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魔族との邂逅

魔族の3人はラウノ(50歳男)、ヤミ(15歳男)、そしてヴィヴィ(30歳女)と言う。

最初は驚いた3人だったが、直ぐにこちらの呼びかけに応えてくれた。

彼らは「バリエンス属」と名乗った。

「私達が居た世界…ヒルメルでは、『属』は『その地域に属するもの』という意味になる。バリエンスという地域に住んでいると言う事だな。」

ラウノさんが解説してくれる。

属…族じゃないんだな。と思ったけど「族は一つのグループとして使われますよ」とヴィヴィさんが教えてくれた。

「バリエンスにも多数のグループが居ます。私達はそのうちの一つである『マルタ族』なんです。」

「この世界では属も族も関係ないんだけどもな。だから、『だった』というべきなのかもな。」

ラウノさんが付け加える。

なんか妙にしんみりしだしてて気まずい。

「あの、いつからここに居るんです?」

俺は沈黙を破るために彼らに質問する。ある意味重要な点だけど、シーンとするの苦手なんだよな。

「実のところ、私が生まれて5歳ごろかな?その頃に突然異次元の空間が開いて、我々の集落が飲み込まれてしまったんだ。だから…45年ぐらい前か。」

45年!すごい長いな。

ラウノさんの話をまとめると…

・8層に居を構える魔族集団

・ラウノは1世代目、ヴィヴィは2世代目、ヤミは3世代目

・1世代目で現在生きている最高齢は70歳ぐらい

・一度地表に行き帰還したものにより、この世界のことは伝わっている

なるほど、俺達を見てもさほど驚かなかったのは既に知識として現地人(俺は違うけど)が居る事を知って高らか。

「ちなみに、私達は他の領域には侵略する気はないんだ。他族にはそういうタイプもいるんだけどな。帰ることが出来るなら帰りたいし、何れ去る地を侵略するってバカげているだろう?」

彼らの大半は故郷を知らないで育ってるわけだけど、マルタ族は帰郷を第一として行動しているわけだね。

ただ、現状帰る手段が現時点では存在しない(また空間に穴が開くのを待つしかない)。

「そういえば君らはヤミと同じくらいか?こいつはマルタ族の若手で最も強い。今日は瘴気の無いエリアでの戦闘を教えようと思って丁度上がってきたところだったんだ。」

あら、それは俺達邪魔してしまったな。

「いや、良いんだ。どうだろう?私達の集落に向かうかね?ああ、勿論取って食おうって話ではないんだ。地表の世界とも実は交流が得られれば私達ももっと娯楽を得られると思ってね。是非話を聞かせてもらいたいんだよ。」

「なるほど、良いですか?」

俺が是非と言おうとしたところで「待って」と有紀が止める。

「なんだよ?」

「いや、瘴気あるんだよね?この程度の濃度なら問題ないだろうけど、この先は更に濃いわけでしょ?ボクの聞いた話だと高濃度下では猛毒だって聞いているけど…。」

「ああ…君はユウキさんか、そうだったね。失念していたよ。」

ラウノさんは思い出したと、頭を下げる。危険に晒すつもりは無かっただけにこの提案を反省しているようだ。

瘴気…女神が嫌う世界には当たり前に存在するもの。

この世界の住民にとっては毒でしかないのでヒルメルから溢れてきた瘴気が消えずに濃いエリアにはここの世界の人は立ち入らない。

ただ、正直俺はこの世界とはまた違う世界だからどうなるんだろうな。

うーん…俺としては興味はあるんだけどなあ。

「有紀どうにかならないかな?」

俺の目をジーと見る有紀。が、直ぐに目を閉じてため息を吐く。

「修司は仕方ないね。今のは冒険者の目だったよ、キミは。」

瘴気を遮る結界を俺に対して使用する。

「これで瘴気は遮断できるから、奥に行けるよ。」

「ありがとう!ラウノさん、俺達行きますよ!」

ちなみに有紀はそもそも問題ないみたいだ。

しかし、地図には彼らのことが記載されてないってことは、相当古い地図だな、これ。


道中、ゴーレムに遭遇する。

瘴気の影響で魔術が上手く発動しないのかと思ったが、そんなことは無かった。

有紀のミストのようにある程度広範囲に分布させるとどうしても端が乱れるみたいだが、大体30メートル以内であれば問題なく発動する。

俺達はそれを試すために戦闘してみたが、見ていたラウノさんとヴィヴィさんが関心する。

「この世界では不思議な力を使うんだね。」

ヒルメルの世界では魔術に相当するものは無かったらしい。

ただ、魔法に似たものは存在するので手からビーム!見たいな事は出来るわけだが、俺達のように地面から岩を出すというのは向こうには存在しない。

お礼に、という形になるがヤミの戦い方を見せてもらう。

「ふうぅぅ…」

ヤミが息をゆっくり吐き出していくと、ヤミの持っていた剣…シャムシールに似てるが、そこに黒い炎が纏われる。

これだよ!こういうエフェクトを求めて居たんだよ俺は!

ていう目をしてたのが分かったんだろう。有紀があきれた目で俺を見てくる。が、気にしない。

そのまま一気にゴーレムに向かっていく。スピードはヤミと俺なら、ヤミのほうが上か。

そして力は?と思ったらズガン!という重い音と共にゴーレムが真っ二つになった。

「…え?」

「驚いただろう?シュウジさん。私達は瘴気を圧縮して使用することが出来るんだよ。集中させることでこんなことも出来るわけだ。今のは『絶炎剣』。全てを切る炎の剣で私達マルタ族の技だ。」

絶炎剣…ネーミング良いな!格好良い。

「ハア…ハア…」

この技を使ったヤミは息切れしている。

「ヤミ、分かったか?ここのように瘴気が薄いエリアでは自分の瘴気を利用する。そのため一発の疲労感は跳ね上がる。この濃度なら精々3発か。瘴気が無いエリアでは2発で瘴気が体から無くなって死ぬぞ。覚えておくんだ。」

「ハア…は、はい…」

息を切らしながらも返事をする。

「私達の戦い方は一撃必殺。瘴気が濃いエリアでも10発も打てば倒れてしまうんです。勿論周囲の瘴気を取り込むので命は失いませんが。」

ヴィヴィさんは言う。一発辺りの威力は大きいけど、燃費は良くないようだ。

炎を纏わせた一撃か…アーツに似ているな。


でもさ、魔術とか使うわけじゃないのに「魔族」っていうのはおかしくない?

「それはね、修司。魔っていうのは修司の世界でもあんまり良いイメージから始まってなかったでしょう?」

魔…今でこそゲームで魔法とか出てくるが、魔族は敵として出てくることが多いな。

魔女も、良いイメージではなかったはずだ。今は萌える対象として描かれている漫画も多いけども。

要するに元々は「悪いイメージ」だったはず。

「そう、そのイメージで魔物・魔族って言われるようになったんだよ。…まあ魔女も大昔は悪の存在だったのかもね。」

なるほどね。

「区別は大事だ。だから別にどんなイメージでつけられたものでも私達は構わないよ。」

と、ラウノさん達は気にも留めていなかったけどね。

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