外見の違いというのは差別を生むというが、ビーナの世界もヒルメルの世界も外見による差別的な視線はない。まあ珍しいっていうのはあるからそういう目線はあるけどね。

でも、歓迎する雰囲気はしっかり伝わった。

彼らは帰ることも出来なかったし地表に行くのも至難なわけだから、外から人が来るのを待つ以外に交流を得る手段がなかったんだし、当然と言えば当然か。

長老に会い、俺達の事情を説明する。有紀は魔女で俺は更に別に世界から召喚された旨を。

「なるほど、魔女というのは瘴気があっても動けるんですな。聞いた話だと地上の方はこの瘴気は毒だと聞いていたもので。」

「魔女は環境変化には強いんだ。体を覆う魔力が結界の役割を果たしているんだと思う。」

有紀が答える。これがチートってヤツだな、と俺は思った。

「ただ、シュウジさんだっけ?更に違う世界から来たとなると、瘴気に対してどう影響するかわかりませんな。」

ヒルメルの異世界への空間はビーナにのみ通じているようで、他世界へ飛ばされたという話はないそうだ。

ない、というか…そもそも戻ってこれた例自体殆どないようだけども。

「どちらにせよ、客人を危険にさらしたいわけではないので、結界が維持できているのであればそのまま持続させておくほうが良いでしょう」と長老。それもそうだな。

長老の居る広間は彼らが飛ばされた場所らしく、長老の後方は良く見ると少し空間が歪んでいて、少しヒビがあるように見える。

「ああ…、これが空間の歪みです。ここが開けば、恐らく我々はヒルメルに戻ることが出来るはずですが。今は向こうから瘴気が漏れてくる程度ですよ。」

なるほど、ここから漏れる瘴気が彼らの生命線なのか。

「さて、本来ならワシの家に、と言いたい所ですが…。この辺でも瘴気が薄い場所のほうが良いかもしれませんね。」

ちょっと長老は困っている。急な来客だし宿があるわけない…。かといって長老の家も瘴気に溢れてるので結界が切れたときを心配しているようだ。

「どこか良い場所があればそこをお借りしようと思います。」

俺はそう答えた。


長老の家の広間を出て、フロアの隅に行くと2メートルぐらいの高さの位置に洞穴のような空間があった。

「この洞穴の先にあるフロアは狭いですが瘴気はかなり薄いですよ。元々ルールを乱した者を罰するために使用していましたが、最近は規律もしっかりしていますから掃除するとき以外誰も踏み込みません。」

早速行ってみると4畳ほどの空間が広がっていて、少し黒味がかった瘴気は殆ど無い。

「よし、じゃあここをボクらの寝泊りに使用させてもらおう。」

言いつつ清風の杖を床に差すとわずかに漂っていた瘴気も消える。

空気清浄機みたいな作用してるな…。

寝どころの設置が終わったところで荷物を置いて、また長老の家に向かう。

ラウノさんが途中合流してくれた。

「地表の人と交流を持つというのは昔から方針としてあったんだが、今まで実現しなくてね。お陰で今我々の中では盛り上がっているよ。」

彼らはこの世界の人との交流を求めていると思うが、同時に地表では殆ど無力な彼らが安全に地表に出てこれるようにしたいらしい。

例えばベタの街の商人ギルドとコンタクトを取れば、商人達はこの東ダンジョン深層のアイテムを得るチャンスが手に入るし、恐らく役人に伝えれば魔族の地上での護衛を請け負ってくれるだろう。ヒルメルの情報や技術など、情報を得るチャンスだからね。

情報は重要だ。王国の領土とは言え、完全に服従しているわけではない。勿論反乱を起こすつもりも毛頭ないんだろうけど、王都が持っていない情報を持っているというのは一つのアドバンテージとなるわけだ。

どちらにせよ、彼らの願いはベタ町にとっても願っても居ないことなので、今回の話を俺達が地上に持ち帰れば直ぐに動いてくれるだろう。

ただ、そうなると俺達がこのダンジョンの更に深層に向かうのも厳しくなるんだよな。

商人ギルドは恐らく早い段階から取引を持ちかけてくるし、そうなると下の層での乱獲も起こるだろうし、そうなると俺達が狩る余裕残らないんじゃないだろうか。

そんな心配を長老にストレートにぶつけた。

「なに、地上は逃げやしません。しばらくここに滞在してから事を進めればよいでしょう。」

「そうだ。君らが目的を達して地上に戻ってからでも遅くはないぞ!今まで繋げようの無かった繋がりが得られるんだから、俺達は急がないぞ。」

長老とその周辺の人たちは俺達がゆっくり滞在してからでも良いという、寛容な返事だった。


夕飯を振舞ってもらった。

大ウサギの肉は癖も無く食べやすい。その肉を焼いたものを、8層に生えているサンチェのような葉に巻いてタレをつけて食べる。むちゃくちゃ美味い!

あと7層産の芋を噴かしたものも食べた。そのままでも甘みあって美味しかったがタレをつけると刺激があり美味しい。

「ここはスケルトンが跋扈している階層なんだが、いくつかのフロアを小川が縦横しているから、飲み水には困らないし、魚も居るんだよ。」

と、ラウノさんが言う。8層は生活しやすい階層だったようだ。

ちなみにこのスケルトン、魔石を落すと思いきや塩を落すんだとか。

「そんなこともあるんだね。」

有紀も聞いたことがないそうだが、スライムも金属っぽいのがいたし、例外はあるんだろうな。

「あ!!修司!!今更なんだけどさ。」

有紀が急に慌てて俺に話しかける。

「ん?なに??どうした、慌てて…」

「いやね、食べ物には瘴気…入ってないのかな…?」

あ…忘れてたわ。どうなんだろう?

有紀の龍眼は魔力の流れは感知できるが、瘴気は感知できないので食事に含まれてるかどうか分からなかったようだ。

というか、その言葉を聞いて回りも固まった。

「え?そういえば客人よ、大丈夫か…?」

隣に座っていた男が声をかけるが、うーん、俺は何ともないような。

「大丈夫そうですね…、大丈夫じゃないかな!?」

ほう…と皆一斉に息を吐く。

そりゃね、食事アウトってなるとこの先真っ暗だし…。

まあでも、普通に美味かったので俺はすっかり平らげてしまったあとに心配しても仕方ないよね。

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